2025年になって株式相場が日米ともに冴えません。日経平均は3月3日の場中でおよそ4.7%減です。NISA参入組に人気のS&P500は年初来1.46%増ですが、円高が進んでいるため、eMAXIS Slim S&P500では過去三ヶ月で1.3%下がっています。去年から新NISAを始めていれば昨年の含み益がありますが、今年から新規参入した人の中には含み損を開始早々抱えてしまった人が、決して少なくないと推察します。これからどうしたら良いのでしょうか?
個別の日本株も不調
新NISAでの新規参入者は比較的株の初心者が多いため、どうしても大型株が買われがちです。株式を購入する人にとって一番のリスクは倒産なので、名の知られた大型株や政府が絡んでいるような株が買われるというのは、当然の流れと言っていいでしょう。
実際に新NISAで買われている大型株のランキングを見てみると、JT、三菱商事、三菱UFJフィナンシャル・グループなどが続きます。金利上昇局面で買われている銀行株を除くと、現在は下がっている株が非常に目立ちます。新NISAでの参入者のためにか、大きく株式分割をして、参入のためのハードルを低くしたNTTは買いやすさと安心感から非常に人気銘柄ですが、年初から7%弱も下がってしまっています。7%の下落は株式の初心者でなくてもかなり精神的負担になりますので、初心者でいきなり7%の含み損を抱えてしまったら、狼狽売りがでてきてしまっても理解できる状況だと思います。
こんな時を想定して年初一括買いをせずに待機していれば買いのチャンスなのですが、投資初心者にはここまで下がってくると、まだ下がるのではないかという恐怖心からなかなか手が出なくなってしまいます。
株式投資に十分経験があるベテランでさえ、”落ちるナイフを掴む”のはとても勇気がいることで、なかなか買い時が難しいので、投資初心者には上手くタイミングを図ることなどはとても難しいことになるでしょう。
2つの意味の分散投資
こういった恐怖心に打ち勝つためには、分散投資しか無いと個人的には考えています。1つ目の分散投資は銘柄を分散させることです。最近は個別の高配当銘柄を分散保有することを推奨する動画などが多く配信されていますが、個別銘柄は管理に一定の手数がかかることから、会社員などを続けながら個別株を多く管理することは難しいと思います。仕事中に株の動きが気になってしまうようでは、本業に悪い影響がでてしまいます。であれば、最適解は投資信託での分散投資が最適解となるでしょう。ただ残念なことに日本株の投資信託はS&P500やオルカンなどのドルベースでの投資信託に比べて手数料などのコストが高く、運用成績も劣ります。このあたりの欠点を埋めるような商品が日本株で出てくれば良いのですが、まだまだ歴史が浅く安心できる商品が見当たらないのが実情でしょう。
2つ目の分散投資は購入時期を分散させることです。新NISAでも年初一括か分散投資か議論がされていますが、過去の実績から見えれば年初一括が有利となっています。ただ、年初一括はメンタルを保つことがとても難しくなります。特に投資初心者にとっては年初一括で購入してしまうと、相場が悪くなったときに狼狽売りをしてしまいかねません。そんなメンタルの状況を考えた場合、いつでも暴落が来たら余裕資金の一部を追加できる分散投資が良いでしょう。
新NISAの優れたところ
まずは非課税枠を5年に分散させたのは、非常に良い枠組みだと思います。イギリスの制度(ISA)を手本としていると言われていますが、年間投資限度額を設けたところは、強制的に分散投資されるため、非常に初心者にはありがたい仕組みだと言えます。たとえ枠いっぱいを毎年1月に一括投資しても、長い目で見れば5年にわたる分散投資のため、大きなリスクを回避できると思います。残念なのは、ISAが非課税保有限度額が無制限なのに対して、NISAは1800万円となっていることでしょう。どうも日本人はリスクを取ることに臆病なくせに、リスクを取って勝ち得たリターンに不労所得と軽んじるところがあり、そのあたりは霞が関あたりから考え直してほしいと考えてしまいます。
将来的にはインフレに従い枠の拡大も考える必要があり、若い世代が霞が関にも増えれば、改良されていくかもしれません。
日本の悪いところは一度決めてしまうと、金科玉条のごとく崇めてしまうところで、欧米のように常に改良を重ねていくマインドが、政府にも欲しいところです。
本家本元のアメリカがDH制に移行したのにもかかわらず、DH制を守る日本のプロ野球や六大学を見ていると、本来大切にするべきことが何処かに行ってしまっているように見えます。
同じようなことが日本で起こるすべての局面で見ることができ、もう少しマインドを変えていかないと、世界のスピードに負けてしまうことが続くでしょう。
守るべきは伝統芸能や宗教上や道徳心等のことに多く存在するとは思いますが、それらを守りさえすればスポーツや経済のことでは守るべきものはほとんど無いと思います。
日銀や財務省が伝統的手法にこだわるのも、相似形の出来事だと思えてなりません。
新NISAも常に国民のための改良を、怠らないでいてほしいと思います。
振り落とされないでほしい新規参入者たち
新NISAという優れた箱は作りましたが、中身に入れる投資信託はあまりいいものがありません。政府は金融教育とともに、金融機関への指導も強化してほしいと思います。まだまだ2年目の新NISAですが、成功のモデルケースをISAからでも紹介して、一定のマニュアルを作ってほしいと思います。投資の失敗の責任を負いたくない気持ちは理解できますが、株式市場全体が成長できないのは、政府と官僚の失敗と言っていいと思います。日経平均が上がらないことに責任感がないのであれば、それは国の運営を司る資格はないといえるかもしれません。日本国民と日本の企業を富ますことができなければ、政治は失敗です。