日本は穏やかで良い国ですが、経済活動は合理的に物事を進められず、停滞が続いています。今回のそごう・西武の売却も、何故海外のファンドを間に挟まなければ成らなかったのか、非常に不可解です。
海外のセブン&アイの株主からしたら、理解に苦しむところではないでしょうか。
日本人経営者は経営能力が低い場合が多い
経済合理性を考えれば、誰が見たって売却が必要であったにも関わらず、何故ここまで判断が遅れてしまったのでしょうか?一つには争いごとを好まないということがあったでしょう。それは従業員に対してだけではないと思います。
そごう・西武の購入を決めた以前の経営陣に対する忖度も、あったのではないかと思います。日本の企業の場合、新社長が就任しても、前任者に対する気遣いが必要です。何故ならば、大抵の新社長は、誰かの息がかかっており、その誰かの支持なしには社長に居続けられないことが多いからです。新社長が自らの施策を独自の判断で進めることは、余程前任がポンコツだったときでもないとできません。私の所属していた会社でも、社長は会長の言いなりで、抜本的な改革ができる人物は選ばれません。言い方を変えれば、会長は自分の影響力が残る人物を社長に据えたいのです。
そんな状況ですから、新社長はアイデアに乏しく、失点をせずに、前任者の路線を踏襲していきます。自分の任期のうちは大きな揉め事を起こさずに、従業員とも穏便な関係を守っていきたいというのが本音ではないでしょうか。
つまり自分の任期中は大鉈を振るいたくないので、判断が大幅に遅れます。
兎角日本の企業は判断に、時間がかかります。地元との調整や、従業員との交渉など、日本の経営者は批判を恐れ時間をかけます。時間をかけても結論までたどり着ければいいですが、結局自分では解決できず、外国人の力を借りることになります。
新社長に就任した時に、責任の重さを考えずに引き受けるから、経営判断ができないのではないかと思います。能力も無く、大した実績もないのに、巨大企業のトップに立つから身動きが取れなくなるのでしょう。
外国人しかできない合理的判断
日産のカルロス・ゴーンさんも、別に素晴らしい能力が有ったとは思えません。ただ、ゴーンさんは当たり前のことを、当たり前にできる素養が有ったということです。ゴーンさんがやったことは、経営再建にあたってビッグ・バスという当たり前の手法です。しかし、系列の部品会社を切ったり、従業員を整理したりという、経営者として当たり前のことが、日本人経営者にはできなかったので、ゴーンさんにお願いしたということでしょう。
日本人の経営者が人員整理をしたり、系列のサプライヤーを切れば、世間が騒がしく、面倒なことになるので、聞く耳を持たないゴーンさんにやらせたというのが、本当のところではと思います。
今回のそごう・西武の売却も、間に外国人がワンクッション入ることで、セブン&アイとヨドバシは批判を緩和したのではないかと、誰もが分かっているのではないでしょうか。
一番損をしたのは誰か
従業員さんはこれからどうなるのか、不安を抱えていると思います。ただ誤解を恐れずに言えば、欧米人で仕事のできない人や、不採算分野の人達は、いつも不安です。解雇通知はいつ何時来るかわかりません。そして、誰にも不平をぶつけることはできません。そういった意味では、日本の従業員さんは守られていると思います。
セブン&アイとヨドバシの経営者も、自分たちで選んだ戦略ですので、納得していることでしょう。従業員との交渉や地域との調整が無くなることは、非常に大きく、肩の荷も軽くなったことでしょう。
今回の売却で一番損をしたのは、セブン&アイの株主ではないでしょうか?現経営陣がここまで判断が遅れなければ、ここまで買い叩かれなかったのではと推測できます。また、海外のファンドを間に入れずに交渉を直接できれば、中抜きはなかったでしょう。セブン&アイの財務諸表は毀損しており、ここまで事態がすすんでしまったため、株価にも大きな影響は有ったはずです。
今回の売却により、反転が期待できるかもしれませんが、今まで赤字を垂れ流していた部門に対して判断が遅れたことは事実です。
従業員さんがストを起こしましたが、それ以上に株主からの突き上げがないのは、日本独特のものなのかもしれません。
今回は合理的な判断が遅れたと、結論を下しても良いのではと思います。
日本は貧乏になったと巷でよく言われますが、今回のような事案は、そのまま海外に富が流れていってしまっています。もう少し合理的に素早く判断ができない経営者は、株主がもっと突き上げるように成らなければ、資本主義では上に行けず、いつまでも欧米に支配される労働者という図式から抜けられないのではないでしょうか?
あるいは日本の支配階級や欧米の投資家は、この様に働いても働いても、富をさらわれてしまう、日本人の現状が美味しいのかもしれません。