キャッチャーのリードの悪さを批判され、勝てるキャッチャー勝てないキャッチャーなどのレッテル貼りが行われることが多い。プロ野球解説者の中にもキャッチャーのリードの悪さを指摘する解説者が多い。しかしキャッチャーを経験しているOBの中にはリード批判は結果論だとか、ピッチャーのコントロールが悪ければキャッチャーの責任はない、などと反論する解説者もいる。
日米の違い
米国のキャッチャーはリードなどでは評価されない。肩が強くフットワークが良くて後逸しない。これが良いキャッチャーの最低限の条件だ。日本のように打者によって弱点を攻めるようなリードではなく、投手の良いところを引き出すリードが多い。投手は自分で組み立てるケースが多く、ベテランキャッチャーでも投手がリードしていることがある。日本とはかなり考え方が違うようだ。
日本では何故キャッチャーのリードが注目されるのか
高速インターネット(Wi-Fi付き)+専門チャンネル月額1,750円〜【J:COM(ジェイコム)】野村克也さんの功績
これはキャッチャーが評価されるように、キャッチャーの能力、責任、評価を引き上げた名捕手がいるからだ。その人がキャッチャーは、グラウンドの中の監督だと言い切った。故・野村克也さんがその人だ。野村さんは南海時代にプレイングマネージャーとして活躍しただけに、発言に信憑性が高い。ベンチでの監督業と、グラウンドでの捕手と同時にこなしていたので、色々と見えてくるものが違うのだろう。現役を退いた後に、TVを通じてリードや試合運びについて解説していたが、それは他の解説者とは一線を画していた。今では当たり前のように、どこの放送でもストライクゾーンを9分割にして解説しているが、あれは”野村スコープ”と呼称して野村さんがいち早く利用した。
ID野球
その後野村さんはヤクルトの監督を務め、古田敦也捕手を育て上げた。古田さんはID野球の申し子として注目を集め、その後にプレイングマネージャーも務めた。野村さんは古田さんを評して「もともと頭のいい子だったから、投手の配球を読むことで上達し、2年目には首位打者も獲得した。」と言っている。一方で同時期に秦真司選手や飯田哲也選手を捕手からコンバートし、名選手に育てている。捕手の素質を見極める術と、捕手としての適性を持っていたということが見て取れる。若い時の古田捕手がベンチ内で野村監督に指導を受けている様子は、よくテレビカメラに抜かれていたが、当時からのファンはよく覚えていられるであろう。
宮本慎也さんはピンチでマウンドに集まった時に行われる、古田捕手の的確な指示に感銘を受け、配球に基づいた守備体型の指示の的確さを絶賛しコメントしている。
この様に野村さんの功績で、捕手の重要性と地位が広がった。逆に言えば野村さんの域に達することのできない捕手は、否定されることとなる。
その後の名捕手
野村さんのあとに続いて評価を得たのは、元ヤクルトの大矢明彦さんだろう。大家さんは元巨人の森祇晶さんと野村克也さんを、目標にしていたとコメントしている。その後森さんは西武の監督となり、大矢さんは横浜の監督となった。
大谷さんが横浜にコーチに招かれた時は、ドラフト1位で入団した谷繁元信捕手を育てる事がプライオリティーだったとコメントしている。谷繁さんも大矢さんがいなければ、今の自分はないという旨を「大矢さんからは心構えから始まって配球、キャッチング、スローイング、ブロッキングに至るまでキャッチャーとはなにかを教わった。」とコメントしている様だ。実際に古田さんと谷繁さんが捕手論を語る番組で、師匠役で大矢さんが出演していた。その後谷繁さんもプレイングマネージャーとして中日を率いている。
能力の差
過去の名捕手にはこれだけの偉業を成し遂げた人がおり、またその能力を評価されて監督を任されている。名捕手の価値は一気に上がり、そのためその後の捕手は過去の名捕手と比べられてしまうのである。そしてその名捕手を近くで見ていた選手たちは、その名捕手達で目が肥えてしまっている。実際にそれを体験できていない捕手は、自らの領域を狭める発言をするのでは無いだろうか?
コントロールが悪ければ配球もなにも関係ない、と発言する解説者もいるが、そのコントロールの悪い投手を上手くリードするのが捕手の枠割であるということを、判っていてわざとコメントしていると思う。そういった意味では解説者は、必ず本当のことをいうわけではない。選手を庇う発言もあり、差し引いて考えなければならない。
コントロールには、程度問題がありますけどね。 でもそこまでコントロールが悪かったら1軍では投げさせてはいけないですよね。
名捕手の功績と小林誠司捕手の評価
過去の名捕手によって、現役捕手の地位は上がったと考えてよい。批判の対象とされるが、それは期待と評価の裏返しでも有る。
通算打率.215、今年の打率は.125。通算安打数342本の小林選手が2020年から年俸1億円で3年契約を、結んだと言われている。小林選手より年俸が多い生え抜きの巨人の選手は菅野智之投手、坂本勇人選手、岡本和真選手の3人だけという事実が全てを物語っていると言える。打撃以外の部分でこれだけの評価を受ける代わりに、批判もされてしまう。それが今の小林選手に対する、評価と期待なのだ。
配球を教えられる元名捕手が、小林捕手の身近にはいるのでしょうか?
小林誠司捕手がこれから起用されるためには。巨人の正捕手問題。
東京五輪での甲斐捕手の評価
アメリカの正捕手マーク・コロズバリ選手は甲斐捕手について「衝撃を受けた、ゲームをコントロールしていた。」と絶賛している。日本の名捕手が、アメリカのキャッチャーの地位も持ち上げるかもしれない。