ジャイアンツが首位でオールスター休みに入ることができました。開幕前の状況から考えれば、計算通り、あるいは出来過ぎと言っていい状況だと思います。オードア選手の帰国や、門脇誠選手の不調など、計算違いはあったと思いますが、それぞれにプランB が用意されており、リスク管理ができていることも証明されています。しかし、プランBが許されないのが坂本勇人選手の復活ではないでしょうか。
ジャイアンツのプランB
ここまで見事なリスク管理で、阿部監督はペナントの山を乗り越えてきました。まずは開幕前に新外国人のオドーア選手が緊急帰国してしまいました。オープン戦も極端な不調で、活躍が危ぶまれていましたが、それでもチームとしては一大事でした。しかし、開幕当初は佐々木俊輔選手などの新戦力を見極める機会として、若手に積極的にチャンスを与え、交流戦にはヘルナンデス選手を間に合わせました。開幕後も獲得に向けて調査などを怠らなかったことが、ヘルナンデス選手獲得というプランBにつながったと言えるでしょう。
門脇誠選手は開幕前からレギュラーとして指名され、活躍が期待されていましたが、打撃が不調になり、安定していた守備までが破綻してしまい、自信を失ってしまったようです。開幕後に3番を任せられるなど期待されていたのですが、逆にリズムを狂わしてしまったのかもしれません。昨年も長打力があるなどと首脳陣に期待されて結果が出なかった事があり、逆方向への打撃を心がけて後半戦覚醒したように打ちまくっ経緯があるので、今年も後半戦は期待できるかもしれません。ただ、ここでも昨年ドラフトで獲得した泉口友汰選手がプランBとして機能してくれました。門脇選手よりも一つ年上で、落ち着いた守備が売り物であり、門脇選手から重荷を取り払ってくれた感があります。打撃はふたりとも低迷していますが、守備は大きな破綻をしていないので、チームの成績を支えてくれていると思います。
プランBの無いサード坂本勇人
開幕前にレギュラーとして指名されていたのは、ファースト岡本和真選手、ショート門脇誠選手、そしてサード坂本勇人選手でした。ショートでの実績があるものの、サードでの実績はなく、にも関わらずサードのレギュラーとして指名して、中田翔選手の移籍まで促したのですから、阿部監督の坂本選手に対する信頼度は、最高レベルであることは間違いないでしょう。
しかし、その坂本選手の打撃が全く振るいません。ショートと違い長打力を求められるサードは、坂本選手に大きな変革を求めたようです。シーズン40本塁打を記録したこともある坂本選手は、当然長打力を期待される選手です。かつてのレジェンド宮本慎也選手や鳥谷敬選手が経験したコンバートとは少し意味合いが違うと個人的には考えています。はっきりと数字での発表があるのではありませんが、体も少し大きくして長打を狙っていたのでは無いかと思います。
悪いことが重なったのは、リーグ全体でボールが飛ばなくなったと言われていることです。長打力を期待された坂本選手は、飛ばないボールの影響もあり、バッティングを狂わせてしまったのではないかと思います。急激に大きくした体と、飛ばないボール、自らの身体の衰えに関する疑念の中で、現役最多の安打数を誇る坂本選手の打撃がおかしくなったと仮定することに無理はないと思います。
そして一番の問題は、坂本選手は替えの効かない選手だということです。レジェンドである坂本選手はまだ35歳で、ベンチにおいておける選手ではありません。3000本安打への期待は、プロ野球ファン全体の希望でもあります。いくら不調だとはいえ、ここで坂本選手の出番を減らして代打専門にするなどは、許されることではないでしょう。
この件に関しては阿部監督はもとより、球団も簡単に判断できることではないでしょう。怪我でも無い限り、使わなければならない選手と言えると思います。
引退を自分で決める選手
坂本勇人選手をジャイアンツが戦力外とすることはありえないでしょう。阿部監督がファームでの調整を指示することもありえません。全ては坂本選手が決めることになると思います。これはある意味非常に坂本選手にとって厳しいことです。ジャイアンツは今年は久々に優勝を狙える位置にいます。むしろ絶好の好機と言えるでしょう。坂本選手がチームの中で特別な立ち位置にいることは間違いなく、まだ35歳という年齢を考えれば、加齢による引退ということも許される立場ではないでしょう。阿部監督によるファーム行きが無い以上、坂本選手はなんらかの貢献をしなければ、本人が一番きつい立ち位置になってしまうでしょう。
3000本安打が期待される坂本選手を、長期にわたって使わないことは、ある意味ファンの期待するところではありません。その意味で坂本選手は単なるベテラン選手とは違ってしまっています。
代打専門でこれからの数年を過ごすことが、許される選手ではありません。
坂本選手の年齢を気遣って敢行したコンバートが、坂本選手に長打力を求め、かえって苦しめてしまっている状況は、皮肉なものでしかありません。
なんとかきっかけを掴んでほしいと願うほかありません。
