伸び悩むスター選手のために 現役ドラフトは効果的に使われるのか

現役ドラフトが導入されようとしています。MLBのルール5ドラフトを参考にして作られるようですが、実際にはあまり効果的な制度になるとは思えません。日本の場合はFAもMLBの制度を参考にして作られたとされていますが、似て非なるものと言っていいでしょう。これはストライキも辞さずに選手の権利を勝ち取ってきたMLBと、日本的な発想の元でどちらかというと球団側に選手会が配慮しているNPBの違いが、大きく出ていると言っていいでしょう。

一般社会と同様に経営側が強い日本

日本では経営に物を申す社員が損をするケースが多いのは、異論がないところではないでしょうか。一部の特殊能力が有り、替えが聞かない優秀な社員は優遇されますが、その他の並の社員はあまり激しい要求をすれば、組織から煙たがられてしまいます。転職が比較的に楽になってきた日本社会ですが、アメリカの自由度とは比べようが有りません。プロ野球の世界でも同様で、日本では一部のスーパースターを除いては権利を主張する選手は、あまり得をすることはないようです。実際現役時代に球団と揉めた選手は、引退後にコーチなどの職に就くことは非常に少ないのが現状です。球団によってはエース級や中心打者でも疎遠になってしまうケースが散見されます。組織からすれば現役時代に球団と揉めることなく貢献してくれた選手を、引退後に優遇することが当然なのかもしれません。この構造はなかなか変えられるものではありません。やっと認められるようになった代理人制度も、下記の制約が科されており、ごく一部の選手しか使っていないようです。

①代理人は日本弁護士連合会所属の日本人弁護士に限る。
②一人の代理人が複数の選手と契約することは認められない。
③選手契約交渉における選手の同席に関して、初回の交渉には選手が同席する。二回目以降の交渉について、球団と選手が双方合意すれば、代理人だけとの交渉も認める。二回目以降は、選手が同席していた場合でも、双方合意すれば、選手が一時的に席を外し、代理人だけとの交渉となることも認める。

引用:代理人交渉を巡る問題について

現役ドラフトで期待できない実効性

この様な日本プロ野球会の状況を見ていると、必ずしも選手会が期待しているような制度になる可能性は大きくはないと予想されます。そもそもFAについても選手の権利が非常に小さく、FAを積極的に行使する環境が整っていないことからも、選手の権利が現役ドラフトによって拡大されるとは思えません。

伸び悩んだ選手を救う制度を作って欲しい

現役ドラフトは球団の選手に対する権利をやり取りするだけで、選手の権利が拡大される制度にはならないのではないでしょうか。実力が有りながら、球団や地域との相性が悪く、実力を発揮できない選手は、飼い殺しになります。今日本で検討されている現役ドラフトでは、潜在的な実力が有りながら力を発揮できない選手を救うことは出来ない制度になるかもしれません。スター候補の選手を放出することは球団にとってもハードルが高く、選手にとって不幸な状況が続くことは、改善されるとは思えません。

現役ドラフトよりもFA制度の改善を

現役ドラフトで救われる選手は極めて少なく、結局は選手のための制度になる可能性は高いとはいえません。FA制度や代理人制度もMLBを参考にして作ったと言われていますが、重ねて言いますが似て非なるものと言っていいでしょう。FAや代理人精度を行使する選手があまりにも少ないのが、その表れでしょう。

一般社会と相似形のプロ野球

日本プロ野球でMLBと同じ様な選手の権利が認められないのは、一般社会で会社員の権利が改善されないのと本質的には変わらないと思います。これは一概に日本が悪いというわけではなく、国の歴史や国民性など奥深い問題が有り、なかなか改善が進まないと思います。なんでもかんでも米国を真似るのではなく、本質的な問題点を考慮してより良い制度を作って欲しいと思います。

まずはFAを選手のために使いやすく改善することが必要ではないでしょうか。また、代理人制度も使いやすくするべく交渉が必要だと思います。現役ドラフトはまだまだプライオリティーが低く、現状のFA制度などの状況下では選手のための制度になるとは考えられません。

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