プロ野球は現役ドラフトが終わりオフに入り、ファンにとっては寂しい時期になりました。2月のキャンプインまでは実戦がなく、情報量も少なくなります。自主トレの話題は、誰と誰が何処でという情報がせいぜいで、トレーニングの中身については似たりよったりの情報しか出てきません。体幹を鍛えるだとか、食トレだとかは誰もがやっている内容で、目新しいものでは有りません。逆に言えば肝の部分は、秘匿されているのかもしれません。You Tubeなどを見ているとレジェンドの選手たちがやっていたり、考えていたことに対して他のレジェンドが驚くことが多く、それだけレジェンドたちは独自の考えで鍛錬を続けていたことがわかります。逆に言えばコーチが普通に言っていることをやっていては、ライバルを抜くことはできず、天性のものや現在位置から勝負は決まってしまうということでしょう。
「認めて、褒めて、励まし、勇気づける」ポルテベースボールスクール育成選手やドラフト下位の選手に必要なこと
プロに入ってしまえば順位は関係ない、スタートラインはみんな一緒と言うことがありますが、そんな事を信じている選手は殆どいないはずです。特にドラフトで本指名されなかった育成選手は、ドラフト上位の選手とは入団時にかなりの実力の開きがあります。更にいえば実力が仮に実力が追いついたとしても、与えられるチャンスと時間には大きな開きがあります。育成選手には怪我などで寄り道をしている時間はなく、兎に角1軍の戦力になることを短期間で達成しなければ、次の世代に取って代わられてしまいます。ドラフト上位の選手と同じ練習量や同じ練習では、決して追いつくことは出来ないと思うのです。
一芸に秀でた育成選手
投手は育成選手にも十分可能性があると思いますが、野手の場合は育成から這い上がることはかなり難しい事です。投手の場合は戦力となるために実戦の場が少なくても、ある程度までは力を付けることが出来ます。ブルペンで出来ることを、実戦でできるようになれば、戦力になれます。そして実戦で力を発揮することは、練習量で到達できる可能性が高いといえます。しかし、野手の場合は実戦で1軍の投手の真剣勝負の球を打ち返さなければならず、その実戦の機会は育成選手の場合は、極めて少ないと言わざるを得ません。
つまりドラフト上位の野手が目指す目標と、育成の野手が目指す目標が同じだった場合、育成選手には勝ち目が少なくなってしまいます。
結局育成選手は、一芸をひたすら磨いてベンチ入りメンバーとしての地位を磨かなければ、成長する時間を稼げないことになってしまうのです。
走力自慢の選手の生きる道
鈴木大和選手など毎年脚が自慢の選手が入ってきますが、なかなか生き残ることが出来ていません。今年コーチとして復帰した鈴木尚広コーチは、脚を磨くことによってベンチ入りの椅子を確保した名選手ですが、その後誰一人として鈴木コーチの域まで達した選手が、ジャイアンツには出てきていません。鈴木コーチは代走屋としての起用がきっかけで、ゴールデングラブ賞を受賞するまで、プロ野球で生き抜いてきた選手です。その鈴木コーチを重用したのは原監督であり、原監督が鈴木コーチを呼び戻したことを考慮すると、鈴木コーチの域にまで達することができれば、走力自慢の育成選手は十分に生き残っていくチャンスであるといえます。
打力を伸ばすことは一軍の投手の球を打つ実戦が不可欠ですが、守備力と走力、特に盗塁の技術は練習と研究で身につけることが、打撃よりは簡単です。打撃も磨きたいことは理解できますが、今は生き残るために走塁と守備に全振りの選手を目指すべきではないでしょうか。
また昨年失速してしまった松原聖弥選手も、あの守備力に盗塁技術が加われば、一軍ベンチを確保できるはずです。以前よりも盗塁は難度が上がっているとは思いますが、投手の癖を研究するなどすれば、まだチャンスはあります。特に各チームの勝ちパターンの投手はある程度決まっており、終盤の大切な場面で、高い確率で盗塁を決める癖などを見つけてしまえば、松原選手の価値は一気に上がります。各チーム3人の投手で15人の投手の癖を見つけてスタートを切れるようになってしまえば、2軍に置いておける戦力とはならないでしょう。そして見つけた癖やスタートのコツは、ライバルと共有してはいけません。個人の財産として生き残るために、秘匿しても良いのではないでしょうか。そうでなければ、投手の癖はすぐに修正されてしまいますので・・・
努力は過大評価されている
”努力は必ず報われる”とよく耳にします。とても耳障りのいい言葉です。しかしそれは時間が無限に近くある場合です。シリコンバレーの思想家ナヴァル・ラヴィカントさんは、”努力は過大評価されている。判断は過小評価されている。”と言っています。
若手の選手は、誰もができる限りの努力をしています。努力できないようでは話になりませんが、ただ闇雲に努力していては、時間が足りません。坂本勇人選手が自主トレをともに行う選手に、自分の課題を考えてこなかった際に苦言を呈したのは記憶に新しいですが、ナヴァル・ラヴィガントさんが言っていることと重なります。
ただ努力するだけではなく、適切な判断に基づいて努力することを求めているのだと思います。ただ先輩についていって同じ努力をしていては、報われない可能性が強いということではないでしょうか。
自分で判断できる戸郷翔征投手
来年5年目を迎える戸郷翔征投手は、自分で判断できる選手の見本だと思います。来年は投手陣のキャプテンとなる戸郷投手ですが、昨年オフには弱冠21歳で自ら音頭を取って、若手の自主トレを主催しています。先輩投手との自主トレを経験した後に、早々と自らのチームを結成する判断をしていることは、自信と実績に裏打ちされた判断があったからだと思います。そして21歳にして自らが行うべき課題が、はっきりしているということではないでしょうか。いつまで経っても”先輩の良いところを盗みたい”では、時間がいくらあっても足りません。何を学びたいのかをハッキリ持っていなければ、ただトレーニングをしているだけで、その先輩を抜くことは出来ないでしょう。
若手は生き残る術を考えて欲しい
ぼーっと先輩や実力が上のライバルと同じことをしていては、ベンチに入ることは出来ません。天賦の才能に恵まれていなければ、なにかに特化して生き残っていく他に方法はないはずです。故障や役回りの多い投手とは違い、ベンチ入りメンバーの数が限られている野手は競争が激しく、若手の入り込む隙きは多くありません。仮にチャンスが来てもそれを逃せば、次の年にはまた新しい新戦力が入団します。
もう時間がない松原聖弥選手
松原聖弥選手は昨年、今年と大きなチャンスを逃してしまいました。そして来年のジャイアンツの外野陣は新外国人や新人、移籍のベテランなど昨年以上の競争になってしまいました。鈴木コーチのような盗塁の技術があれば、松原選手の席は1軍に確実にあると思うのですが、このオフ松原選手は何に力を入れているのでしょうか。昨年までと同じ方向で努力を続けて、報われるまでにタイムアップになってしまわなければ良いのですが・・・
亀井コーチの言った”頭を使おう”はどう響いたのでしょうか・・・