巨人がオープン戦の序盤で大きな問題を発生させています。ここまでの実戦で新戦力となりそうな若手や新人の台頭が、思ったほどに無いことが見えてきました。さらに一番の問題は成長曲線が期待されていた、中堅選手の伸びが殆ど現状では見られないことが、解ってきてしまいました。
スカパー!プロ野球セット一番期待の大きかった戸郷翔征投手の2軍落ち
戸郷翔征投手はジャイアンツファンの希望です。最近の新人の中では、唯一と言っていいほど実績を残しているローテーション投手です。高卒2~3年めで9勝ずつを挙げていて、今年は更にパフォーマンスの向上を、本人と首脳陣が目指し、ファンの期待を集めている投手です。しかし、ここに来て2軍落ちが通達されていました。
オープン戦の序盤であれば相手チームも主力の調整は進んでおらずに、若手の力試しが多くなります。戸郷投手が本人の目標のように最多勝を目指せるレベルであれば、相手を圧倒するようなパフォーマンスを示すことができなければ目標達成は難しいと言えます。
具体的には戸郷投手の決め球のフォークを多投しなくても、ストレートの球威と改良中のスライダーぐらいで、相手若手打者に格の違いを見せつける様なレベルでなければ、最多勝は狙えないと思います。
昨年の終盤の戸郷投手の失速を首脳陣や本人がどう分析したのか、全く情報が有りません。考えられるのは以下の3つぐらいでしょうか。
*ストレートの威力が疲労により落ちてしまった。
*相手の分析が進み投球のパターンが読まれて、対策が確立されてしまった。
*長いイニングを消化するために、投球のレベルを上げようとしているが、発展途上。
1つ目のケースであれば、オフの間に体を鍛えて、より出力が上がるようにしなければなりませんが、今のところは大きなフィジカルの上積みは確認できません。
2つ目は新しい変化球や、攻め方を考えなければなりませんが、オープン戦ではあまり大きな変化は見られないようです。
3つ目のレベルアップについては、コントロールの向上が、戸郷投手と桑田投手コーチが目指したものだと思いますが、これも成果が出ませんでした。桑田コーチからも“相変わらずアバウト”と一刀両断されてしまいました。
3年目ということで難しい立ち位置にいることは、首脳陣やファンの皆さんも十分に認識されている中での現在の状況を、首脳陣が許せなかったのではないかと思います。故障ではなく単に投球のレベルが上がらないのであれば、改善は長い時間がかかるかもしれません。場合によっては中継ぎやセットアッパーへの配置転換が試されるかもしれない状況ではないでしょうか。活躍3年目の投手が巨人の場合も失速するケースが多く、巨人の育成能力の問題があるのではないでしょうか。このあたりの育成は本人の自覚と、周囲の教育やコーチングの問題が大きいと思います。
昨年からわかっていた高橋優貴投手の失速
昨年ストレートのキレを増して、強気の投球で前半戦に活躍した高橋投手ですが、後半に失速してしまいました。右打者の内角にキレの良いストレートを投げ込んだ後に、決め球のスクリューを振らせるパターンで勝ち星を積み重ねました。しかしスクリューは制御が難しいようで、大きくコントロールを見出してしまうことが散見されました。また、他球団の慣れも出てきているようで、相手打者を振り切ることができずに、球数が増えて降板することが後半は増えてしまいました。
今年は桑田コーチの指導のもとに、コントロールの向上を目標にしていたようですが、オープン戦では結果が出ませんでした。主力以外の選手たちを抑えられないので、2軍降格も当然かも知れません。桑田投手は高橋投手について、戸郷投手ほどの球威がないので、コーナーを突く制球力の向上が必要とコメントしていましたが、高橋投手は桑田コーチほど起用ではないのかもしれません。
中堅投手の育成能力
過去にブレイクした、もしくはブレイクしかかったが失速してしまった投手は、数えればきりが有りません。入団後短い期間で結果を出した選手も、相手チームの慣れや研究によって通用しなくなってしまった投手は、何がいけなかったのでしょうか。
一流と言われる投手は、圧倒的フィジカルで押し切っているわけでは有りません。長く好成績を挙げる投手ほど、フィジカル以外の部分で努力しているようです。山本昌さんや石川雅規投手の例を上げるまでもなく、フィジカルの明らかに衰えた投手が好成績を続けるのは、フィジカル以外の部分の努力も怠らなかったからと言えるでしょう。
今ブレイクしかかっている堀田賢慎投手や山﨑伊織投手も、いずれはフィジカル以外の部分でのレベルアップを求められる時が来ます。そんな時に自ら何でも解決できる投手は、ほんの一握りではないでしょうか。その時に的確なアドバイスが出来るコーチがいなければ、無駄な努力が続き選手としてのピークは過ぎてしまいます。
今確定しているローテーション投手の顔ぶれは、菅野智之投手、山口俊投手、メルセデス投手だけと言えるでしょう。ここ10年近くジャイアンツがスカウティングして育成できた投手が、何人いるのでしょうか・・・
コーチの役割は何か
かつて巨人のドラフト1位の投手は、好成績を長年に渡って挙げることが多かったと思います。
しかし今のジャイアンツはどうでしょうか?沢村投手や田口投手は3年目に失速しました。桜井投手はブレイクしかかって、失速しました。フィジカルが充実していたと思われた平内投手は、フィジカルを更に鍛えたようですが、今年も結果が出ていません。
目の前のことを、足元を見ながら一歩ずつ努力することは必要です。しかし努力の方向が間違っていれば、正しい方向へ導いてあげなければコーチの価値はありません。フィジカルを鍛えることは重要です。選手はトレーニングを続けることで、毎日充実した気分も味わえるかもしれません。しかし考えることを怠れば、努力の方向を間違えてしまいます。今までフィジカルを鍛えることで結果を出し続けてきた投手は、その成功体験を抜け出せないのではないでしょうか。
アマチュアで結果を出し続けてきた選手を、1ランク上げることができないのは、コーチの責任がとても大きいと思います。
一般社会でも努力の方向を上司や先輩は、きちんと教えて上げることが大きな評価ポイントですよね。ただ気分よく仕事をさせてあげるだけでは、持続的な好成績は見込めません。