プロ野球は競争の社会 気を抜けば負けの短距離競争 巨人若手の勝者

いよいよペナントレースが開幕します。各チームがスプリングキャンプでレギュラー争いを繰り広げて、1軍登録という形で開幕時点での決着がつきました。ジャイアンツでも結果を出せた選手、出せなかった選手がはっきりとした形で現れ、開幕1軍メンバーが決まりました。

阿部監督の素晴らしさ

今回のジャイアンツの一軍登録メンバーを見て、阿部監督の一貫した方針にブレがなく、選手間では納得のいく決定ではなかったかと思います。阿部監督は当初より実力主義を掲げており、チームの方針に合ったプレーのできる選手、更には日頃の努力の方向性も見ていたようです。時には選手を名指しで褒めたり叱ったりすることで、当該の選手だけではなく、チーム全体に対して注意喚起を促しているように見えました。これから実戦に入っていくので、今までの様には、なかなか理想通りにいくとは思えませんが、阿部監督の掲げたチーム戦略がどのように守られ遂行されていくのかが、楽しみでなりません。

気を抜いてしまった選手たち

一般社会とは違って、プロ野球の現役時代は間違いなく短距離競争です。はっきりいってペース配分など考えている時間はなく、どれだけ野球に打ち込むことができるかが勝負の分かれ目でしょう。これはレギュラーを奪い取った選手にも言えることで、少しでも隙を見せればレギュラーの座を狙っている選手に奪われてしまいます。長年レギュラーを守っている選手は、それだけ気を抜かずに努力を続けていることになります。

若手選手やサブの選手

レギュラーでさえ気を抜けないのですから、若手選手などは少しでも気を抜いたらあっという間に選手生命は終わってしまうでしょう。よく高卒の選手は焦らずにじっくりとファームで体づくりから、などということを聞きますが、焦らずじっくり取り組むことと、気を抜いてしまうこととは全く別です。

同じ高卒の選手でも1年で見違えるように体を仕上げる選手と、なかなかプロの体になれない選手とがいます。体質の問題などいろいろと個人差がある事は理解できますが、それも含めての競争です。体ができないことに言い訳をしているようでは、競争に勝てるとは思えません。いろいろと障害や問題があっても、個人の能力で乗り越えてこそ、その先があるのはどの競争社会でも同じだと思います。

監督交代で若返り

原監督は長期政権であったために選手の新陳代謝が停滞してしまいました。人事権も握っていたと推測される原監督が、人間関係をドライに割り切ることは非常に難しかったのは当然のことでしょう。久しぶりの監督交代で選手の入れ替えが起こるのは自然な流れだと思います。中田翔選手や若林晃弘選手が放出された様な形になったのは、チームを活性化するために進められた人事だと思います。その動きによってチームの競争が激化したのは球団の狙い通りでしょう。

チームの変革に気が付かない選手

阿部監督が推し進めるチーム改革に敏感に反応できる選手と、何処か反応が鈍い選手がいるのは組織であれば当然のことだと思います。コーチや選手の中には阿部監督の推し進めるチーム改革に従えない選手や、ついていけない選手が出るのは当然のことです。コーチ陣も大きく変わりましたが、同じことだと思います。

阿部監督は”自分も変わるから”と変革を求めたのに対して、変わりたくなかった選手や変わったつもりになっていた選手たちが、阿部監督の構想から漏れてしまうのはある程度予想できることです。

残念だったジャイアンツ若手捕手たち

今回逆転で小林誠司捕手が開幕1軍をつかんだ様です。昨年ほとんど使われなかったベテラン捕手が開幕1軍をつかみ、期待されていた若手捕手陣が2軍となったのは、阿部監督も本当に残念だったと思います。阿部監督が捕手だっただけに、若手の捕手陣の成長や考え方に何処か許せない部分があったのだと思います。

昨年ドラフトで捕手を指名しなかったのは、アマチュア球界の捕手不足とともに、ジャイアンツの若手捕手陣の底上げを見込んでいたからだと思います。

年俸1億円から3000万円に大きく評価を下げたベテラン捕手と、開幕直前に移籍してきたユーティリティープレイヤーに、抜かれてしまった事をどう考えているのか、メディアには突っ込んで聞いてほしいと思います。

捕手は比較的選手生命が長く、小林捕手のようにベテランになっても必要とされます。ジャイアンツの若手の捕手も他球団で活躍した例もあり、ジャイアンツでの活躍のチャンスはまだまだあるだけに、ここから更に頑張ってレギュラーの座を掴んで欲しいと思います。

原監督の期待値込みの起用

今年は実力主義で期待値込みの起用はしないようです。原監督は見込んだ若手選手に対して、実力以上の抜擢をする監督でした。それに応えられたのは、坂本勇人選手や阿部慎之助捕手でしょう。

昨年秋広優人選手は打力を見込んで重用されました。結果的にブレイクのきっかけをつかみましたが、守備走塁の向上はなく、課題のバッティングにも改善が見られませんでした。守備走塁で貢献できないのであれば長打力が求められる外野手で、オープン戦の結果は残念でした。また体づくりにおいても大きな進展がなく、阿部監督からも”キャンプでしぼんでしまった。”とコメントされていました。

ジャイアンツの55番を背負い、先代以上のスケール感のある秋広選手は期待値込みで起用し得る逸材ではありますが、阿部監督の方針からは外れてしまっている現状が見えてしまいました。

まだ高卒4年目であり、人間的にも成長段階であることは理解できますが、他の若手選手との比較においてどうなのでしょうか?

同じ高卒4年目の中山礼都選手も昨年、一昨年と期待値込みで徴用されましたが、今年は新人の泉口友汰選手の台頭もあって、開幕メンバーから漏れてしまいました。期待値込みの起用の間に実力を付けなければならなかったのに、どこか安心している間に後ろから抜かれてしまった感があります。

それでも二人共まだ高卒4年目です。来年は同学年の大学卒の選手が入団してきます。ここからの努力で来年のドラフト1位に負けない実力をつけることは、十分に可能でしょう。

高卒選手は自覚が必要

高卒選手は18歳で入団する子供です。人生経験も浅く、野球エリートの道を順調に歩んできた人がほとんどでしょう。

今年入団してきた佐々木俊輔選手や泉口友汰選手をみると、言動が大人であり、考え方もしっかりとしている事が良くわかります。二人は大学・社会人で磨かれていることが大きな原因でしょう。

大学や社会人は一般社会との接点が高校よりも多いので、いろいろな経験をすることができ、いろいろな人生が人それぞれに有ることを身を持って知ることができます。

対照的にジャイアンツの高卒選手たちは、ジャイアンツ球場と独身寮で大切に育てられており、関わる人達も同年代の野球関係の人達ばかりです。視野が狭くなり競争意識が薄れるのもあり得ることでしょう。大学・社会人と否応なく人間性が磨かれて行く選手と、温室のような環境で育った高卒の選手で、成長の結果に差が出るのは当然のことでしょう。

現状ではジャイアンツの高卒選手は、残念ながら一部の選手を除いて成長が遅いという結果になってしまっていると言っては言いすぎかもしれませんが、このあたりを球団がどうテコ入れするかがこれからの課題かもしれません。

球団の教育責任

高卒の選手を取るのであれば、人間教育も重要な課題ではないでしょうか?努力を怠れば何が待っているかを厳しく指導する事は、パワハラではありません。桑田二軍監督はある程度突き放した言い方をしていましたが、大人の考え方に成れない選手を導く必要はあるのではないかと思います。近年のジャイアンツの若手高卒野手の成長をみると、やはり物足りないものがあります。狭い世界に若いうちから入ってしまう事のリスクをもう少し考慮した、育成プログラムが必要だと思います。

しかし、一方で18歳は成人であり、自分で律することが求められるという考え方もあると思います。その方がメジャー流、あるいは今風なのかもしれません。

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