日本のプロ野球選手は野茂英雄投手のMLBへの挑戦あたりから、急激に力をつけてきました。野茂投手の後から投手は次々と挑戦し、成功を収めています。打者はイチロー選手がアベレージヒッターとしてシーズンMVPを獲得するなどの大成功を収め、長距離打者の松井秀喜選手がワールドシリーズのMVPに輝くなど、日本人選手の活躍の場を広げました。そして2021年シーズンでは大谷翔平選手が二刀流でシーズンMVPに輝き、野手としてトップに上り詰める活躍をしました。選手層の厚さなどを考えると、今の日本人選手は完全にMLBの選手の水準に達していると言えるでしょう。残るポジションでは、ショートでMLBのレギュラーを取れる選手が現れるかに、今後は注目が集まると思います。それほどまでに選手の力量は日米の差をなくしてきましたが、日米のリーグの力の差は開く一方です。2023年の吉田正尚選手の大型契約や、藤浪晋太郎投手の単年契約の内容を見ると、大げさではなくリーグの経済力に10倍程度の差がついていると言えるのではないでしょうか。日米の経済格差は一般社会でも開いていることが度々報道されていますが、為替が10分の1になることはなく、給与水準も物価もそれ程は開いていません。日本のプロ野球は差を縮めるどころか、大きく離されてしまっています。何故これほどまで日米の差は開いてしまったのでしょうか。
ポルテベースボールスクール」の無料体験会へ参加プロスポーツをビジネスとしてみることが出来ない日本
野球に限らず日本のプロスポーツ界は、企業の子会社という立ち位置がいつまでも解消されないことが、一番の原因だと推測します。日本のプロ野球のチームから企業名が消えないことが、それを物語っていると思います。プロ野球創成期に読売新聞社が中心となって、リーグを作りました。当時はプロ野球で黒字を出すことは難しく、企業が宣伝広告費として、プロ野球の赤字部分を埋める構図で産まれたと思います。この構図はつい最近まで続いており、日本のプロ野球のチーム名には相変わらず企業名が使われています。実際に社会人野球のチームと、チーム名だけでは差別化が出来ていません。
一方でMLBをはじめとするアメリカのプロスポーツは、企業名を冠することはなく、企業はスポンサーとしての立ち位置から外れることはありません。当然各チームのオーナーはリーグの発展を第一に考えており、スポンサーの思惑が球団の方針を大きく左右することはありません。
日本のプロ野球の場合は、球団幹部は親会社からの出向が殆で、一流の企業の従業員ではあっても、一流のプロスポーツの経営者ではないと思います。親会社の意向が大きく反映する球団経営は、純粋にスポーツやリーグの発展を第一とする経営とはなり難く、リーグの繁栄よりも親会社の意向を大切にする経営判断が、リーグの繁栄を妨げていると思います。
プロスポーツが純粋にスポーツビジネスとして成立していないことが、日本のプロ野球の発展を妨げているのではないかと、私自身は疑っています。
【スカパー!】基本プランはTV3台まで追加料金なしJリーグの基本理念を受け入れなかった企業
Jリーグは企業名をチーム名から外すことを基本理念としましたが、創成期に強豪であった読売クラブはその方針に沿うことを是とせず、その後J1には残る事ができませんでした。プロ野球の盟主を標榜するジャイアンツの親会社が、企業名を外すことを是としない体質であることは、そのことからも明白で、一時期ジャイアンツのユニフォームの胸のロゴは”YOMIURI”となった時期があり、盟主といわれるジャイアンツでさえプロスポーツが企業の傘下に存在するという意識が、未だに払拭できない状態です。
親会社の中には未だにプロ野球球団が親会社の庇護の元にいるという感覚が存在することは明白であり、その事が独り立ちするべき時期に到達しているプロ野球の発展を足止めしているのではないかと、個人的には推測しています。
プロ野球の発展はプロ集団による経営が必要
今のプロ野球は、スポーツビジネスの素人である親会社の出向または天下り役員が経営をしています。当然彼らには一定の裁量は与えられていますが、親会社の意向は無視できるはずがありません。親会社の人事によってあっという間に更迭される存在であることが疑われ、リーグの発展を第一とする経営判断ができるとは思えません。
MLBではGMと現場の監督を兼務することなどはありえませんが、日本のプロ野球界では球団幹部がスポーツビジネスに対して造詣が浅いため、全権監督なるものが存在しているようです。一般的に組織としてGMと現場の監督が兼務することの弊害が多いことは明白ですが、人材の不足などにより実質的に兼務となっていることは、組織の編成状異常であることは明白です。組織論として常識であるはずの形態を取れないことは、様々な形で異常をきたしていることは明白であるにも関わらず、それを修正できないことは、プロ野球の未成熟な部分が存在することの証左ではないでしょうか。
そもそもGMと現場の監督は利益相反する部分があり、互いに牽制機能を発揮することにより、組織の暴走を防ぐはずですが、GMに人材を欠く日本のプロ野球界は、未成熟な段階を脱しきれていないと言えるでしょう。
昨年日本一になったオリックスは、GMと監督の権限が上手くいっている一例かもしれません。激務であるはずのGMと現場の監督を兼務できる事が無いはずであり、特に3軍制のジャイアンツや4軍制を取ろうとしているホークスで、GMと一軍監督が兼務することは、非常に困難であると思います。
日本のスポーツビジネス
日本ではプロ野球以外にもプロスポーツが数多く誕生しましたが、まだまだ未成熟なプロスポーツが多いのが実情です。スポンサーとなる各企業の宣伝と、企業のスポーツを応援する姿勢によって支えられているプロスポーツは、ビジネスとして独立する事は難しいでしょう。しかし少なくともプロ野球は企業から独立できる時期に来ており、独立を実現しない限りは、プロスポーツとして発展できない所まで来ていると思います。特に支配下枠の問題などは、親会社の金銭負担の見地から拡大されない事が推測されます。また放映権の問題も未だに解決されておらず、日米の差を拡大する大きな要因となっています。日本とアメリカのマーケットの規模の差は確かに存在しますが、それ以上に日米の球団の収益力や、選手の年俸は差がついてしまっています。
ソフトバンクや楽天などに期待
ソフトバンクや楽天などの新しいチームは、高い見地からの改革案を提案して、ファンのサポートを得てほしいと思います。財政難のチームをいつまでも保護していては、全体的に沈んでいってしまうことは、日本のゾンビ企業を救うために、発展できずに賃金の上がらない日本経済と相似形であると思います。
日本経済は過度の競争を良しとしない部分があると思いますが、せめてプロスポーツだけは適切な競争を促進してほしいと思います。特に2部落ちのないプロ野球は、常に競争原理を働かせないと、努力を怠るチームを保護するだけのリーグに、落ちぶれてしまいかねないと危惧します。ファンの球団に対する応援の姿勢においても、企業努力しないチームを批判する方向で応援せずに、金満球団を批判するばかりでは、リーグ全体としての発展がないことを考える時期に来ていると思います。