巨人が弱い理由 基本的戦略の失敗 守備軽視の結末 首脳陣の責任

巨人が弱体化しています。資金は他球団に比べて豊富であり、組織も3軍制をとるなど充実しています。スカウト陣のテコ入れなども怠りなく、海外スカウトなども採用して、外国人の補強にも力を注いでいます。しかし、ここ数年戦力の弱体化が進んでいます。日本シリーズに8連敗した時に、ソフトバンクとの力の差を認識し、その差を埋めるべく原監督を陣頭に戦力強化を目指しましたが、結果はリーグ制覇さえも2年連続で逃し、ゲーム差においては首位よりも最下位に近い位置にいます。これは言い訳のできない事実で、今の現状を正しく分析しない限りは、常勝軍団を作るどころか、最下位争いに巻き込まれかねない現状です。

ジャイアンツの強化の基本戦略の誤り

最近のジャイアンツは打ち勝つ野球を目指しています。何故なのでしょうか?

ファンを楽しませるため

プロ野球では7対8の試合が、見ていて一番楽しいと良く言われます。ルーズヴェルトゲームなどと称されることもありますが、ある程度点の取り合いになったほうが、観客は盛り上がるということを意味しているのではないかと思います。多くのファンを引き付けるためには、投手戦になるよりはある程度の打撃戦を見せる事ができないと、ファンの満足度を下げてしまうと考えてしまうのかもしれません。ヒリヒリした投手戦を見ることも、時には楽しいと思いますが、外野での応援合戦などを楽しむファン層にとっては、発散することができないのかもしれません。この考え方はファン重視という点でいえば、間違っているとは言えません。

本拠地の東京ドームが狭い

両翼100m、中堅122mの東京ドームは、決して狭い球場ではありません。両翼は甲子園が95m、神宮97.5m、横浜94.2mと東京ドームよりはかなり短くなっています。中堅も122mの東京ドームは、セリーグではバンテリンドームとマツダスタジアムに並んで、一番長い球場となっています。しかし右中間と左中間の膨らみが少ないので、ホームランが出やすくなっており、狭い球場として認知されています。

両翼中堅中間
東京ドーム100122110
甲子園95118118
バンテリンドーム100122116
横浜スタジアム94.2117.7111.4
マツダスタジアム100122116非対称のため右翼と右中間
神宮球場97.5120112.3
札幌ドーム100122116
楽天生命パーク宮城100.1122116
千葉マリン99.5122112.3
ベルーナ(西武)ドーム100122116
京セラドーム100122116
PayPayドーム100122110
本拠地球場の広さ(単位:m)

歴代の阪神の左打者が浜風にのせてポール際に本塁打を打ち込むのは、ポール際が短いからといえるかもしれません。しかし屋外の球場であることと、中間の膨らみが一番長いことが、甲子園が広い球場として認識されているという理由でしょう。

東京ドームが開場されるまでは、後楽園球場が使用されていましたが、その両翼は公称でも

90mでしたので、実際はもう少し短かったかもしれません。東京ドームは開場当初は広い球場とされていて、1年目は3塁打が続出するのではないかと言われました。当時はライトの守備は軽視されることが多く、強肩の右翼手が少なかったためだと思います。草野球ではライパチなどと言われていたのですが、各チームの本拠地が広くなっていくにつれて、右翼手の守備力が重要視されていくようになりました。イチロー選手や高橋由伸選手のころは、ライトの守備力は、当たり前の様に、とても重要視されていました。今もその傾向は変わらないと思います。

ジャイアンツ首脳陣の選手起用の誤り

東京ドームでも守備力軽視では勝てない

中間の膨らみが少ないため、本塁打が出やすい東京ドームですが、両翼の守備が楽なわけではありません。両翼とも直線距離では100mあるため、ポール際に打球が飛べば、走る距離は甲子園より長くなります。また右翼ポール際にヒットが落ちれば、3塁までの遠投が要求されます。

現在のジャイアンツの外野陣

今期のジャイアンツの守備を見ていると、ポール際の打球処理に手間取り、投手にかなりの負担をかけていると思います。また、中堅の丸佳浩選手は決して下手な選手ではありませんが、守備範囲は若い時よりかなり狭くなっています。UZRで見ると、阪神の近本光司選手やヤクルトの塩見泰隆選手からは、かなり見劣りがしてしまいます。投手陣がリーグ最低の防御率で批判されることの多いジャイアンツですが、少し割り引いて考えてあげなければならないでしょう。

投手力を軽視してはペナントを勝てない

原監督が恩師として仰いでいるといわれる藤田元司監督は、守りの野球でした。強力投手陣を作り上げて、ペナントを制したことは有名です。また、藤田監督は投手出身らしく、我慢の起用を続けています。斉藤雅樹さんによれば、なかなか下ろしてくれない監督だったようです。

原監督は野手出身の監督で、自らの投手交代のタイミングが早いことを認めています。マシンガン継投などと揶揄されることもあり、投手の負担は大きくなっているようです。

上原浩治さんのYouTubeで阿部慎之助コーチが、”イニング跨ぎって、そんなに難しいですか?”と聞いている場面がアップされていましたが、今のジャイアンツの首脳陣の考え方がよく出ている発言だと思いました。キャッチャーをやっていた阿部コーチでさえ、そういう認識であれば、原監督の認識も想像が難しくありません。

投手の精神的な負担や肉体的負担などの認識の違いが、高津臣吾監督や三浦大輔監督と大きく違うのではないでしょうか。その差がペナントの終盤戦での投手陣の疲労という形で、チームの勝敗を左右しているのかもしれません。

長期的視点の必要性と選手のコンディショニング

打ち勝つ野球は投手陣の崩壊を招く

守備力を軽視して打撃戦を行えば、投手陣の負担は大きくなります。毎試合打撃戦を続けていれば、中継ぎ投手陣の疲労は蓄積する一方です。さらに狭い東京ドームでは当たりそこないでもスタンドに入ってしまうケースがあり、投手はより慎重になり、球数が増えてしまいます。結果として投手陣全体に負担がかかってきます。

打者が打席数が増えようが、ファウルを何球打とうが、選手の体が壊れることはまずありませんが、投手は球数が増えて登板数が増えれば、故障のリスクが高まります。今年、昨年のリリーフ陣の多くが故障を抱えたり、球威が戻らなかったりしているのは、偶然の出来事ではないと思います。

打ち勝つ野球は野手陣も披露させる

長い目で球団強化を目指すときに、打撃重視で打ち勝つ野球は投手に負担をかけるだけではなく、打撃陣も疲弊します。人工芝や野外のグラウンドで長時間守備についたり、守備機会のため走り回ることが多くなれば、野手も疲労します。今年外野手の負担軽減のため、二遊間の選手がバックアップや中継に走る距離や守備範囲が広くなっていることも、結果的に打撃に影響しているでしょう。

打撃戦は裏方も疲弊させる

試合時間が長くなれば、裏方さんも拘束時間が長くなります。それは労働環境の悪化であり、良いことがないのは一般社会と変わりないでしょう。毎試合遅い時間まで試合が続けば、スタッフやその家族にも負担がかかります。仕事だからと気を配れないようでは、管理職失格と言わざるを得ません。

守備の負担が小さくない東京ドームで、打ち勝つ野球を目指して、守備を軽視した起用をしている段階で、常勝球団は難しいのではないでしょうか。

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