低反発バットの影響 高校生のレベル低下 ドラフトでは大学生人気に

低反発バットが高校野球に導入され、春の大会はホームランが僅かに2本という結果になりました。見方によっては打撃のレベルが上がるという考え方があります。今まで力任せに売っていた打撃が芯に当てることが大切になり、高校生の打撃の質が良くなるという考え方があるようです。しかし、これで高校生の野球のレベルは逆に下がるのでは無いでしょうか?

高校生の守備力の低下

高校野球を見ていて思うのは、「この頃守備が雑になったなぁ。」という漠然とした思いです。かつてはゴロをさばく場合、正面に入ることが基本とされて、逆シングルなどは次善の方法と考えられていました。しかし最近のプロ野球を見ると、スローイングへの流れを考えて、敢えて正面に入らずに逆シングルで捌くほうが主流派のようです。プロはある程度の基礎ができている事が前提ですが、高校生の場合はどうなんでしょうか?

この頃は高校生でも逆シングルを積極的に使っていますが、その分後ろに逸らすことも目立つようになってきたと思います。打球処理の速さを求められるセカンド、ショートなら理解もできるのですが、サードあたりで半身で取るのはどうなのかと疑問に思います。

この頃は昭和の頃のように長時間の練習ができなくなっており、高校生が守備に割く時間は少なくならざるを得ないでしょう。今の時代は小学生や中学生が気軽にキャッチボールをできる環境ではなくなっているので、当然アマチュアの守備力は経験不足を原因として低下するでしょう。

低反発バットの守備への影響

これは間違いなく、レベルを下げると思います。打球速度が落ちることは安全性を上げますが、同時に守備力の低下を招くでしょう。内野手であれば守備位置が浅くなり、肩の強さが要求されなくなるでしょう。早い打球への対応力も当然のように落ちると思います。フットワークも要求レベルが下がることは間違いないと思います。

外野手はもっと影響が大きいでしょう。打球が飛ばなくなれば守備位置は浅くなります。そうなればポテンヒットの確率は減り、前の打球への守備力は落ちるでしょう。また打球が飛ばないことで後ろへの打球もスピードが全体的に落ちて、要求される脚力のレベルは落ちると思います。更に外野手の見せ所の肩の強さも、レベルが下がることは間違いないでしょう。安全性と引き換えにこれだけのものを失うと思うのですが、高校野球が上のレベルの野球のための準備ではなく、教育の一環という考え方であれば、正解でしょう。しかし競技レベルの低下は置き去りで良いのでしょうか?

打撃への好影響

高校生が大学や社会人などの上の段階に行って、そこで木のバットを使うようになって打てなくなるというのは、常識になっています。芯に当てなければ飛ばないバットの導入は、打撃技術の向上という点では、間違っていないと思います。実際日本の高校生が国際大会に行くと打てなくなるのは、良くあることです。高校通算本塁打を争うような選手が、プロに入って中距離打者にもなれないということが、これからはなくなるでしょう。

投手のレベルへの影響

日本の高校生の投手のレベルは、かなり高いものがありました。高校時代に金属バットを振り回す猛者たちを抑え込んできた投手が、プロに入ってもある程度の結果を残すことができたのは、こういった側面があるかもしれません。しかし、これからは投手は以前より打者を押し込むことが容易になり、投手のレベルは下がってしまうかもしれません。現在のプロ野球は明らかに投高打低です。メジャーに行く日本人選手が投手ばかりなのは、高校野球の金属バットが影響しているかもしれません。

ドラフトへの影響

高校野球全体のレベルは落ちることになるでしょう。飛ばないバットで投手たちが楽に押さえられるようになれば、投手のレベルは下がるでしょう。そうなれば結果的に打者のレベルも下がります。さらに言えば、守備力の低下は間違いありません。実践で大遠投することも、広大な守備範囲も必要がなくなり、当然レベルは下がります。内野手のゴロを捌くレベルも間違いなく下がるでしょう。

こうなると高校生を育てるのは極めて難しくなるでしょう。パワハラ問題などがきちんと整理されていないプロ野球で、高卒選手を心身ともに成長させる能力は、大学に勝っているとは思えません。ましてや実社会である社会人野球とプロ野球では、人間教育において理想の環境がどちらであるのかは、問題にならないでしょう。レベルの低下した高卒選手を素質重視で指名するのは、リスクが大きすぎると思います。

また、人間教育という面でもプロ野球はかなり劣っていると思いますので、これからの指名は大学生や社会人が基本となるのではないでしょうか?

もしかしたら最近のドラフトでは、既に影響が出ているのかもしれません。

ジャイアンツは昨年即戦力ドラフトを敢行しましたが、その反面高校生を主とした育成ドラフトが機能しているかと言えば疑問が残ります。

実際ジャイアンツの育成ドラフト組で結果を残しているのは、大学生ばかりという感が個人的にはあると思うのです。

ジャイアンツの1軍のスタメンで高卒選手は、坂本勇人選手と岡本和真選手だけです。

ジャイアンツのローテーションを守っている高卒選手は、戸郷翔征投手だけです。

低反発バットの影響や練習時間の短縮で、これから高校球児のレベルは上がるのでしょうか?下がるのでしょうか?

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