ジャイアンツは今でも球界でトップクラスの人気を誇るチームです。しかし野球人気は全体的に衰退方向へ向かっています。色々なスポーツが楽しまれ、趣味が多様化するに従って、相対的に野球の魅力が小さくなっていくのは、ある意味仕方がないと思います。野球界のみが盛り上げるために頑張っているのではなく、サッカー、バスケットボール等、ポテンシャルの有るスポーツは沢山あるので、これからも野球人気の相対的な衰退は続くでしょう。しかし、問題はジャイアンツの野球それ自体の絶対的魅力が、落ちていってしまっている可能性が有ることではないでしょうか?
セ・リーグの監督会議で、DH制の導入によって野球の面白さが減少するなどの意見が出たようですが、それよりももっと大きな問題が有るのではと疑っています。
サッカーとは違う野球の魅力
テレビを見ていても球場に行っても、やはり攻撃の時間のほうが楽しいことは間違いありません。球場に観戦に行けば守っている間にトイレに行ったり、飲み物を買ってきたりします。テレビを家で見ている場合は、守備の頃合いと主軸のスターに打順が廻ってくる時間を見計らって、風呂に入るなどの用事を済ませます。V9の頃はONの打席が終わると、銭湯が混むなどと言われていたと思います。
野球はそれだけ長時間ではありますが、じっと凝視していなくても良いスポーツなのです。このあたりはサッカーと大きく違うところです。一瞬目を離した隙に唯一の得点シーンを見損なってしまう危険があるサッカーとは、大きく違うところでしょう。野球は見る人によって見どころが違いますが、個人個人の判断で見所を見定めることができるスポーツなのです。
早打ちで極端に攻撃の時間が短いジャイアンツ
野球の場合攻撃の時間が楽しみではありますが、例外もあります。新人で素晴らしい投手が入団してきたときなどは、守りの時間にも注目します。江川卓投手が全盛の頃は、その奪三振ショーを見るのが楽しくて、守りの時間も注目してみていました。
今なら佐々木朗希投手の投げる時間は、注目に値するでしょう。
しかし、それは例外中の例外で、やはりファンは攻撃の時間に注目します。
攻撃の時間は球場でもボルテージが上がり、ファンは興奮します。
しかし最近のジャイアンツの攻撃は淡白です。一発長打による得点が多く、興奮する時間が一瞬で終わってしまいます。塁上を賑わした上でのタイムリーヒットは、スピード感もあり興奮します。攻撃時間も長くなるのでファンも興奮する時間が長くなります。盗塁やヒットエンドランが決まった時も、球場は大変盛り上がります。
しかし最近のジャイアンツは一発狙いの好球必打の選手が多く、時に淡白な攻撃になってしまい、ファンをがっかりさせます。先日はわずか4球で終わってしまったイニングがありました。あまりにあっさりした攻撃で、こんな事を繰り返していれば、ファンの心は離れて行ってしまうでしょう。
守備でも見せたいプロ野球
最近はジャイアンツの内野陣が鉄壁の守備力を見せており、ファンを楽しませてくれています。ピンチを救うスーパープレーは、ファンの心を掴んで離しません。門脇誠選手が2割を切る打率でありながら、起用を望むファンの声が少なくないのは、ファンが守備でのファインプレーに飢えているからでしょう。逆に守備での怠慢プレーや、未熟なプレー、能力の欠如は、ファンにフラストレーションだけを与え、勝利の興奮を奪います。昨年のジャイアンツの守備は、外野手も含めて酷いものであり、エラーを見るたびにガッカリしたものでした。守備でのエラーはファンにとってはフラストレーションが溜まるので、若いファンを取り逃がす原因と言ってもいいと思います。
新しいファンの獲得をできないジャイアンツ
昨年一年の守備の破綻だけで、ジャイアンツは新しいファンをかなり獲得しそこなったのではないでしょうか。長いファンであれば、多少の守備の破綻はご愛嬌で、そこまで含めて応援したい筈です。しかし極端に淡白な打撃や、スピード感のない走塁や作戦、守備での破綻は新しいファンの獲得を大きく妨げています。
ジャイアンツは伝統の人気球団ではありますが、ファン層の高齢化は進んでいます。若いファン層を取り込めていないことは、数字にも端的に出ていることを、球団はどの様に考えているのでしょうか。
WBCによって新しい野球ファンが増えた中で、若い層の取り込みをしなくてはいけない時期に、若者に魅力がある野球をジャイアンツはできているのでしょうか?
もっと言えば、ホームラン狙いの淡白な攻撃を、これがジャイアンツらしさだとする向きがありますが、そんな野球が若者に受けると思っているのでしょうか?
ホームランは一瞬の出来事で、興奮はあっという間に収まります。
ジャイアンツが得意の空中戦でソロホームランを3本打ったが、相手の粘り強く、脚を使ったスピードの有る長い攻撃で3本のタイムリーで4点を取られた場合、中立のファンは、どちらのファンになるでしょうか?
ファンあってのプロ野球球団で、ファンに応援に来てもらいたいならば、”応援よろしくお願いします。”と選手に言わせるだけではなく、ファンの心をつかむ野球が何かを考え直すべきだと思います。
マスコミで重量打線がもてはやされても、若者はついてこないのではないと思います。それが若いファン層の獲得ができていない一因ではと疑っています。