野球人気の低下が言われるようになってから久しいですが、この流れは変わりがありません。テレビの地上波では放送が激減し、人気の低迷を象徴しています。野球人気の低下の原因は数々あるようですが、防ぐことは出来るのでしょうか。
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競技人口の低下
野球は見るスポーツであり、やるスポーツでした。少年野球のチームや社会人の草野球チームは、いたるところにあり、公園や神社では軟式のテニスボールで子どもたちは“ハンドボール”と呼ぶ、バットの代わりに手で打つ野球もどきを楽しんだものでした。また、人数やグランドに限りがある場合は、”三角ベース”なんて呼ばれたセカンドを省略した野球を工夫して遊んでいました。しかし現在では、町中でバットやグラブを持っている子どもたちを、見なくなりました。現在では草野球を行うことは難しくなり、小中学生が野球を楽しむためには、リトルリーグやボーイズリーグなどに所属する事が必要になってきてしまいました。
野球はお金持ちのスポーツ
リトルリーグやボーイズリーグに所属するためには、大変な費用がかかります。そもそもサッカーなどに比べて用具代が割高な野球ですが、月謝や遠征代などお金持ちのスポーツと言ってもいいでしょう。アメリカでもその傾向は顕著で、MLBでは黒人のプレイヤーが減ってしまい、才能ある黒人はバスケットやアメリカンフットボールに流れていってしまっているようです。競技人口が減っていってしまえば、やるスポーツから見るスポーツに変わってしまいます。
見るスポーツは単純化したほうがわかりやすい
見るスポーツはパワーとスピードが大切になります。見るだけの観客は、見た目の派手さを求めます。逆に言えばやった経験のある観客は、駆け引きや小技など、目に見えない部分を大切にします。投手と打者の駆け引きなどは、投手や捕手を経験したことがある観客からすれば、一番の醍醐味です。また、投手がフォアボールを連発するケースなどでは、見るだけの観客からすれば、プロとして失格に近い評価となります。しかし投手を一度でも経験したことがある観客からすれば、突然ストライクが入らなくなった投手の気持ちが痛いほどわかり、捕手や内野陣になんとか助けてほしいと思ったりするものです。二遊間の内野手なども、バッテリーのサイン交換を見る中で守備位置を移動して、静かなファインプレーをすれば経験者は感動します。
しかし見るだけの観客が増えれば増える程、野球はスポーツよりもエンターテイメントの側面が強くなり、見た目の派手さが求められるようになります。
渋い内安打の決勝点よりも、派手なホームランでの決着を望む傾向が強くなり、フライボール革命などを助長したのではないでしょうか。
単純化したスポーツは飽きられやすい
しかしフライボール革命が浸透したMLBでは、観客動員数の減少が顕著になっています。スピードとパワーが全盛の野球は、勝負には有効ですが、見る側からすれば単純です。単純なエンターテイメントは最初の衝撃は強烈ですが、次からは感動が薄れます。
野球を単純化するDH制
DH制に反対する落合博満さんや岡田彰布さんは、野球がつまらなくなるとコメントしていますが、このあたりのことを見越して発言しているのかもしれません。DH制に賛否両論がありますが、反対派の大部分は試合の中での駆け引きが単純化されることを嫌っていると、考えることができます。野球界の将来にはどちらが良いのか、判断が付きかねます。
MLBの単純化
MLBでは守備位置が各選手にメモで渡されています。バッターと投手によってデータが整理されてメモにされているので、選手は自分で考える必要がありません。しかしこれは観客が求めるものでしょうか。また野手の劣化が、すすんでしまう危険性はないのでしょうか。
ピッチコムの導入
MLBではバッテリー間のサイン交換を盗まれないように、ピッチコムという電子機器が導入されています。これもまた合理的な判断でありながら、野球を単純化する流れのようです。ファンを大切にする視線は大切ですが、あまりにわかりやすくするとスポーツ自体の奥深さが失われてしまいます。
少し飛躍しますが、将来AIによる球種の指示が出されるようになったら、野球は本当につまらなくなるのではないでしょうか。
NFLとの比較
NFLもパワーとスピードが売り物の、スポーツエンターテイメントです。しかし、アメリカでは野球よりも遥かに人気があるスポーツとして認知されています。何故でしょうか？
それはNFLがどんどん進化して、複雑化しているからではないかと思います。それはプレーの質や作戦だけではなく、ヘッドコーチの考え方や戦略、ジェネラルマネージャーのチーム作りが細かく報道され解説されるからではないかと思います。サラリーキャップであったり、FAの仕組みであったりと、とても複雑な仕組みが作られており、広く認知されています。スピードとパワーを楽しむライトなファンから、首脳陣の選定からチーム作りまでを楽しむことが出来るコアなファンまで、幅広く楽しむことが出来るNFLは、単純化するMLBとの差を開き続けるのではないでしょうか。
