シーズン開幕間際で、戦力もほぼ全容が見えてきました。ジャイアンツは今年も様々な手をうち、チーム強化に努めてきました。しかし長年課題となっている部分には、問題点が残りすぎてしまいました。
明らかになった坂本勇人選手の限界
加齢による衰え
既にレジェンドになった坂本選手。守備能力、打撃能力、リーダーシップなどその総合能力は疑いようも有りません。しかし懸念されているように、加齢による衰えは隠しようがないようです。ショートというポジションで常時出場をし続ける坂本選手に、劣化の波は押し寄せてきています。開幕直前ではありますが、オープン戦を欠場してしまうことになってしまいました。何らかの不安があったためとは思いますが、ショートとしてフル出場して100%に近い能力を出し続けることは、数年前から難しくなっているようです。ショートという守備の負担から打撃にも影響が出ているのは疑いようもなく、コンバートを考えるか、休養を取りながらの出場でなければ、怪我のリスクや打撃面での劣化は防ぐことができなくなってきているのだと思います。
優勝を目指すための原監督の判断
優勝を目指すためには、一選手の我儘は許されません。原監督はそういった組織の論理に、人一番現役時代に尽くしてきた選手です。原辰徳といえば4番サードが代名詞でしたが、現役9年目の1989年にレフトへのコンバートを受け入れています。前年に打率.300本塁打31本を記録しているにも関わらず、当時の藤田監督の説得を受け入れています。アキレス腱の不調があったとは言え、打撃面での劣化が見える前にコンバートを受け入れたのは、優勝を目指すチームのためという大義があったからだと思います。この時サードを任されたのは中畑清さんですが、シーズン序盤に故障。その後岡崎郁選手がサードに入りますが、444打席で打率.268、本塁打12本を記録しています。コンバートを受け入れた原選手は体の不調からか、試合数は114試合にとどまりましたが、459打席で打率.261本塁打25本を記録しました。1989年は原選手が31歳のときで、まだ全盛期に近いときであり、原選手がチームのためにコンバートを受け入れたことは、少し早いような気もしました。
坂本勇人選手を超える、ショートを担える選手はいない
候補は沢山いますが、決め手に欠ける状況です。どの選手を選択しても坂本選手には遠く及びません。しかし、坂本選手が故障してしまえば、また故障によって大きくパフォーマンスを落としてしまえば、優勝は遠のきます。まだまだ本人も周囲もショートでの出場を望んでいると思いますが、英断できるのは原監督しかいないでしょう。坂本選手が台頭した時も、二岡智宏さんに引導を渡したのは、原監督だと思われます。前年に打率.295本塁打20本を記録している二岡選手を、打率.257本塁打8本に終わる坂本選手に代えたのです。現時点で坂本選手を超える成績を残せる選手は見当たりません。しかし、優勝を狙うチームの監督として総合的に判断し、打撃面では大きく劣る岡崎郁選手を起用した藤田元司監督。藤田監督を師と仰ぐ原監督が坂本選手の起用を決めたように、今回も早めの英断がなされるのではないでしょうか。
若手中堅選手の伸び悩み
巨人は大人のチームと言われます。猛練習で有名な広島とは反対のようです。特に中堅以上の選手については自主性に任されているようで、選手によっては練習量が減ってしまう選手もいるようです。FAで移籍してくる選手がパフォーマンスを落としてしまうことも、そのあたりに要因の一つがあるのではないでしょうか。かつてヤクルトから移籍してきた広澤克実さんはジャイアンツの環境に甘えてしまったことを、後悔しているとコメントしています。デーブ大久保さんもライオンズの厳しさと、ジャイアンツの大人扱いを対象的であると指摘しています。ジャイアンツで若手が頭角を現しても、その後伸び悩んでしまうのは、ある程度実績を残した選手が、練習などを管理されなくなり、練習量が落ちてしまったのではないでしょうか。主力と認められたあたりから伸び悩む選手が多いのは、ある意味当然かも知れません。最近では澤村拓一投手、田口麗斗投手、戸郷翔征投手など3年目あたりで伸び悩んでしまいました。野手でも松原聖弥選手、吉川尚輝選手は一桁の背番号を与えられたのに、ここまでは完全に期待はずれです。
坂本選手や岡本和真選手などストイックに自分を律することができる選手と、自分に甘くなってしまう選手を同じ様に扱ってしまうことが、球団として問題があるのかもしれません。マスコミを親会社に持ち、パワハラ等が多く取り上げられる昨今の環境の中、人気球団であるジャイアンツで、猛練習を課することは球団としてリスクが大きいと判断しているのかもしれません。阿部二軍監督が罰走などを課したとして、パワハラ疑惑がネット上で話題となったりしましたが、そのぐらいで厳しさが損なわれるようでは、プロが育つ環境とは言いにくいのではないでしょうか。
12球団で1番の選手の練習量
原監督は各ポジションに置いて、12球団で1位を争う選手でなければならないと発言していました。実力が1位になるためには、それ相応の練習量が必要になるはずです。今ジャイアンツの若手・中堅選手の中で、12球団で一二を争う練習量の選手はいるのでしょうか?今年球団は2軍監督に二岡智宏さん、3軍監督に駒田徳宏さんを起用しています。原監督は自主的に練習量が増える環境づくりを、二人に託しているのではないでしょうか。駒田さんが就任時の挨拶で、“日が暮れるまでボールを追いかけた、野球が好きで仕方なかった少年時代に戻ったような気持ちで・・・”と練習量について間接的に触れていました。いささか遅かったとは言え、原監督が指揮する球団改革が実を結ぶことを期待したいと思います。
巨人の若手のひ弱さ
高卒2年目で期待された秋広優人選手と中山礼都選手ですが、体力の強化がまだ進んでいないようです。二人ともセンスは十分と言われながら、明らかに線が細く、スイングスピードも上がらないため速球を打ち返すことができませんでした。他球団の高卒新人選手が遥かに立派な体格で、バットを振り回しているのとは、とても対象的です。高校野球を見ていても立派な体格を作り上げている選手は、毎年多くなっていると思います。球団は選手の筋力アップのプログラムをどの様に作成し、達成させているのか全く見えてきません。この辺の管理もソフトバンク等から見習った方が良いのではないでしょうか。
更に上を目指しているソフトバンク
ソフトバンクは今年3軍で140試合の実戦を行うと発表し、2023年には4軍創設を目指しているようです。MLBでもAからAAAまで組織していることを考えれば、拡大し過ぎということはないでしょう。質量ともに拡充を目指しているソフトバンクに、今のままでは置いていかれてしまうのは、球界の盟主と言われたジャイアンツのファンとしては寂しいものがあります。
巨人は今のままでは球団改革ができない
昨年3軍のレベルの低さを元コーチから指摘されるなど、巨人の強化戦略はまだ質量ともに拡充する必要があるようです。その強化方法については、ジャイアンツのOBだけでは限界があると思われます。MLBや日本の野球界のみならず、各方面の知己を集めることを始める事ができなければ、今の規模の拡大はできても、質の向上を望むことはできないでしょう。原監督を頂点とする今の組織では、今の延長線上でしか動くことができず、球団改革は難しいと思います。