原監督が将来の監督候補として引退させてから4シーズン目ですが、未だに実現していません。高橋由伸さんが引退と同時に監督に就任したのとは、非常に対照的な状況です。監督候補の大本命とされながらも、未だに実現しないのは何故なのでしょうか。
阿部慎之助ヘッドコーチの評判
引退後二軍監督に就任した阿部コーチですが、余り良い評判がたちませんでした。現役時代にマウンド上で中央大学の後輩である、澤村拓一投手の頭をミットでポカリとやったイメージが強いのか、厳しい指導者であるとのイメージが付いています。二軍監督時代にも罰走を選手に命じたことなどが報道され、ネガティヴイメージが強調されています。
私が時代遅れの人間なのかもしれませんが、罰走の何がいけないかはよく理解できません。ノックでエラーをしたらもう一回や、負けたチームは腕立て伏せなど、良くあることで今もどのチームでも行われていることだと思います。ゲーム感覚ならばペナルティーは受け入れられて、試合でだらしないプレーをした結果の罰走を受け入れられないとは、少し思慮がなさすぎる報道ではないでしょうか。問題はその罰走に至る経緯や程度であり、選手が理不尽だと感じずに受け入れているならば、いじめでもない限りは外部が立ち入る問題ではないと思います。
阿部慎之助の思いやり
昭和の匂いがどことなく漂う阿部コーチですが、若い選手との世代間ギャップを抱えていることは間違いないと思います。阿部コーチのコメントを聞いていると、選手の将来を考慮してのコメントが目立ち、物足りない選手に対しての叱咤の部分を感じます。
相対した選手がどう感じるかは分かりませんが、時間を無駄にしている選手や、チャンスを掴みきれていない選手に対しての思いやりをコメントからは感じとる事ができます。
ジャイアンツは毎年育成選手を大量に指名し、一人一人のチャンスは他球団より少ないと言っていいでしょう。そんな中でやる気の出ない選手や、方向性の間違っている選手を切り捨てるのは簡単です。
ドラフト上位で入団した選手は、放っておいても努力する選手が多いでしょう。アマチュア時代に人一倍努力をして、その方向性が概ね間違いがないのでドラフト上位で入団してきているはずで、多くの選手は努力を惜しまない選手だと思います。
阿部コーチが気にしているのは、良いものを持っていながら力を発揮できていなかったり、努力が足りなかったりする選手に対して向けられているように感じます。
与えられた時間がドラフト下位や育成ドラフトの選手は、ドラフト上位の選手に比べれば極端に少なくなる世界の中で、のんびりしている選手や、ドラフト上位の選手と同じペースでは追い抜くことはできず、成功できません。阿部コーチ程のキャリアがあれは、選手全体を俯瞰する中で、努力が足りずに戦力外になってしまう選手が見えてしまっていると思います。特に捕手として一軍の投手、一軍の打者を間近で数多く見てきた経験は、今のジャイアンツの指導者の中でもトップではないでしょうか。
ある程度選手の将来が見えてしまっている中で、二軍監督というのは非常につらい立ち位置であり、努力が足りない選手に厳しく指導するのは、阿部コーチの優しさとしか考えられません。
ジャイアンツの育成選手大量採用は、決して丁寧に一人一人を育てようとしているのではなく、能力の足りない選手をどんどん入れ替えることが前提である筈です。
阿部コーチの監督としての能力
捕手出身の監督が必ず名監督になるとは言えません。監督としての成功者として野村克也さんや森祇晶さんが挙げられますが、近年では古田敦也さんや谷繁元信さんは成功を収める事ができませんでした。捕手出身の監督は経験豊富で野球をよく知っていると考えられますが、監督にいちばん大切なのはモチベーターとしての資質です。捕手として培った能力は、寧ろヘッドコーチとしてのほうが活かされるかもしれません。モチベーターとしての阿部コーチにどの様な能力が備わっているかは、やってみなければわからないというのが本当のところではないでしょうか。
監督として成功するための政治力
監督として必要な能力の一つに、政治力が挙げられると思います。野村克也さんは野球に関する能力は疑いようも無かったのですが、政治力が足らずに戦力が整わなかったという見方があります。その政治力に長けていたのが星野仙一さんと言われており、野村監督の後を受け継いで優勝したのは記憶に新しいと思います。
対一次政権で政治力が足らずに失脚したと思われる原監督は、星野さんの政治力を見習って第2次政権で復帰しました。現在は政治力を発揮して、GM職を置かずに力を発揮しています。
谷繁さんや古田さんが長続きしなかったのも、政治力に問題が有ったと個人的に推測しています。
阿部監督に政治力が有るかと言われれば、今は若さゆえに足りないというところが実際のところではないでしょうか。阿部コーチが政治力を補うためには、政治力を持った人を味方に付ける必要があると思います。今のジャイアンツで政治力を持っているのは、渡邉恒雄さん、原監督が挙げられるかもしれません。
若さゆえスタッフが揃わない
阿部コーチが新監督として力を発揮するためには、年下の能力が有るスタッフが必要となります。高橋由伸さんは時間がなく、更に本人が若いため、力のある年下のスタッフを集めることができませんでした。阿部コーチには時間がありましたが、年下のコーチが揃わない恐れがあります。そうなった時に、原監督の息のかかったコーチ人を受け入れるとなると、高橋由伸政権の二の舞いになる可能性が強くなると思います。
考えられる年下のコーチ候補
現在ジャイアンツ年下のコーチは下記のようになります。流石に若いだけに実績のあるコーチは、見当たりません。選手時代に主力として活躍した選手も数えるほどです。同様に外部に目を向けても、人材は多くありません。この後現役を引退する選手で長野久義選手などが候補として考えられますが、もちろんコーチとしては未知数です。
投手コーチ | 杉内俊哉 | 山口鉄也 | 大竹寛 | 青木高広 | 矢貫俊之 |
打撃コーチ | 亀井善行 | ||||
バッテリーコーチ | 加藤健 | 市川友也 | |||
守備コーチ | 橋本到 | 脇谷亮太 |
原監督は阿部コーチのことを考えているか
原政権下では若いコーチが育っておらず、かえってベテランコーチを呼び戻すような動きでしたので、阿部コーチは監督就任後にスタッフで苦労することになると思います。
阿部コーチを引退させて将来の監督として養成するのであれば、同時に阿部新監督を支えるコーチ陣も育てなければならないはずでした。
しかし実際は、桑田真澄コーチ、宮本和知コーチ、駒田徳広三軍監督、元木大介コーチなど、コーチとして実績のない阿部コーチよりも年上の人材を呼び戻しました。阿部コーチに禅譲後のことを、考えた人事とは思えません。
阿部コーチが現役引退の際に原監督から何を言われたかは外部からは分かりませんが、外部からは方向性の見えない人事であり、原監督と阿部コーチの将来に対する考え方が一致しているようには思えません。
この様に考えていくと、現状はたとえ阿部新監督が誕生しても、原監督の影響下をぬけられず、やりにくい体制しか構築できないのではと、穿った見方をしてしまいます。そうなった場合に、谷繁さんや古田さんと同じ様な轍を踏むのではと心配してしまいます。