日本人の給料が上がらない理由 失われた30年の嘘

日本人の給与が上がらずデフレが続いています。これだけ勤勉な国民が毎日働いているのに、どうして給与が上がらないのか不思議です。なんでこれだけ働いても給与が上がらないか、いろいろな理由をつけてもっともらしく解説されますが、それでも納得がいかない事が多いです。

終身雇用や年功序列賃金で雇用が守られているから

よく理由にされるのは、日本の企業は雇用を大切にするから賃金を上げることができないということを聞きます。もっともらしく聞こえて、「クビになるよりまし!」と考えてしまう人もいるでしょう。しかしその判断には大きな疑問符が付きます。むしろ経営陣の無能を隠す言い訳にしか聞こえません。

日本の会社が成長できない理由

それでは今のままの状態で賃金を上げなければ、その会社はずっと存続できるのでしょうか。答えはノーです。会社は成長しない限り、いつかは潰れてしまいます。日本を代表する大企業が倒産に追い込まれたり、政府の資金に援助されたりするケースは決して珍しく有りません。その際に実施されるのが事業のスリム化と合理化です。簡単に言えば不採算部門の売却と成長が見込まれる分野への集中投資です。このことは企業の経営者もわかっているのですが、日本の経営者には大きな事を判断する能力にかけているのでできません。ゴーンさんが日産を立て直したと言われますがは、何も難しいことをしたわけではありません。不採算の部分を削ぎ落として、採算が見込まれる部分を残しただけです。しかし日本人経営者ではいろいろな柵あって、決断できないのです。日本人の大企業の社長は、今は創業者と言われる人が少なくなっています。大きな実績をあがるよりも大きなエラーをしないで、上司の言うこと、組織の言うことに従って努力してきた人が、社長になるケースが今の大企業ではどうしても多くなります。そうなると会社を左右する大きな判断を、できるだけしない会社になりがちです。リストラや事業売却などは追い込まれてどうにもならなくなって、組織の創意が取れた中で実施することが多くなります。しかし、それでは遅いのです。成長のタイミングを逃し、不採算の部分を切り捨てられずに大きな成長が見込まれない会社が、投資資金を溜め込んでしまっている状態が、今の日本の経済だと思います。

加工貿易の限界

日本の企業の大部分は、ものを作って売る仕事です。過去に加工貿易と言われていましたが、今もその構造は代わり有りません。原料や部品を海外から仕入れて完成品を海外に売るという形態は今も変わりません。高度成長時代は欧米に追いつけ追い越せで頑張って、殆どのものづくりで成果をあげました。しかし過去30年は、後ろから東南アジアや中国が追いかけてきたのです。欧米諸国はものづくりから撤退して、その他の部門で成長しています。それがGAFAMに代表されるような企業です。そして資本家として英国や米国のひとたちは、富を蓄えています。しかし、日本はどうでしょうか。富を溜め込んでいるのは一部の資本家と、大企業です。本来であればその溜め込んだ富を。投資に回さなければならないのですが、その判断をできる経営者が日本の企業にはとても少ない。そのため投資が進まず、企業の内部留保だけが積み上がっています。

何故積み上がった内部留保を賃金に回せないのか

簡単なことです。ものづくりにおいて、大部分の日本人が東南アジアの人たちや、中国の人たちより優位に立てなくなったからです。これ以上賃金を上げると、ものづくりでは企業が存続できないから、いくら政府が賃上げを煽っても、できない企業がほとんどなのです。雇用が守れないから賃金を上げられないのではなく、賃金が上げられるような新事業を現状の経営陣が立ち上げることができないので、賃金を上げられないのです。

何故日本人経営者は新しい事業を起こせない人が多いのか

新しい事業を起こすような社風になく、従業員には足元を見つめて毎日地道に努力する事を求める企業が多いのです。そのため経営トップに就く人も、安全運転で変化を求めない人がなりやすい環境になります。出る杭は打たれるとよく言いますが、日本全体がその体質であれば、成長できるわけは有りません。出る杭を育てなければ、成長は鈍化するのは当たり前の話です。

株主の意見が弱い日本

無能な経営者にノーを突きつけることが出来るのが、米国の株主です。内部留保などを溜め込んで配当も出せない経営陣は、無能の烙印を押されます。米国の成長が何故日本で実現できないかの大きな理由は、ここにあるといえるでしょう。稼いだ利益を新事業で増やすことを考えることができず、じっと同じ事業を突き詰めていく。効率を上げ精度を上げることで利益を上げていくことにすべてをかける。こういったスタイルには限界が来ます。限界が来たビジネススタイルにノーを突きつけられない事が、日本人の給料が上がらないことに繋がります。なぜなら効率を上げるためには、安い労働力が不可欠だからです。政治が悪いのは、市場から退場しなければならない経営者や業種を、規制によって守るからです。こうした行き過ぎた保護が、結局は日本の成長を止めているとしか言わざるをえないでしょう。

技能研修生は最終手段 経済成長を止めてしまう

よく言われる技能研修生は、安い賃金で働いてくれる日本人の代替です。これは間違ったことでは有りません。日本人の賃金が上がれば、当然安い賃金しか払えない業種は労働力が足りなくなります。しかし、それは高い賃金で働くことが出来る労働環境を日本人に提供できる、経済成長を同時に実現することが必要です。規制改革なくして経済の発展は有りません。経済の発展は新陳代謝が無ければ、実現できないことを政治家は認識しなければなりません。新しいものに投資するためには、古く非効率的なものは捨てなければなりません。経済の発展は自立しているはずですが、政治がブレーキを掛けているのではないでしょうか。ある程度の制御は必要ですが、成長を止めるブレーキはやりすぎです。

企業の責任を果たせる経営を

経済成長を成し遂げるためには、新しいことへのチャレンジが必要です。古いものを突き詰めるだけの経営は、成長に限界があります。限界が来たら市場から退出しなければなりません。ただただしがみつくだけの経営は、経済成長を妨げるだけです。広く株主に投資をしてもらっている企業は、経済成長をしていく義務があります。私企業ではないことを認識しなければなりません。一部上場の経営者に、どれだけその認識があるでしょうか。おそらくほんの一握りだけの成長している企業だけでしょう。賃金が上げられず、配当も出せない企業の経営者は、退場しなければなりません。

企業も永遠に存在できるわけでは有りません。事業売却などでソフトな終わり方を目指すべき企業も多いはずです。終身雇用や年功序列を守るといった言い訳が、経営者の隠れ蓑になっているのではないかと思います。

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