慶応高校が夏の甲子園大会を制して、長髪であったり、エンジョイベースボールなるものが話題になりました。ただ長髪の野球部なんて10年以上も前からある話だし、高校の部活は一部の強豪校を除けば殆がエンジョイベースボールです。慶応高校が持ち上げられるのは107年ぶりのドラマという部分や、文武両道という所が原因だと思います。ただもう一つ気になるのは、野球もお金持ちのスポーツになってしまったのではないかということです。
スポーツはお金がないと強くなれない
野球に限らず、スポーツで強くなるためには、お金が必要な時代になってきました。昭和の時代であれば、ハングリー精神が注目され、貧乏をスポーツで克服するようなドラマが普通にあったと思います。しかし、最近ではその様なドラマ性を持った選手は、少なくなってしまいました。
プロゴルファーは親がお金持ち?
例えばゴルフなどは幼少期から恵まれた環境にいなければ、始めることができません。最近の女子プロゴルファーは幼少期から始めていますが、大抵は父親が行く練習についていったことから始まっています。これだけでも貧乏な家庭には高いハードルが有ります。更にプロゴルファーを続けるには家族の協力や、資金の援助が必要になります。最近では父親が車で会場まで送り続けたなんて話が美談として出てきます。確かにご家族の協力は尊いものですが、ある程度の余裕がなければできません。
野球もお金持ちのスポーツに
野球でも同様のことが起こっています。米国ではNFLやNBAでは米国の黒人選手が目立ちますが、MLBでは極端に少なくなっています。それは野球を始めるのにお金がかかるからだと思います。まず野球は道具がなければできません。バットやグローブは比較的高価であり、貧乏な家庭では購入できません。それに比べてバスケットは何もいりません。アメリカであればバスケットリングはそこら中にあり、最も手軽に楽しめるスポーツです。結果、MLBでは黒人選手は10%に満たないのに、MBAでは70%以上が黒人選手です。
同様のことが日本でも起こっていると思います。野球をプレイしようと思っても、日本ではできる場所が限られています。昭和の時代では空き地や神社で簡単にできた三角ベースさえも、禁止されています。また少子化ということもあり、18人揃えて本格的に遊ぶことは、無理と言っても良いのではないでしょうか?
そうなれば、熱心な親がお金を出して用具を買い、お金を出して何処かのチームに所属させるしかありません。チームに所属させれば、練習などに送り迎えが必要になり、自動車が必要になります。送り迎えを共同で行うにせよ、何らかの形で親は貢献しなければならず、金銭的や時間的な余裕がなければ、子供をチームに所属させることは難しいでしょう。
高校野球もお金がかかる
高校野球では公立高校が活躍することは本当に稀です。特に都会の学校ではそれが顕著です。そもそも専用グラウンドがある都会の学校は限られており、地方の強豪校のように練習ができません。全寮制なども都会の学校には無理があります。そうなれば、地方の学校とのハンデ差は小さくないでしょう。
慶応高校の練習環境
そんな中で慶応高校の練習環境は飛び抜けています。寮はありませんが、学校から徒歩で専用グラウンドに行ける環境は、日吉という立地を考えれば、極上の環境でしょう。更には室内練習場やウエイトトレーニングの施設などもあり、107年の伝統はダテじゃありません。東東京の強豪校である二松学舎は、千葉にグラウンドと寮があります。西東京の早稲田実業は国分寺の校舎から八王子のグラウンドまでは、車で1時間弱、電車では1時間以上かかってしまいます。早稲田実業は恵まれている方だと考えられ、慶応高校の素晴らしい環境は、都会の他校の垂涎の的と言っていいでしょう。
ひたむきに努力できる生徒たち
昭和の時代のスパルタ教育は無くなり、選手の自主性が求められるようになると、生徒の質が問題となります。地方の強豪校のように、全寮制で野球漬けの毎日を送ることができなければ、誘惑の多い都会で生徒たちを野球に没頭させることは、本当に難しいと思います。ましてや部員の不祥事などが心配されるようでは、練習どころではありません。そういった誘惑の多い場所でも、自制してなおかつ自主的に練習に打ち込むことができる生徒を集めるのは、なかなか難しいと思います。
当然監督さんや生徒たちが称賛される優勝ではありますが、伝統校ゆえの恵まれた環境があったことは、もっと報じられてもいいと思います。
そして、努力することができる選手たち、生徒たちを集めることができたのは、慶応というブランド力と、練習環境に有ったのは、間違いないと私は考えています。
慶応高校優勝おめでとう!
残念ながら私は個人的には慶応ブランドに、生徒として縁がありませんでした。(笑)