若手選手の育成に必要なものは何か コーチの役割は 頭を使う困難

キャンプも実戦が増えて期待のルーキーや若手選手が試されています。結果を出せる選手や期待に答えられない選手、様々ですが確かに差が出てきてしまいます。アマチュア時代に圧倒的な成績を残したのにもかかわらず、プロでは全く活躍できない選手がいる一方で、無名だったのにあっという間に成長の階段を駆け上がる選手もいます。

スカパー!プロ野球セット

プロへ入れる選手のアマチュア時代

ドラフトで指名されるような選手はアマチュア時代に圧倒的な実力を示した人がほとんどです。高校時代は一部の強豪校を除けは誰でも野球をできますが、大学生では選ばれた選手でなければ続けることが難しくなります。特に有名大学リーグに所属するようなチームでは、高校時代にある程度実績を残した選手でなければ、4年間続けても公式戦に出場することは難しいでしょう。

社会人野球ならばもっとハードルは高くなります。社会人として一般の入社試験を受けてチームに入る人は、とても珍しく仕事を犠牲にして野球に打ち込むことは許されないでしょう。社会人の強豪チームは以前とは違い存続のハードルも高く、良い成績を収めなければ廃部の可能性も高くなっています。学生時代に野球に打ち込みプロを目指す選手にとっては、社会人チームは腰掛けに近く、入社時に数年以内にプロ入りすることを条件に入社する選手もいると聞いています。今は選手引退後の面倒を生涯に渡ってみることは、非常に難しい状況のようです。

圧倒的に恵まれた才能の選手たち

このようにプロ野球にすすめる選手は、猛練習に耐えられる体の強さや、速い球を投げられたり、遠くに打球を運べたりするなど素晴らしい才能に恵まれた人たちばかりです。アマチュア時代にはその圧倒的な才能で好成績を収めています。逆にいえば、アマチュア時代にその天賦の才能で、プロになれない選手たちを打ち負かしてきた選手たちだけが、プロ野球の選手となれるのです。

プロ入団後の壁

圧倒的な才能に恵まれた選手たちが集まっているのがプロ野球です。150Kmを投げられる投手や、バットを速く振れる選手たちが集まっているなかで、勝ち残っていかなくてはなりません。そこでどのようなプレイヤーを目指して練習をし、強化していくのかが大切になります。

体の出来上がっていない高卒の選手であれば、基礎を大切に、体をプロの練習に耐えられる様に仕上げていくことが大切になるでしょう。未だ体ができあがっていなければ、体を強化することによって球速も上がるだろうし、スイングスピードも上がるでしょう。そうなれば実戦での成績も上がっていくでしょう。同時にプロとしての技術を経験豊かなコーチのもとで磨いていけば、もっと成績も上がるかもしれません。

では社会人や大卒の選手はどうでしょうか?今の時代はトレーニング方法も上がってきており、アマチュアでも体がある程度出来上がっている新人選手は決して少なく有りません。昨年活躍したDeNAの牧秀悟選手や阪神の佐藤輝明選手などは、入団時にすでにプロ仕様の体に近い出来上がった体格でした。アマチュア時代にはプロのようにずっと試合が続くことがなかったので、疲労が蓄積して調子を落とすこともあったようですが、今年はさらなる期待ができるでしょう。つまり大卒や社会人出身の選手たちは、基礎体力の向上によるパフォーマンスのアップは余り期待できません。

壁にあたった大卒、社会人出身の選手

一部の怪物のような選手は剛速球や遠くに飛ばす才能だけで、成績を残せるでしょう。しかしそれは最上位の選手たちだけではないでしょうか。

大卒や社会人出身の選手で壁にあたった選手が、体幹を鍛えたり、フィジカルを強化したりするというのは必要では有るが、十分ではないでしょう。145kmしか投げられなかった投手が150kmを投げられるようになっても、プロには150kmを投げられる投手はいくらでもいます。バットスイングの速さが上がっても、それだけでプロの投手は打つことはできないのは明らかです。

活躍する選手の頭の中

最近はYou Tubeなどで選手やOBたちの技術論などが存分に聞ける時代になりました。特にOB達の技術論などを聞いていると、随分と頭を使っていたのだなと感心します。フリーバッティングでもただ遠くに気持ちよく飛ばすのではなく、スライスをかけたり、ドローボールを打つ練習をしたりしていたようです。巨人OBの篠塚さんは故意に詰まった当たりを打ったり、引っ掛けたゴロを打つ練習などもしたりしていたとコメントしています。ヤクルトOBの古田敦也さんは、試合前の練習で気持ちよく柵越を打っている選手よりも、思い切りひきつけて詰まったりしている選手などを見ると、警戒感を強めていたようです。キャンプの中継などを見ていると、岡本和真選手等はただ遠くに飛ばす練習だけをしているようには見えません、方向を決めていたり、角度をつける事に注意していたりしているのかもしれません。

切り替えが効かず同じことを繰り返す選手と諦める選手

若手や中堅の選手の中にも差は出てくるでしょう。アマチュア時代に活躍した選手の中にはその頃の活躍が忘れられずに、自分の得意だったところを更に極めたいと思う選手がいるかも知れません。反対にアマチュア時代の考え方では活躍できないと考えて、違う方向で努力を始める選手もいるでしょう。キャンプなどでのインタビューを聞いていると、考えている方向が明らかになることがあります。

アマチュア時代に150Km超の速球で活躍した元巨人の澤村拓一投手は、“制圧したい”とコメントしてその速球を磨く方向に努力したようです。結果、技巧派にはならず速球派として、日本のプロ野球界よりもMLBで活路を見出しています。沢村投手の場合は自分の長所を信じて努力を続けて、さらなる開花を遂げたと言っていいでしょう。

反対に技巧派に転じて成功した投手は、多くの例が見られます。

打者も同様に、アマチュア時代は長打を望まれていたが、プロではアベレージヒッターになる選手が沢山います。何処で切り替えて自分の生きる道を見つけられるかが、若手や中堅の生き残る道です。

これはサラリーマンやフリーランスの世界でも同じですよね。学生時代に優秀でも社会人になれば、そのままでは通用しない人も多数存在します。

プロ野球という極めて短いサバイバルレースの中で、判断を誤るとあっという間に現役生活は終わってしまいます。悔いの残らないように努力する方向を、頭を使って判断してもらいたいものです。アマチュア時代には“努力すれば必ず報われる”などと教育しがちですが、プロは報われない人がほとんどです。その選手の間違った努力の方向を、正すことが出来るコーチは、どのチームに居るのでしょうか。

コーチの大きな役割を、今は果たせる時代ではないのかもしれませんね。

春に面談する際に、結果も出ていないのに毎年同じ目標と手段を続ける社員に、きちんとしたアドバイスが出来る管理職は、きっと良い社員を育てるんでしょうね。少し反省してしまいます・・・

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