ピッチクロックの導入などで、メジャーの試合時間が大幅に短縮されました。日本のプロ野球はいつもどおりの様子見で、反対勢力が球団にもファンにも存在します。議論が有って当たり前だとは思いますが、議論をするばかりで前に進めないのは最悪です。
日本経済も同様に議論するばかりで、既得権益を守る意見に押し切られて、動けないことをもっと認識する必要があります。
何も変化がなく成長できるのは、発展途上国だけで、先進国は変化しながら成長を遂げています。スクラップアンドビルドが苦手な日本社会は、ないものねだりをしている様に見えてしまいます。
ピッチクロック導入の意味
試合時間をなぜ短縮しなければならないのでしょうか?
プロ野球の解説者の中には、”野球は間のスポーツだから”として、ピッチクロックの導入に反対することがあります。ファンの中でも野球を知っているファンほど、”間のスポーツ”が、理解できると思います。
しかし、試合時間の短縮はそういった従来からの熱心なファンや、プロ野球OBのために考えているのではありません。
メジャーリーグが目指しているのは、新しいファンの獲得です。オールドファンを維持することはもちろん大切なことですが、新しいファン、若いファンを獲得することは同じ様に大切です。
NFLとMLB
特にアメリカでは、MLBは人気の面でNFLやNBAに遅れを取っています。実際に米国ではNFLとMLBでは熱狂ぶりが全然違います。
ある放送局がヌートバー選手のお母様に、「何故QBを選ばずに、野球を選んだのですか?」と、質問していました。そのことについてお母様はストレートに返答できずに困っていたように見受けられました。
本当は、「QBでプロにはなれないので野球を選びました。」とは言えなかったのだと推測します。毎年NFLでは200人以上がドラフトされますが、QBで指名されるのは10人前後です。各大学のスターであるQBでも、NFLではドラフト指名されないことが殆どなのです。それだけNFLの選手、特にQBで上位指名される選手は、入団前から全米のスーパースターなのです。
アメリカでは野球選手はドラフト上位の選手でも、年俸は安く、過酷なマイナー生活が平均で5年ほど続きます。
これに対してNFLで上位指名された選手は、入団時に高額年俸が約束され、活躍すれば5年目には破格の年俸が獲得できます。これだけでもMLBとNFLの差が実感できると思います。
新しいファン獲得に努力を怠らないMLB
大谷選手の試合を見ていても、曜日によってはスタジアムの空席が目立ちます。放映権で今のMLBは潤っていますが、それも安穏としていれば長くは続きません。それだけ危機感がMLBにはあると思います。
若い世代はタイムパフォーマンスに敏感
最近の曲は前奏が短いそうです。
映画も短くして見ることが、若い世代の間では受け入れられているようです。2時間かけて見ることによって良さがあると、個人的には思いますが、若い世代では時間のムダと取る向きもあるようです。
これだけ感覚に差があると、なかなかお互いに理解できないとは思いますが、エンターテーメントを供給する側としては、上手く両方のファン層を形成する必要があります。ピッチクロックの15~20秒は、MLBが考え抜いた中庸だと思います。
こういった事情も考えずに、”間のスポーツ”だからと、反対するのには疑問が残ります。変化を恐れていては衰退が始まっているということを考えなければなりません。
若い世代はデジタル化の中で成長してきており、感性が違うのは当たり前のことでしょう。その事実を受け入れられずに、重要なポジションを現在担っている古い世代が反対すれば、その瞬間から衰退は始まっていると言えるでしょう。
DH制、ピッチクロック、ベースの拡大は速やかに導入を
MLBで導入されたものを否定しても、未来はありません。
残念ながらMLBとの共存共栄を考えなければ、日本のプロ野球の前途は暗いものでしかありません。
新しいものに否定的な球団は、もう一度考え直してほしいと思います。
オールドファンはプロ野球界の財産であり、大切にしなければなりません。
しかし、新しいファンを獲得できなければ未来がないことは、間違いありません。
若い世代に無闇に迎合する必要はありませんが、オールドファンのために若いファンの獲得を諦めてはいけません。
そして野球とベースボールは違うと主張する事はできますが、WBCなどの国際大会は、ベースボールルールでしか行われません。
野球がスポーツである限りは、国際ルールにローカルルールも従うべきです。
DH制を取り入れていないアマチュア野球も、従うべきでしょう。
”エースで4番”は、アマチュア野球のスターの証ですが、高校野球でもめっきり少なくなってきました。
今年の甲子園夏の大会で、4番バッターが背番号1の出場校はどれだけいるでしょうか?
アマチュア側のほうが既得権益の多いプロ野球よりも、変革が速いようです。