第56回スーパーボウルはラムズ対ベンガルズ 対照的な強化戦略

チャンピオンシップは両カンファレンスとも劇的な幕切れだった。今年のポストシーズンは接戦が多く、本当にファンを楽しませてくれる試合ばかりだった。フットボールというゲーム自体の魅力もさることながら、NFLが工夫を凝らし、常にエキサイティングなゲームが増えるような試みが開花していると言えよう。

ラムズとベンガルズにはそれぞれのストーリーが有り、私は両チームのファンではないのに、その勝利に感動してしまった。

両チームは全く対照的な強化戦略をとっており、これからの他のチームにある意味影響を与えることになるだろう。

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最後のピースをトレードで埋めたラムズ

2017年にHCショーン・マクベイの就任後、それまでの不振が嘘のように強豪チームに返り咲いた。2018年にQBジャレット・ゴフを擁してスーパーボウルに進出したが、惜しくも破れている。破れた際に指摘されたのが、QBゴフの判断の遅さだったが、そのQBというピースを驚くべき方法でラムズは埋めたのだった。

昨年1月30日に発表されたトレードは、ラムズとライオンズのエースQBをドラフト指名権付きでトレードするというものだった。能力を認められながらもライオンズで成績が上がらなかったマシュー・スタフォードを、2つのドラフト1位指名権と3位指名権をQBゴフに付与してトレードしたのだ。

QBスタフォードは2009年のドラフト全体1位でライオンズに指名された、33歳のベテランQBだ。プロボウルには2014年に1度選出されただけ。ポストシーズンには3度進出したが、勝利したことがない。実力は認めながらも実績を積めていないQBだった。

QBゴフは2016年のドラフト全体1位でラムズに指名された27歳で、プロボウルには2度選出され、ポストシーズンに3度進出しスーパーボウルも1度経験している。5年間というキャリアを考えた時に、実績ではスタフォードより上と言っていいだろう。

この二人をドラフト指名権もつけて交換するというトレードに踏み切ったラムズの勝負手には、本当に驚いた。

30-Jan-21      
  DETROIT ACQUIRES   LOS ANGELES ACQUIRES
  Jared Goff (QB) ($27,825,000)   Matthew Stafford (QB) ($20,000,000
  2022 1st round pick    
  2023 1st round pick    
  2021 3rd round pick    
  (#101 Ifeatu Melifonwu, CB)    

これだけの大勝負を仕掛けたラムズの強化戦略は、ブレること無くその後も続く。

シーズンも深まった11月21日にブロンコスのスターLBボン・ミラーを、2つのドラフト指名権と交換に踏み切ったのだ。今年はラムズの本拠地でスーパーボウルが行われることも有り、今年にかけるラムズの徹底的な強化戦略は実を結んだと言えるだろう。

1-Nov-21      
  DENVER ACQUIRES   LOS ANGELES ACQUIRES
  2022 2nd round pick   Von Miller (OLB) ($722,223)
  2022 3rd round pick    

ドラフトで指名される新人は、たとえ1巡指名のブルー・チップといわれても活躍できないことがある。ラムズは戦力が整ったチームで、足りないピースをドラフト指名権と引き換えに埋める戦略を徹底した。今後ラムズの様に、ドラフトでの補強よりもFAやドラフト指名権とのトレードでチーム強化を優先するチームが増えていくかもしれない。

ドラフトでチームの再建を土台から始めたベンガルズ

2019年に2勝14敗に終わり、どん底を味わったベンガルズは、2020年ドラフト全体1位でQBジョー・バロウを指名して再建が始まる。2020年シーズンはバロウがWEEK11でシーズンアウトの怪我をしてしまい、4勝11敗1分で終わるが、バロウは才能の片鱗を見せる活躍をしてみせた。

2021年ドラフト1巡でバロウと大学でコンビを組んでいた、WRジャマール・チェイスを指名して一気にベンガルズは戦力を上げた。2015年以来の地区優勝からスーパーボウル進出へと、エリートQBを引き当てたベンガルズはシーズンが深まるにつれて強くなっているようだ。ラムズと違うところは、たとえ今年スーパーを制覇出来なくても、バロウとチェイスがルーキー契約のうちは、毎年スーパーボウル制覇のチャンスがあるだろう。サラリーキャップに余裕がある上に、ラムズのようにドラフト指名権をトレードしていないので、弱点であるOL等を堅実に強化すれば、バロウはさらに成績を上げるのではないかと予想できる。

ブレイディの後継者はバロウではないか

バロウが今年一気にスーパーボウルまで制覇してしまえば、ブレイディが引退後は、バロウの時代が来るかもしれない。9回のサックを浴びながらも第1シードのタイタンズを破ったディビジョナルプレイオフは、その忍耐力に感動さえしてしまった。今後AFCには若手のエリートQBが鎬を削ることになるが、その中でもバロウとマホームズの戦いは、毎年注目されることになるだろう。

レイダースファンの私ですが、バロウは一気に好きになってしまいました。

あ姉さま
あ姉さま

ラムズはLAでの人気が今ひとつ出ないチームの様です。今回のような強化戦略で人気が出るかどうかは不透明です。特にLAにはチャージャーズもいるので、問題が残るかもしれません。逆にベンガルズの強化戦力は、人気の出るやり方かも知れません。来年以降が興味深いですね。

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