笹生優花選手が米ツアー2勝目を、全米女子オープン2勝目という快挙で挙げました。何勝してもメジャーが取れない選手が沢山存在する中で、メジャーでの強さが際立つ優勝でした。しかもアンダーは2位の渋野日向子選手だけという状況で、その2位とも3打差をつけています。もっといえば、数字以上の圧勝であったと思います。
ハードなセッティングで実力発揮
女子と言えども全米女子オープンのセッティングはハードなものでした。グリーン周りのラフなどは絶望的に長い場所などもあり、テクニックだけでは脱出不可能と思えるものでした。グリーンも非常に速くボールを止めるためには、短いクラブで打つ必要があるため、飛距離が要求されました。
日本ツアーではいい勝負ができる技巧派が、ランカスターCCの前に力負けしている選手が多い中で、笹生選手は別次元のゴルフを繰り広げていました。
メジャーに強いという実績になりますが、決してこれはフロックではなく、厳しいメジャーセッティングの中で、必然として笹生選手が結果的に上がってきているのではないかと思います。
圧巻の16番ワンオン
最終日の笹生選手は16番ミドルで、3Wで見事ワンオンしています。女子にはもしかしたらドライバーよりも難しいと思われる3Wで、ハイフェードを打ってグリーンに着弾後ピンハイに止めて見せたのは、その技術とパワーが別次元に有ることを見せつけてくれました。
他の選手はドライバーと3Wのビトウィーンの距離で攻めあぐね、奥のラフを嫌がって3W
を選択するも、正確なヒットができずに届かない選手が多かったと思います。何より3Wで球が綺麗に上がらない選手が多かった中で、笹生選手の打球だけが美しく飛んでいったと思います。ただ飛ばすだけの選手は日本にも沢山いますが、レベルの高さを見せつけてくれたショットでした。
集中力も格段
難コースに各選手が苦労する中で、笹生選手だけが集中力を切らさずに攻めていたのではないかと思えるラウンドでした。常に強めのパットは4パットなどもありハラハラする場面もありましたが、アプローチの技術も素晴らしく、硬いグリーンでもサラリと寄せてしまうのは、技術の高さと集中力に起因していると思います。
パットもアプローチもあっという間に打ってしまう印象がある笹生選手ですが、今回は比較的慎重に打っていたように感じたのは、硬く早いグリーンを警戒する気持ちが出ていたのかもしれません。
渋野日向子選手が復活の2位
やっとこの人の笑顔を見ることができました。成績もさることながら、昨年の日本ツアーの賞金女王に匹敵する賞金を稼ぐことができたのは、とても大きかったと思います。これでランクも上がり気分的にも楽になったのではないでしょうか。テイクバックも極端に低いものから変わってきており、よくなる条件が揃ってきているのかもしれません。渋野選手は笹生選手と違って特徴(クセ)のあるスイングなので、コースによって成績の出方が大きく上下するのかもしれません。このあたりは割り切って良いのではないかと思います。メジャーに強いのも彼女の特徴で、良いときと悪い時がはっきりするのは持ち味だと割り切って良いのではないかと思います。常に期待に応えようとすると、持ち味が発揮されないかもしれません。
竹田麗央選手が大健闘
初挑戦の竹田選手が9位タイに入ったのは、驚きでした。ただ竹田選手は笹生選手とプレースタイルが似ていて、圧倒的な飛距離とフェードボールを持っています。小技は未だ発展途上ですが、これも改善傾向にあります。今回10位以内に入ったことにより、米国でやる自信がついたのではないでしょうか。早ければ来シーズンは米国に渡る可能性が強いのではと思います。ただ今は体が若く柔らかいので良いのですが、プレーを続けていくうちに腰などへの負担が蓄積するのではないかと心配になります。
笹生さんのように故障しない体つくりと、故障のリスクが少ないフェードボールを手に入れないと、原英莉花選手や稲見萌寧選手のように苦しむ可能性が否定できないと思います。
賞金額の差が有りすぎる
今回笹生選手の賞金が3億7千万円に驚きましたが、2位の渋野日向子選手の賞金が2億3百万円というのにも驚きました。米国でツアーを転戦するのはとても費用がかかりますが、それでも賞金が日本のツアーとは10倍以上の差があります。プロとしてより高いレベルでの戦いを求めるというのは当然のことでしょう。JLPGAも頑張ってはいますが、この差をどう埋めていくかは考えなければならないでしょう。
今回のリーダーボードを見ていると、日本の選手のレベルの高さがわかります。日本で女子が稼げるスポーツは極めて少なく、ゴルフに才能が集まっているようですが、それをJLPGAは活かしきれていないと言えます。
スポーツビジネスの未熟さはゴルフに限ったことではありませんが、プロである以上改善していくべきでしょう。アマチュアの祭典であったオリンピックでさえビジネスとして成熟している中で、日本のスポーツビジネスの未熟さは際立っていると思います。