ルーキー門脇誠選手が、猛打賞、決勝のホームインを評価され、ヒーローインタビューを受けました。その中で「泥臭いプレーを求めている。」とのコメントが門脇選手よりあり、観客をわかせていました。ホームランによる豪快さや華麗なプレーが目立つジャイアンツですが、門脇選手のような泥臭いプレーをファンは求めています。もっともっと門脇選手は首脳陣から、評価されても良いのではないでしょうか。
自分で判断できる門脇選手
最後の本塁突入で驚いたのは、三塁の川相コーチの静止を振り切って、得点をもぎ取ったところです。兎角ベースコーチの指示待ちになり、判断が遅れがちの選手が多い中で、自分の視界に入っているプレーを自ら判断し、自分の走力とスライディングの技術を正確に判断した中での、素晴らしい走塁だったと思います。もちろんボールが死角に入っていた場合は、ベースコーチの指示に従うべきですが、今回は門脇選手が目視できたプレーです。川相コーチの判断も村上宗隆選手のもたつきがなければ正しい判断でした。しかし、村上選手のもたつきは内野の範囲内であり、川相コーチがあらためて突入の指示をしても、タイミングは難しかったと思います。常に先の塁を取る隙を探している門脇選手だからこそ、一瞬のすきを突いてサードコーチの指示を待つまでもなく突入できたのは、もっと評価されるべきでしょう。こういった判断プレーは、ベテラン野手も含めて見習うべきで、ジャイアンツに今最も欠けている要素の一つではないかと思います。
コーチの判断に頼り切りは責任回避
鈍足の選手ほど走塁の意識が低くなるのは、当然でしょう。しかし、今回のケースでは予想外の事象が起こり、門脇選手が自ら判断しているからこそセーフになりました。これがコーチの指示に頼り切りの選手は、コーチのストップで目を離してしまったり、集中を切らしてしまうケースが多いのだと思います。三塁まで走って一息入れてしまっているレベルの走者では、相手の隙は付けません。その意味で首脳陣から門脇選手の走塁を評価するコメントが、あまり見られないのは少し残念です。三塁コーチの指示を絶対とするか、自らの判断の一つの材料とするかは、その選手の能力によっても左右されるでしょう。しかし、今回の門脇選手の判断は正解であり、間違ってもコーチの指示を無視したなどの批判的な評価はしないでもらいたいと思います。門脇選手の走塁能力を最も掴んでいるのは、門脇選手自身であり、そういう選手に関しては、自らの判断を優先していい特権を与えてほしいと思います。
ファンの支持が高い門脇選手
門脇選手は自らもコメントしている通り、スマートな選手ではありません。体型もズングリムックリで、ジャイアンツには珍しいタイプです。プレースタイルも我武者羅なイメージがあり、一級品と評価される守備についても、軽快にこなすという感じではなく、力いっぱいのプレーが目立ちます。こういった選手は本当に貴重で、ジャイアンツでは良い意味で浮いた存在かもしれません。
本塁打攻勢が得意で、少し力の落ちた投手は圧倒できるものの、力が上の投手に対しては淡白な攻撃を繰り返すジャイアンツ打線には、貴重なピースだと思います。
日本シリーズで8連敗した時に、流れをつかめず為すすべなく破れた感があるジャイアンツでしたが、門脇選手が打線の中にいれば、何とかしてくれたかもしれません。クリーンヒットでなければ出塁できない選手よりも、ボテボテでも出塁できる選手は、エース級の投手には厄介です。ヒットが3本続かなければ帰ってこられない長距離打者は、エース級の投手には怖くないでしょう。一発さえ避けてしまえば、フォアボールでも問題なく、思い切って攻めていけると思います。しかし、門脇選手のようなランナーはフォアボールやボテボテの内野安打でも出したくないでしょう。盗塁を気にしなければならず、ワンヒットで2つ進まれてしまう可能性が高くなります。フォアボールを出して三塁線を抜かれれば、ホームインのリスクさえあるわけです。
門脇選手をランナーに出してしまえば、それだけでピンチであり、投手は出力を上げなければならず、消耗します。つまり門脇選手は一発は無いが、絶対に出したくない全力で抑えるべき選手であるということです。
8月23日のケースもボテボテの内野安打で出塁した門脇選手が、梶谷隆幸選手の投手強襲の内野安打でホームに生還しました。内野安打2本で1点という攻撃は、ジャイアンツらしくはありません。しかし例えばドラゴンズの誇るライデル・マルチネス投手から1点をもぎ取るならば、これしか無いような得点で、ジャイアンツの弱かった部分を大きく補完してくれる選手だと思います。
守備は開幕当初から一流の評価をされ、バッティングも順応している現状で、今日は高い走塁能力と野球センスを感じさせてくれる活躍でした。吉川尚輝選手の離脱により先発の機会が回ってきましたが、もうレギュラーとして常に出場を続けてほしい選手なのではないかと思います。来シーズン、早ければ今シーズン終盤には、上位を打つことになるかもしれません。
ただ、現状は上位に繋ぐ意味での8番が、結構ハマっているのではないでしょうか。
