2025年が始まりNISA枠が新たに授与されているため株式市場が活況を呈するかと思いきや、日本株市場は落ち込んでいます。企業の業績は円安の効果もあって良い企業が多いはずなのですが、株価は全く上がってきません。日本取引所はPBR1倍以下の企業に対して注意を促すなど指導をしてきましたが、未だに1倍割れの企業は多く残っています。
経営能力のない日本人経営者
創業者は別として、今の日本の上場企業の経営者の多くに、経営能力がないことの現れがPBR1倍割れだと言っていいでしょう。これは番頭的なキャラクターを持つ、現状維持路線から離れられない経営者が、出世していくという日本の企業文化の表れではないかと個人的には考えています。余程企業が傾かなければ、基本的には前任者のやっていたことを踏襲することでリスクを避けている経営者が殆どであること、前任社長が次の社長を選ぶときに、自分の息のかかった、もっといえば自分が院政を引くことができる後任を据えることが原因だと思います。しかし、企業の寿命は案外短いもので、業態を次々と変えていかなければ、企業の延命はできますが、成長はできません。今の日本の上場企業の殆どは同じような問題を抱えていると言っていいでしょう。
資本主義をわかっていない企業経営者
日本では極端に言うと会社を潰さないことに主眼をおいていて、成長することに目が向かない経営者がとても多いと思います。そのため同じ工場を世界中に展開する横への拡大は得意であっても、新しいビジネスが育たないので、頭打ちがやってきます。
更に言うと海外で稼いだ利益を日本の株主のために還元せずに、海外で再投資に使っているので、日本の株価が上がらないということが続いています。
海外の株主であれば、配当や株価で応えなければ、経営者にNoが突きつけられるのですが、日本の株主はおとなしいので、日本の経営者を甘やかしてきてしまいました。
外国人経営者と日本人経営者の差
武田薬品工業は外国人の社長ですが、2024年3月の決算で一株あたりの利益92.1円に対して、配当金を188円出しました。しかも2025年3月期も同様に、利益を配当が上回るという予定にしています。十分に配当できる財務状況に有るということで経営陣は発表していますが、日本人経営者では考えられないことでしょう。
日本人は企業を育てようとする
実際に海外では株主となる投資家は、配当などを強く求めてきます。
例えば日本の上場企業が、東南アジアでローカル資本と組んで現地法人を作った場合、日本人の経営者や日本の親会社は2~3年は配当など出せないというのが大方の考え方です。しかし現地の資本家は、1年目から配当を求めることが珍しくありません。
日本人はどちらかと言うと企業を育てるということに重点を置きがちですが、海外では利益を出すことに主眼が置かれると考えて良いのではないでしょうか?
ですから株価も上がらず配当も出せない企業は、全く評価されません。PBR1倍割れなんてことが許されているのは、日本の投資家たちが甘いからと言って過言ではないと思います。政策による持ち合い株が非難され、金融機関が放出を決めたのも、こういったことが背景にあることはよく言われています。
ですから外国人投資家や外国人経営者から見れば、日本の上場企業の多くは、能力のない経営者によって経営され、ポテンシャルを活かせずに資本効率が上がらない無能な経営者によって経営されていると見られるのだと思います。
大手コンビニストアが買収されそうになっているのも、その現れの一つと見て良いのではないでしょうか。
資本主義の基本がわかっていない日本社会
企業は誰のものかと言うと間違いなく株主のものです。経営者のものではなく、従業員のものでもありません。
しかし日本の社会では株主よりも従業員を重視したり、経営陣を重視したりする傾向にあります。日本式の終身雇用が大きく影響しているとは思いますが、これはどんどん変わっていくでしょう。
解雇規制が非常に厳しい日本ですが、このあたりを社会保険でサポートしながら企業に自由度を与えないと、企業の活動が縮み上がってしまっています。新しいビジネスを始めようと考えても、正社員を新たに雇うことにブレーキが掛かるようでは資本の効率化は実現できないでしょう。
投資も機動的にできないようでは、企業活動のダイナミズムが大きく毀損してしまいます。
労働者よりも資本家に主眼をおいた社会にしなければ、いつのまにか社会主義の国のように経済成長ができない国になってしまう、というか既になりつつあると言っていいでしょう。
出るものを叩く文化は、共産主義と何処か重なる部分があります。
親中派と言われる人が政治家に多いのも、なにかこのあたりに原因があるように見えて仕方がありません。
資本主義の果実を得るためには、このあたりの教育からやり直さなければいけないでしょう。NISA枠を何処に使うかは、非常に大きな問題だと思います。何故ならばNISAによる投資は、長期的視点による選択でなくてはならないからです。
人口減だけが日本の株式市場が成長しない理由では無いと思います。
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