ジャイアンツに育成計画は有るのか?球団強化戦略は有るのか?

ジャイアンツの若手の育成について、いつも批判があります。常勝球団を目指す中で、FA市場の不活性化やメジャーリーグへのスーパースターの流出など、逆風が強い状況が続いています。常に先進性を保っていたジャイアンツですが、西武ライオンズの台頭やソフトバンクホークスの存在によって、球界の盟主としての地位はV9時代より劣化し続けています。2023年のペナントレースでは、永遠のライバルである阪神タイガースに、ペナント中盤に入るまでに、10ゲームの差がつけられてしまいました。

現場の原監督に対する批判

そもそもプロ野球の監督は、現場の指揮官ではありますが、球団の強化戦略の責任を持つものではありません。原監督が若手の育成をできないことについて、批判をかなり聞きますが、的はずれであると個人的には思っています。

1軍は育成の場所ではなく、戦力として十分に成長した選手をファームが育成するべきであり、1軍と2軍を行ったりきた来たりするエレベーター選手が数多く存在することは、ファーム組織が十分に機能していないということになるのではないでしょうか。

戦力が揃わない、あるいは育たないことを現場の監督の責とするのは無理があると思います。

ファーム組織が不十分

現在ホークス、ジャイアンツ、ライオンズが3軍制を導入していますが、メジャーでは8~9軍が当たり前のようです。まず、数の面から日本のプロ野球は見劣りがしてしまいます。このあたりは、野球が習熟度をかなり必要とするスポーツの代表であるからではないでしょうか。運動能力が高いからといって、すぐにメジャーで活躍できるスポーツではないということです。

対照的なのはNFLです。特別なポジションであるQBを除けば、NFLは技術よりもフィジカル面の影響が強くパフォーマンスに現れる傾向にあります。そのため大学からの新人でも十分に活躍でき、その選手寿命は極端に短くなります。

技術的な部分の習熟度が必要な野球は、それだけ実戦の機会も必要になります。そのためには試合を多く組むことが必要になり、3軍といえども経費はかなり掛かることになります。結果として日本の球団は技術的に十分に成長していない選手でも、1軍でデビューさせ我慢して使うことになってしまう傾向にあります。

上昇を目指すジャイアンツが抱えるジレンマの一つが、ファーム組織の貧弱さに有ると私は考えています。

GM職の重要性

原監督は全権監督とよく言われます。それはジャイアンツがGM職を置いていないからでしょう。つまり原監督はGM職のやるべきことも、多くの部分で兼務することになります。ただでさえ激務で時間のない現場の監督が、広い視野と多くの情報の整理が必要なGM職を兼ねることは困難で、十分に職務を全うできるとは思えません。

また長期目線が必要となるGM職と、短期的な結果が必要な1軍監督で、利益相反が起こり、バランスの取れた判断ができる事は通常はありません。

これは組織であれば当たり前のことで、だからこそ違う職責が存在しているのです。

ジャイアンツに経営計画は有るのか

企業であれば当たり前の長期や中期の経営計画、強化戦略はジャイアンツに有るのでしょうか?

通常の企業は経営者が5~10年の長期経営計画を策定し、それに則って3~5年の中期経営計画を策定します。各事業部は中期計画に基づいて単年の事業計画を策定するというのが、ある程度の規模の組織が行っている経営計画でしょう。

非上場企業である読売新聞の場合はよく分かりませんが、上場企業であれば経営計画は公開されています。

ジャイアンツの場合はどうでしょうか。1軍監督である原監督は、企業で言えば課長です。会社の中期経営計画にもとづいて与えられた数値目標を達成するために、1年間の事業計画を立てて、優勝という数値目標を達成するために現場を仕切ります。与えられた人材について現場での育成は任されますが、基本的な育成プランは人事部が作成しなければなりません。

GM職は一般企業では部長に当たり、経営者目線で長期的なプランを立てて組織を運営しなければなりません。現場の課長を管理することも重要な責務です。

現状ではGM職がいませんので、3~5年の中期経営計画がジャイアンツには十分できていない可能性があります。ましてや球団経営のプロがやるべき5~10年の長期経営戦略は、作られたことは有るのでしょうか?

非上場企業であるジャイアンツが、一般に経営計画を公開する必要はなく、金融機関用には策定されているのかもしれません。しかしそれは球団施設や本拠地の運営計画などであって、現場の戦力の強化戦略が提出されている可能性は低いでしょう。

親会社の差が将来的に出てくるのでは

球団経営はかなり特殊であるにも関わらず、球団経営のプロは日本ではかなり稀有な存在です。親会社からの出向社員が一朝一夕でできるはずもなく、ノウハウの蓄積のためには各種の経営計画は必須のはずです。

球団の親会社の業態にもよると思いますが、業界によってその辺りのノウハウに大きな差が有ることは間違いないでしょう。

新聞社である読売や中日と、株主の圧力に常に晒されるソフトバンクや西武が同じレベルに有るとは思えません。

親会社の資金による差はこれからも存在するとしても、強化戦略の巧拙によって球団の戦力や育成能力に差ができてしまっていることを、マスメディアにはもっと掘り下げて欲しいと思います。選手の素顔も面白いですが、球団運営の実態についてもファンは興味があるはずです。

球団運営のシュミレーションゲームは、人気コンテンツの一つであることは間違いありません。

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