秋季練習も中盤を迎え、阿部監督の独自色が見えてきました。それと同時にジャイアンツのフロントが目指しているはずの組織強化が、実り始めている状況かもしれません。若手はこのオフが大切ですが、その導入部分として阿部監督が求めているものは何なのでしょうか?
アーリーワークは無し、遅出もあり
昨年導入されたアーリーワークは、賛否両論がありましたが、今年はなくなりました。寧ろ真逆の考え方の現れが、遅出練習の導入だったと思います。
アーリーワークは昭和感満載の全体主義が匂う練習方法で、一定の効果はあったと思います。それと同時にやらされてる感があり、選手によって合う合わないがあったと思います。しかし当時の首脳陣の考え方には、ジャイアンツを大人のチームとしては扱わず、弱いチームとして見ているというメッセージがあったと思います。実際近年の成績は明らかに下降傾向で、中でも中堅選手の伸び悩みは顕著でした。それに連れて、若手の突き上げも乏しく、ベテランの加齢による衰えの分だけチーム力が落ちていったと言えると思います。
そんな練習不足の状況を、昨年の首脳陣は変えていきたいという気持ちがあったのではないでしょうか。マスコミ球団ということで常にメディアに晒されている環境で、厳しさが足りない練習環境になりがちだったのは、最近のトレンドの中で、ある意味当然の流れと言えるでしょう。技術の向上は明確には現れませんでしたが、練習量が不足している現状を打破する契機にはなったと思います。
しかし、残念ながら結果は出ませんでした。
阿部監督のチームに対する信頼
阿部監督は2軍監督も経験しており、若手に厳しくできる人間関係をもっていると言えます。ここ3年ぐらいで入団してきている選手たちは、練習を自主的に練習できる選手たちが揃ってきたのではないでしょうか。
ファームも多くの育成選手を抱え、玉石混交の状態でしたが、最近は玉と石の区別がはっきりついてきています。結果を出しつつある選手はやはり自分で考えて、努力を惜しまない選手でしかありません。コーチの指示に従ってばかりで何も考えられない選手は、当然のように伸びていきません。これはなにもプロ野球に限らず、他のスポーツでも、もっと言えばサラリーマン社会でも同じだと言えます。
結果を出す社員は何かしら自分で工夫をしながら、毎日の業務を行っています。ただただ上司の指示通り業務をこなしているだけでは、成績は伸びません。埋もれていくのが当たり前の社会です。
ジャイアンツは育成選手を毎年大量に指名していましたが、今ひとつ選手の質が伴いませんでした。しかしここ3年ぐらいで、選手の質は大きく変わってきました。そしてその才能ある選手たちが、競争の激化によって、明らかに選別され始めています。自主的に頭を使って不断の努力を続けられる選手たちは、早ければ1年目から頭角を現しています。逆に言えば、3年で容赦なく切られることはもちろん、3年目には出番をなくしてしまう可能性さえあるのが、現在のジャイアンツではないでしょうか。
阿部監督はジャイアンツが変わり始めていることに自信を持っているのでしょう。それ故の練習方針に対するコメントだと思います。
出番をなくした選手たち
今シーズンは極端に出番を減らした選手たちが、多く出てきました。これはスカウト陣が優秀な選手を集め、頭を使った努力を惜しまない選手たちが、ファームに増えてきていることの現れでしょう。名前はここでは挙げませんが、今シーズン出番を減らした選手たちは、来シーズンは更に出番を減らすことになるでしょう。伸び盛りの時に質の低い練習をやっていれば、量をある程度こなしても、競争社会では生き残っていけません。今はそんな選手たちをコーチが引き摺ってでもやらせる時代ではなくなっています。時代の流れの中で低い方に流されてしまった選手は、才能がありながら淘汰されてしまうでしょう。
阿部監督の中ではもう選手の選別が、ある程度ついてしまっているでしょう。これからはより若い選手たちに、チャンスが回っていくのは組織としては当然の流れでしょう。
桑田二軍監督との方向性の一致
阿部監督と桑田二軍監督は、コメントの出し方は違いますが、かなりの部分で考えている方向は一致していると思います。これはジャイアンツのフロント陣も当然意思統一に絡んでいるはずで、ファームのハード面の強化にも現れていると思います。
今回のドラフト指名も、考え方、現在のチームの評価がしっかり出ている故の指名だと思われ、局面での指名ではなく、大きなチーム強化戦略の一部としてドラフト指名が考えられていることが見て取ることが出来、フロント陣の考え方が窺われる指名でした。
ようやく組織として動き始めたジャイアンツ、期待が膨らみます。
オフの過ごし方に注目
秋季練習はわずかな期間ですが、オフの過ごし方には重要な時間です。そんな事を阿部監督や桑田二軍監督が理解できていないはずがありません。秋季練習で課題を浮き彫りにして、オフの課題を見つけさせることを、どれだけの選手に見つけさせることができるかが勝負でしょう。やらされる練習で悲鳴を上げているようでは、競争社会では埋もれていく存在です。そしてそういった甘い認識は、多くの選手の場合、残念ながら失敗しないと気が付きません。一般社会とは違って、プロ野球選手が厳しいのは、やり直しが効く期間をチームは待ってくれないということです。
タイパやコスパ等の意識は大切ですが、その上で厳しい練習の量をやらなければ、今のプロ野球界では勝ち残ってはいけないでしょう。
そういった意識はアマチュアの頃から差が出ていると思います。今は昭和の時代のように一日中練習していることはありません。長くても2~3時間のアマチュアが多いでしょう。そんな環境下でも頭を使って量をこなしてきた選手でなければ、プロでは通用しないでしょう。全体練習についていくのがやっとでは、厳しい練習に耐えられる体作りで3年間が終わってしまう可能性もあります。重大な故障を発生したり、軽微な故障を頻発させたりしてしまえば、もうタイムオーバーです。
新人選手の場合は、入団前から大きな差がついている場合もありますね。
この秋季練習とオフは大注目です。