ペナントの行方はまだまだ予断を許さないが、ジャイアンツファンの興味はCSへの準備と原監督の去就だ。いささか寂しい秋では有るが、昨日は久しぶりに4番岡本選手が本塁打を放った。セ・リーグは各チームで日本人長距離砲の台頭がめざましく、ホームラン王といったら外国人という図式が崩れている。若き4番の成長曲線をリアルタイムで見ることができるのは、プロ野球ファンとしては記憶に残る良い時代になったと言える。
4番といえば各チームの期待が大きく、その活躍に期待もするし、落胆もする。
今回は10月16日時点での、3選手の成績を数字で比較したい。
総合成績比較
打率 | 本塁打 | 打点 | 四球 | 出塁率 | 得点 | 得点圏打率 | 併殺打 | |
岡本和真 | 0.265 | 39 | 110 | 51 | 0.335 | 68 | 0.290 | 16 |
鈴木誠也 | 0.321 | 35 | 84 | 83 | 0.437 | 72 | 0.300 | 6 |
村上宗隆 | 0.281 | 39 | 107 | 97 | 0.409 | 77 | 0.298 | 12 |
鈴木選手は打率.321を残しており、3人の中では一番三冠王に近い存在だ。打点の少なさを指摘する声も有るが、得点圏打率は悪くない。前後の打者の出塁率も大きく影響するので、今のチーム順位をある程度反映しているのだろう。特筆できるのは併殺打が少ないことだ。右打者の鈴木選手は併殺を避けるべく、チームバッティングをしている事が推察される。得点圏打率も3割を超えている。通常の打率.321よりも低いのでチャンスに弱いという指摘も有るのかもしれないが、あまり適切な評価ではないと思う。そして最大の特徴は出塁率が.437と高いことだ。5番を打つ坂倉選手の好成績に、大きく寄与しており、チームに対する貢献度は高いだろう。本塁打が11本と少ない坂倉選手が打点63を稼いでいるのは、鈴木選手の繋ぐ意識の現れなのではないのだろうか。
岡本選手は打点が多いが、出塁率が3人の中では極端に悪い。フォアボールも51個と少ない。5番バッターとの兼ね合いもあるが、相手投手が岡本選手には勝負を避けていない傾向がある。得点圏打率は通常の打率.265よりは良いが、特別に高いものではない。
村上選手は四球が多く、チームバッティングを心がけているのだろう。しかし同時に5番打者のオスナ選手が打率.268と少し弱く、相手投手から敬遠されている傾向は強く出ている。5番に坂倉選手のようなバッターが座ったら、打率も含めて数字は上積みができるのではないだろうか。
カウント別の比較
初球打ち
打数 | 0-0 | 割合 | 打率 | 本塁打 | |
岡本和真 | 570 | 74 | 12.98% | 0.324 | 12 |
鈴木誠也 | 504 | 29 | 5.75% | 0.414 | 6 |
村上宗隆 | 572 | 61 | 10.66% | 0.393 | 7 |
初球打ちを鈴木選手はあまりしない、しかし打率は.414と高打率を残しており配球を読んでの狙い撃ちが功を奏しているのではないだろうか。3人の中では4番としての経験値が高く、相手投手は簡単にはストライクを取りにいけない。
岡本選手は積極的に打ちに行く傾向が有り、本塁打12本は岡本選手のカウント別では最多だ。ある程度狙い球を絞るバッティングが出来つつ有るのかもしれない。しかし打率は.324と3人の中では一番低く、課題は残る。
村上選手は初球を積極的に打ちにいき、打率も.393と申し分ない。経験もまだ浅い村上選手だが、岡本選手を上回る実績を挙げている。
3-2からの打撃
打数 | 3-2 | 割合 | 打率 | 本塁打 | 四球 | |
岡本和真 | 570 | 52 | 9.12% | 0.25 | 2 | 23 |
鈴木誠也 | 504 | 55 | 10.91% | 0.255 | 2 | 44 |
村上宗隆 | 572 | 105 | 18.36% | 0.243 | 8 | 28 |
各選手フルカウントからの打率は.250付近で流石によくないが、鈴木選手はフォアボールをよく取っている。粘って繋ぐ意識の現れかもしれない。
村上選手はフルカウントからの打数が他の二人の倍有り、粘り強い打撃が実践されている。特にフルカウントからの本塁打8本は、3人の中で群を抜いている。すべての球種に対応しながらも、長打力が衰えないということで、反応で打っても長打が打てる素晴らしいバッターだ。
3-0からの打撃
打数 | 3-0 | 割合 | 打率 | 本塁打 | |
岡本和真 | 570 | 8 | 1.40% | 0.5 | 0 |
鈴木誠也 | 504 | 5 | 0.99% | 0.2 | 0 |
村上宗隆 | 572 | 1 | 0.17% | 0 | 0 |
積極的に打ちにはいかないようで、3人ともに本塁打0。村上選手は殆ど打っていない。
ファールの数はわからないが、効果的ではないようだ。
1-1からの打撃
打数 | 1-1 | 割合 | 打率 | 本塁打 | |
岡本和真 | 570 | 42 | 7.37% | 0.357 | 4 |
鈴木誠也 | 504 | 51 | 10.12% | 0.529 | 11 |
村上宗隆 | 572 | 34 | 5.94% | 0.441 | 4 |
3選手共にバッティングカウントなので好成績を残しているが、鈴木選手の打率.529本塁打11本は素晴らしい成績だ。2球の投球の後に狙い球を予想し絞っているのだろう。打ち損じ少なく仕留める結果は、4番としての経験値の多さと野球IQの高さが出ているのかもしれない。ヤマを張れない3-2では村上選手の長打力が目立つぐらいで、あまり差はなかったが、3球目については大きく差が出てきているところは、とても興味深い。
2-1と3-1からの打率
2-1 | 3-1 | |
岡本和真 | 0.273 | 0.250 |
鈴木誠也 | 0.379 | 0.357 |
村上宗隆 | 0.368 | 0.357 |
岡本選手のみが大きく見劣りする結果となってしまっている。
これは岡本選手の能力だけではなく、首脳陣の指導も問題が有ると思う。
配球に対する研究や絞り方を、コーチングできる人材がいないのではないだろうか。
かつて山崎武司さんが野村監督の教えを受けて打撃が開眼したように、配球を読むことの大切さの認識が巨人打線には足りないのかもしれない。
岡本和真選手の4番としての課題 中田翔選手獲得の副反応の効果
配球が読めるようになれば、初球打ちは逆に少なくなるでしょう。
鈴木選手が初球を打たないのは、自信の現れでしょうね。
岡本選手はまだまだ数字が伸びる可能性がありますね。
50本塁打に一番近いのは、岡本選手かもしれません。
楽しみですね!
キャッチャーのリード
配球を読むことは、キャッチャーのリードと表裏一体だ。
これだけ4番の打撃結果に差があるということは、キャッチャーのリードの指導にも差があるのではないだろうか。
チーム力の差に攻撃と守備両面で、影響している懸念がある。
ジャイアンツには守備型の名捕手は、長らく存在しない。
監督も捕手や投手出身の監督は、他チームに比べて極端に少ない。
いまのジャイアンツのコーチには、守備型の名捕手はいない。
かつての松井秀喜さんはじっくりと球を選んでいましたよね。
相手の決め球を打ってこそ4番打者という話もあります。