なでしこが一世風靡した女子ワールドカップサッカーを、テレビで見ることができなくなりそうです。放映権料が男子の100分の1程度で、男女平等の観点からFIFA会長が受け入れられないとしていることが原因らしく、ドイツ、フランス、イタリア、スペインのサッカー先進国ですら放送局が決まらないという事態に陥っているようです。
公平と平等のはき違い
安易に偉い人を選んでしまうと、後で取り返しがつかないことになる典型だと思います。男女平等をことさらに叫ぶ人たちにありがちな状況で、平等と公平を履き違えているの一言に尽きるでしょう。
平等を訴えることによって、実質損をするのは女子サッカー選手であり、誰もが望まない結論に行き着きそうなこの状態を、誰も止められないのはあまりにも情けなく思います。
放映権の価値創造
スポーツの放映権は、そのスポーツに携わる人達のたゆまぬ努力によって価値が創造されるものです。今回の主張は女子サッカーの市場価値が上がらないことを、男女の扱いの不平等を訴えることによって解消しようとしたものです。これは過去の男子サッカー界の長い歴史によって築き上げられてきた価値に、乗っかろうという行為にしか見えません。
男子のワールドカップは第1回が1930年に行われており、100年近い歴史を紡いできました。
これに対し女子ワールドカップは1991年が第1回大会で、まだ30年あまりの歴史しかありません。
優勝賞金は男子が3800万ドルに対し、女子は400万ドルとほぼ10倍の差がついています。
これだけ歴史と規模の差があるものについて、男女間の平等を振りかざして、放映権の値上げを主張する事が、理解され難いのは現状が示しているでしょう。
そもそも放映権料はマーケットバリューであり、各スポーツはそのバリューを上げるために、努力を積み重ねています。
近年スポーツの放映権が高騰しているというニュースが度々報じられますが、それは価値創造に努力した対価と言えます。
MLBやNFLのコンテンツバリューの向上に向けられる努力は、凄まじいもので、一大ビジネスとなり、その放映権は鰻登りです。男子のワールドカップについても値段相応の努力がされているからこそ、高騰しているのでしょう。
まだ放映権を求める状況ではないコンテンツ
女子サッカーの場合は、まだコンテンツとして価値が低く、スポーツとして底辺を広げる段階にあるものだと思います。簡単に言えばまだ大きく儲けられる程価値がないということが、今回の現象でしょう。
サッカーの先進国であるイタリアやスペインでさえ放送局が決まらないのに、後進国である日本が決まるはずがありません。放映権を取るよりも、スポンサーを募集する段階である日本女子サッカーの段階であるのに、FIFA本部の方針によって日本女子チームの価値は上がらなくなってしまうでしょう。
女子サッカーの難しさ
女子サッカーが男子に比べて勝るものは何でしょうか?
テクニックは以前より上がったものの、スピードとパワーは男子高校生の全国大会のレベルまで到達できていないと思います。
女子ゴルフのように衣装などが華やかになるわけではなく、無骨なイメージでしかありません。こういう事を言うと男女平等論者に怒られそうですが、男子を上回る部分がなければ、プロスポーツとしての価値は上がらないでしょう。アマチュアではなくお金を取るプロスポーツなのですから。
かつてなでしこJAPANがワールドカップを制した時に、日本の女子サッカー界には千載一遇のチャンスが訪れました。しかし、ファンは正直なものであり、人気はあっという間に下降線をたどり、注目度も下がりました。スポーツコンテンツとしての力がなかった事だけが、真実ではないでしょうか。
スポーツなのですからファンを引き付ける魅力がなければ、放映権は上がることはありません。それがプロスポーツというものでしょう。
ファンは馬鹿ではない
ファンはそのスポーツの競技者ではなくても、確かな目を持っています。
例えば個人的には、ボクシングの4回戦は正直最後まで見るのが辛いですが、実力伯仲の世界戦は何度見ても飽きません。
You Tubeでは過去のタイトルマッチも見られるため、レナードVSハーンズ、ハグラーVSハーンズなどは、何度見ても見出すと最後まで止まりません。
これだけコンテンツが豊富にある中で、ファンの目は加速度的に肥えていきます。
日本のサッカーファンも、ワールドカップや欧州の最高峰のリーグを気軽に見られるようになり、目が肥えていっています。Jリーグのレベルも確かに上がっているとは思いますが、ファンの興味を惹きつけることが難しくなっているのが現状でしょう。
スポーツの価値創造はファンを引き付けることから始めなければ、一過性のものに終わり、やがて廃れてしまいます。
あの野球の最高峰のMLBでさえ、NFLとNBAに置いていかれないために、毎年ルールを変更し、努力を重ねているのです。
たゆまぬ努力をせずに、ファンを引き付けることができるのでしょうか。
Jリーグは欧州のサッカーに追いつく努力をしているのか、NPBはMLBに追いつくべく努力をしているのでしょうか?