セ・リーグがDH制の導入を見送り いつまでも変われない日本の縮図

2023年1月18日の12球団監督会議で、セ・リーグへのDH制導入が問題提起されましたが、当事者のセ・リーグ監督で賛成しているのは、巨人原監督と中日立浪監督だけのようで、今年も見送りになる公算が強くなりました。

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平行線の議論

数年前から繰り返し議題に上る問題ですが、各チームの主張は余り変わらず、現状を変えられない日本の社会を反映するような状態でした。各チームの主張は以下のとおりですが、あまりに次元の低い議論で少し残念でなりません。

立浪監督が試験的に導入を望んだようですが、相変わらず巨人以外の他の4球団は改革に後ろ向きです。

阪神の岡田監督は以前から試合中に”監督のやることがなくなる”と、思い切り自分目線の意見を残しています。この理由が岡田監督の反対の理由の全てだとは思いませんが、あまりに視野の狭い意見でマスコミの取り上げ方も褒められたものではないと思います。

巨人だけが賛成する理由

立浪監督の意見が今年変わりましたが、もしかしたら立浪監督はチームの貧打ぶりに、打開策としてDHの導入は他チームよりもメリットが大きいと思い賛成に転じたのかもしれません。完投能力が高い投手が多いことも、中日にはDH制のメリットがあるかもしれません。

反対している各球団は、”戦術の多様性”や”投手起用の妙味”などを理由としてあげていますが、言葉通りには受け取れません。

原監督賛成両リーグの戦力格差
立浪監督賛成試験的に導入
高津監督反対投手交代の醍醐味
三浦監督反対セの特徴
岡田監督反対監督が楽してしまう
新井監督反対戦術の多様性

DH制を導入すれば、資金力に勝る巨人に有利に働くという見方も一般的にされており、資金に悩むオーナーからの意見も影響しているのかもしれません。

巨人原監督は、ソフトバンクに日本シリーズで2回連続スイープされたことで、セ・リーグとパ・リーグの戦力格差是正のためと主張していますが、2021年シーズンはヤクルトが優勝しており、根拠が少し希薄になってしまいました。

監督たちの視野の狭さ

いずれにしろセ・リーグ6球団の監督の意見を見ると、殆どが自軍の勝敗のためにしか問題を見ていないように感じます。当然と言えば当然ですが、目線が低すぎて少し寂しい気がします。世界でもプロ野球でDH制を導入していないのは日本のプロ野球だけで、オリンピックもDH制です。グローバルスタンダードとはかけ離れた議論が、展開されています。”投手交代の妙味”や”監督の仕事”など些末な問題で、本当はプロ野球や日本のアマチュア野球が発展するために、考えるべき問題なのではないでしょうか。

原監督は以前、DH制を導入すればアマチュア野球界でもレギュラーが一人増えて、大きな影響をもたらすこと。打撃に特化した人材もプロ野球での活躍の場が広がるなど、少しだけ他の監督とは違う視点を見せていました。巨人が有利になるために、理由を他にも求めたいという側面があるかもしれませんが、少なくとも他のセ・リーグ監督よりも目線が高いと言えると思います。

オーナ会議でも同じ目線

プロ野球のオーナー会議で審議しても、結果は変わらないのではないでしょうか。自分の球団の既得権益にしがみつく構図は、日本の既存の経済団体などを見ているようで、自ら変わることを全くしません。外部からの新規参入障壁や新参者に対する態度が、発展を妨げているのは経済界のそれと相似形と言っても良いのではないでしょうか。

放映権の問題などでもセ・リーグは既得権益にしがみつく球団が多く、リーグの発展を妨げています。

リーグ創世記でもないのに、資金を集める努力をせずに、資金に勝る球団の努力を妨げるのは、恥ずかしい行為だと思います。

高い目線の王貞治会長

セ・リーグの監督とは次元の違う目線の高さで、DH制に賛成しているのは福岡ソフトバンクホークスの王会長です。王会長はセ・リーグには直接関係しない立場から、ファン目線でDH制導入に賛成しました。これはソフトバンクが世界一を目指すという方針とも、一致する意見です。ソフトバンクが世界一の球団を目指すためにも、NPBの発展は不可欠です。リーグ全体が発展するためには、ファンから支えられるNPBになることが肝要であるという考え方は、至極当然のことで、そのためには新しいファンの獲得が必須です。オールドファンの目線だけではなく、若い層の獲得のためにDH制の導入を検討することは重要であると思います。

リーグ発展のための会議体の創成が必要

セ・リーグの監督会議やオーナー会議では、高い目線が望めないこと。このままではリーグの発展が望めないことは、今までの経緯からも明らかです。コミッショナーも任命の経緯をみれば、改革派が就任することはないでしょう。このままでは日本のプロ野球の地盤沈下は避けられないと思います。

事実、日本のプロ野球のメジャーリーグのマイナー化は顕著に始まっています。日米の年俸の差は一般社会の差とは、比べようもなく広がってしまっています。これは明らかに、日本のプロ野球が努力を怠っていることの証左です。一般社会の企業であれば、輸入品に押しつぶされてしまっても仕方がない格差となってしまっています。

仮に今MLBが日本に球団を作ってしまったら、仮にホークスとジャイアンツがMLBのリーグ戦に参加してしまったら、確実にNPBはマイナー扱いをされ、ファンは激減するでしょう。

航空機やイミグレーションの効率化で、米国西海岸と日本の距離はどんどん近くなっていきます。ニューヨークとロサンゼルスの国内便とあまり変わらない負荷になれば、ファーストで移動できるメジャーリーガには現状の移動と大差がなくなるかもしれません。

ソフトバンクのオーナーや楽天のオーナーならば、それぐらいのことは成し遂げるパワーと柔軟性がありそうです。イーグルスとホークスの2羽の鳥が、海を越えてしまう事になってからでは、とても遅いと思うのです。

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