ドラフト制度はFAとセットであると、言われることがある。
ドラフトでチームを選ぶことができないのだから、FAがその代わりに選手に与えられた権利であるとの主張である。
かなり不公平な理屈である。
プロ野球の場合、FAの権利を取得できるのは、ほんの一握りのスター選手だけである。殆どの選手は、FAを取得できる前に引退する。公平にするのならば、せめてドラフトは1巡目だけにするようでないと、数が合わない。
また権利を取得するための期間も7~9年と、とても長い。しかも日本のプロ野球は、基本的には1軍登録された期間をカウントする。MLBが選手登録をされた期間をカウントするのと大きく違う。アメリカの場合は殆どの選手が、5~6年でFAの権利を獲得できるようになる。日本の制度の場合海外FAを取得するときには、選手としての絶頂時を過ぎてしまっているケースが多い。国内FAをするときも、8年過ぎてから長期契約を結ぶと、その後半は選手としては下り坂である場合や、勤続疲労による故障が発生するケースが有る。
FAで移籍する場合、移籍先では好成績を叩き出せない時は、風当たりが強くなるのでFA移籍を躊躇する選手が出てくる。
FA移籍をすると前のチームのファンが、裏切り者扱いする場合があり、あまり見たくないものである。(かつて松井選手は裏切り者と言われても渡米しますと、インタビューに答えていた)
FA権利を行使して残留した場合、特に日本では美談扱いするケースが見受けられ、その場合調子を落としたり、故障した場合にファンは残留してくれた生え抜きだからと、温かい反応が多くなる。
また、人的補償が発生するケースなどでは、自分がFAの権利を行使したために、チームを移籍しなければならない選手が出てくる。そんな事を遠慮していると、FAは行使できない権利なのである。
ウェットな対応はある意味日本的で、ビジネスとして割り切る米国との違いは大きい。
若い世代ではFAでの移籍を、選手の権利としてドライに見ることのできるファンが増えてきたように思うが、米国との差は埋まらない。
米国も日本も南北に長く、気温差もあり人々の気質も違う。
米国では自分の家庭環境や本人の健康や食事の好み等に合わせて、チームを選ぶことができるが、日本では叶わない。
サッカーの場合はドラフトもFAも無いが、成立している。海外との関係性や、育成のプロセス、契約方式が違うので、単純に比較はできないと思う。海外への選手の流出を考えた場合、問題は複雑化する。MLBへの選手流出が常態化した場合は、日本プロ野球への興味が薄れる危険性がある。日本にMLBのチームができたなんてことになると、もう収拾がつかない。
サッカーの制度がプロ野球より優れているとは思わないが、もう少し選手側に寄り添った、制度を作れないものであろうか。
選手会は一部のスター選手のためだけではなく、すべての選手に恩恵のある制度を要求してほしい。実力を認められていない選手も、ドラフトで入団してきているのである。