夢を追いかける野球選手たち 自己分析とチームプレー 野球脳とは

最近は夢を追いかけることを称賛する風潮にあります。成功することがほんの一握りの人たちに寡占されている状況でも、「諦めたら終わり。」と、諦めないことを尊いことのように評価する事が多いようです。しかし、実際は勝者の席の数は決まっており、諦めなかった人たちの多くは敗者となります。実際にプロ野球でも諦められずに同じ間違いを犯し続けて、選手生命が終わってしまう選手がほとんどではないでしょうか。

勝者の数は決まっている

プロ野球は残酷な世界です。NPBは12球団で支配下選手の数は70人です。日本ではNPBの支配下選手は最大でも840人です。ドラフトで毎年支配下選手が各チーム7人ぐらいは入るので、外国人の加入も考慮すると、毎年1割の人が支配下枠から外れなければならなくなります。1軍登録は29人で、ベンチ入りは25人、野手のレギュラーの数は8人です。野手でいえばたった96人しかレギュラーを取れないということになります。安定してスターティングメンバーに入ることがいかに難しいかがわかります。そしてこの数は増えることはありません。ということはいくら自分が理想通りのストーリーを描いて自己実現したと思っても、競争に勝てなければ勝者には成れないということです。DHや守備固め、代走などの特殊な役割を考慮しても、1軍でポジションを獲得するためには、競争相手に勝つことが必要です。つまり努力をして自分の理想に近づいても、競争に勝てなければ出場機会を得られないことになります。

時間がないプロ野球選手

プロ野球は厳しいことに、選手寿命が非常に短いので、若手と言われる期間が更に短くなります。簡単に言えば若手の時期を逃してしまうと、出場機会は極端に減ってしまいます。必然的にじっくり成長を待つという選択肢は、プロ野球には一部のスター候補を除いて無いことになります。簡単に言ってしまうと夢を追いかけている時間は、極めて限られているということになります。

的確な自己分析が必要

ドラフト1位で入団した選手が、キャンプで先輩たちのフリー打撃を見た時に、自分は長打力では勝負できないと判断したという話は決して珍しくありません。甲子園のスターがプロに入って脇役になる覚悟を決めた瞬間は、入団後間もなくが多いということです。後に中軸を打てなくてもレギュラーを獲得できる選手は、こういった判断が早く、居場所を確保することができる事になります。こうして居場所を確保することができれば、自分の長打力など潜在的能力を向上させる時間の余裕を得ることになります。俊足巧打の選手が晩年に長距離打者になるのは、決して珍しくありません。米国ではバリー・ボンズ選手がその代表格でしょうか。

”努力は過大評価され、判断は過小評価される。”という言葉は、”諦めたら終わり。”と言う言葉と対極の位置にあるのかもしれません。

野球はチームプレー

個人競技であれば夢を追い求めて選手寿命を果てさせるのも、個人の判断です。しかし、野球は団体戦で勝ち負けを争う競技です。個人の理想よりもチームの勝敗が優先されるのが当然なのですが、そのあたりの判断がいつまで経ってもわからない選手がいるようです。自分の夢の実現のため、チームプレーや自己犠牲ができない選手は、居場所を失います。チャンスにここぞとばかりバットを実力以上に振り回す選手は、首脳陣から信頼を失います。チームメイトからも自己犠牲のできない選手は、一部の主力を除いて浮いた選手になってしまうでしょう。

いつまでも自己分析のできない選手

2軍で大活躍ができるのに、1軍で通用しない選手が少なくありません。まだ発展途上の若手選手であれば、伸びしろは考えられます。しかし中堅になった選手がいつまでも2軍の帝王であり続けるのは、自己分析ができていないからでしょう。

特に日本のプロ野球は、1軍の投手と2軍の投手とで大きくレベルが違います。2軍の投手は1軍に近い投手もいれば、育成の投手もいます。そんな投手からいくら快打を連発しても、1軍のローテーション投手、ましてや勝ちパターンのリリーフ投手とは大きくレベルが違い思い描く結果は得られないでしょう。2軍で成績を残しても1軍で打てないことをメンタルや経験のせいにすることがありますが、ほとんどは実力不足だと思います。

10打席も見れば1軍の首脳陣には実力がわかるはずで、チャンスをあげ続ければ成長する選手と、同じことを繰り返してしまう選手は扱いが違ってしまいます。

チャンスで考えもなく2軍でやってきたことを信じてバットを振り回すだけならば、チャンスを掴みきれなくなるのは当然のことでしょう。

何故ならば相手は競争を勝ち抜いた1軍の投手だからです。自分を分析して努力して居場所を獲得した投手が、考えもなく実力以上の実現を目指す選手に負けることは少ないというのは当然のことでしょう。

プロ野球でも頭のいい選手、判断力の優れた選手が生き残るのは当然のことでしょう。フィジカルだけで勝ち上がれる選手は、まずいないと思います。それほどどんな選手でも勝ち上がる選手は適切に判断して、努力をしていると思います。フィジカルエリートが集まる頂点の世界で勝つ人は、頭の良い人で間違いないでしょう。

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