育てながら勝つは難しくない 育てないで勝つが難しいプロ野球

常勝を義務付けられている巨人がいつも言われることが、育てながら勝つことは難しいというフレーズだ。毎年優勝を狙うためには1軍は育成の場とはならない。即戦力や他チームからのFA等による補強が避けられず、若手をじっくり育てる機会が減るということが、困難になる原因だという様に概ね理解されている。しかし、巨人といえども若手の台頭なく、優勝を続けることは難しい。過去に何度かの黄金期があった巨人だが、そのいずれの時期も若手の台頭は欠かせなかった。

スカパー!プロ野球セット

V9は何故続いたのかその理由 V9時代の新戦力

歴史に残る黄金期のV9は1965~1973年まで続いている。ONを中心とした常勝軍団だが、新戦力の台頭は沢山あった。

小天狗 堀内恒夫投手

初代ドラフト1位で堀内投手が入団したのは、V9の2年目の1966年だ。V9時代の8年間で129勝を挙げたエース中のエースは、その後203勝を達成するが、高卒新人でV9の2年目に彗星のように現れている。入団時は背番号21番だったが、1968年に藤田元司さんから18番を引き継いでいる。

壁際の魔術師 高田繁選手

1968年初出場の高田選手は、1967年のドラフト1位で、明治大学卒業後に通算1384安打200盗塁を記録し、守備ではフェンス際やクッションボールの処理などで美技を再三見せた、三拍子揃った選手だった。当時センターを守っていた柴田勲選手との俊足コンビは、ジャイアンツ魅力の一つだった。

燻し銀のセカンド 土井正三選手

V9を内野で支えた土井選手も初出場は1965年だ。V9とともにキャリアをスタートしたと言っていいだろう。実働14年ではあったが、黄金期を支える重要なピースは1965年に立教大学から入団している。

左のエース 高橋一三投手

V9を支えた左腕として記憶される高橋投手だが、高校から1965年に入団。1966年から1968年までは6~7勝であったが、1969年にスクリューボールを覚えて19勝を挙げ最多勝を受賞している。V9最終年の1973年には24勝で2度目の最多勝を獲得しているが、V9の後半5年を左のエースとして支えた成長株だった。

V9後のジャイアンツ

V9が終わった後も、ドラフト1位の投手を育て上げた斎藤雅樹、槙原寛己、桑田真澄の三本柱は巨人の強かった時代を支えた。原辰徳選手や吉村禎章選手などの、新戦力の台頭はジャイアンツファンをワクワクさせた。FAが無い時代でも巨人は育成能力に秀でており、常に優勝争いをする戦力を保持していた。

逆指名時代の弊害

逆指名の時代も次々と巨人は有力選手を入団させて、戦力を維持していた。高橋由伸選手、二岡智宏選手、上原浩治投手、阿部慎之助捕手などは即戦力として入団1年目からスター選手となった。しかし、この頃からファームから育つ高卒選手などの活躍の場が、狭くなってしまったのかもしれない。FAと逆指名により綺羅星のようにスター選手を並べたが、ファームからの新戦力には期待がかからない傾向が出てしまったのかもしれない。

育てないで勝つことの難しさ

今年の原監督が、新戦力の欠如を昨年のV逸の原因として認識したように、若手の育成は急務となっている。昨年優勝したヤクルトやオリックスは、若手の台頭が目覚ましく、チームに勢いをつけたのは疑いがない。対照的だったのはジャイアンツだと言えよう。若手の新戦力や成長がなければ、優勝は遠のくばかりだ。

FAの副作用

FA選手の補強は即効性が有るが、劇薬の様に球団の育成能力を蝕んでいく。選手の年齢層は高くなり、士気も上がらない状態が多くなる。劣勢を跳ね返せない原因もそのあたりにあるかもしれない。

また、最近の超一流選手はMLBを目指してしまう。日本のプロ野球はMLBの下部組織のような立ち位置になってきてしまった。

従来であれば今オフのジャイアンツは、東京の二松学舎高校卒の鈴木誠也選手を補強したかったところだが、MLBに資金力でかなわない。今の日本球界はブラジルのサッカーチームが選手を育てて、欧州のチームに供給するような図式だ。

さらに、故障歴がある選手や超一流でない選手は、FAでの移籍をしない傾向も強く出ている。

こんな状況では育てないで勝つことのほうが、難しい状況だ。

巨人の三連覇失敗の原因

原監督はホップ・ステップの失敗などと、V逸の原因に上げているが、本当のところは新戦力が全く出てこなかったことが原因だろう。2連覇までの戦力に上乗せできた戦力が殆ど無く、主力選手が峠を超えて劣化をしていけば当然の結果だ。依然として坂本勇人選手や丸佳浩選手は主力選手では有るが、戦力としての上積みは難しい。守備面などでは劣化方向に行くのは、間違いのないところだろう。小林誠司捕手と大城卓三捕手の正捕手争いにも、ある意味で限界が見え始めている。

27番を与えられた岸田行倫捕手の成長ぶりは、キャンプでの一番の注目点ですね。

今年のジャイアンツのキャンプはとても楽しみ

原監督はなによりその事を理解しており、ファームの組織を一新し、スカウト部門の強化を始めたところだ。OBスカウトが2020年6月に設置されているが、その成果が今年の新人選手に現れなければいけない。

いろいろな意味で、今年のキャンプは楽しみですね。

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