逆指名ドラフトの終焉とFAの機能不全、スーパースターのMLB移籍の活発化によって、ジャイアンツの強化戦略が機能しなくなってしまいました。現場の監督やコーチの能力以上に、周辺環境の変化がジャイアンツの戦力を相対的に低下させていると言えると思います。そしてその変化に最も対応できていないのが、ジャイアンツではないかと思います。
d払いポイントGETモール原監督の責任ではない若手の育成
ジャイアンツの1軍は今年CS進出を逃し、若手の育成ができていない事が原因とされています。よく原監督では若手を育成できないと言われていますが、私はそうは思いません。ファームできちんと1軍の試合で使うことができるレベルまで、若手選手を育成できれば、一軍の監督である原監督は、実戦に投入するだけです。つまり一軍の監督の仕事の中に若手の育成は、大きな比重を占めていないと思うのです。
特にジャイアンツの場合は選手を多く抱えているために、レギュラーを取り切れない選手の層が厚くなってしまっています。結果的に守備固めや代走での若手の出場機会が、極端に少なくなってしまっています。原監督は力量が同じであれば若手を使うと宣言していますが、1軍や2軍での実戦経験が中堅選手のために制限されて、若手の高いレベルでの経験が積み上がらないのです。
フロント主導の強化戦略ができていないチーム
実戦の機会を増やすために独立リーグやアマチュアとの練習試合を3軍戦で組んでいますが、やはりレベルがファームの試合よりも落ちてしまいます。これではせっかく育成契約をしてプロの道に進んでも、成長スピードが上がりません。同じ3軍制を取っているソフトバンクが近くにいれば良いのですが、日本の中では感覚的に遠いためか、あまり試合を組んでいないようです。アメリカの独立リーグやマイナーの試合は長距離バスなどでの移動も普通にあるようで、今のジャイアンツの育成選手の環境はかなり恵まれていると思います。ここは育成契約の選手と支配下の選手とは立場が違うので、あまりコストを掛けずに3軍の試合を多く組むことも必要ではないでしょうか。また、2軍の選手たちもあまりにも恵まれた環境で、ハングリーさに欠けるという一面もあるようなので、そのあたりももっと差をつけてもいいのかもしれません。
ジャイアンツはファームの新球場建設計画など、ハード面の充実には力を注いでいます。若手の住環境などが向上していくことは、非常に大切だと思いますが、ソフト面の充実にも注力してもらいたいと思います。
コーチや監督の多面評価も導入するべき
一般社会では管理職の多面評価は、かなり前から導入されています。特にコーチの評価は難しく、フロントはどのように関わっているのでしょうか。原監督の評価を重要視することはもちろん必要ですが、選手からの評価なども細かく取る必要があると思います。監督との相性が評価を歪めてしまうようでは、名コーチを失うことにもなりかねません。フロントが上部組織として監督とコーチの評価をすることは重要ですが、選手やコーチ同士の評価なども取る必要が絶対にあると思います。それを行うことによって、チーム内の人間関係なども見えてくるのでかなり有用だと思います。
全権監督の欠陥
原監督を信頼することはとても重要ですが、すべてを委ねてしまっては、フロントのコントロールが全く効かなくなってしまいます。原監督は監督としては実績もあり、信頼に値すると思います。しかしGMとしての経験がありません。スカウトの経験もありません。フロントは野球においては素人かもしれませんが、組織運営のプロとして就任しているはずです。少なくともGMとスカウト部門はフロント直結の部門として、責任者を置くべきだと思います。ファームとスカウト部門は1軍と同様に、1軍の優勝を最終目的にしています。しかし持っている時間軸がそれぞれ違います。時には利益相反する案件が出てきます。その際にいつも現場の監督の意見が優先されるようでは、長期的な目線でのチーム強化はできません。今のジャイアンツの状態は原監督の意向が強すぎて、スカウト部門やファームの独立性が保たれていないのではないでしょうか。ファームとスカウト部門は1軍の下部組織ではありません。スカウト部長と2軍監督は原監督の部下では無いはずです。
独裁者が全能であるときは、組織運営は効率的に進みます。民主主義は何かと時間がかかります。全権監督は効率的に物事が、決まっていくでしょう。しかしながら、原監督が全能であるとは言えないのではないでしょうか。少なくとも読売グループの組織運営のプロと比べれば、原監督は組織運営の経験は劣っているはずです。
組織でチームを強化していかなければ、原監督の能力の限界が来たときに、チームは手詰まりになってしまいます。いくらコーチを入れ替えたりしても、もし原監督が全権監督であれば、原監督の能力を組織が超えることはないでしょう。
優秀なGMがジャイアンツには必要
原監督も今の状況は辛いのではないでしょうか。少なくとも原監督と同格で、野球のプロであるGMが存在すれば、原監督は名将たる力を存分に発揮できると思います。なんでも思い通りになるのは心地良いようですが、責任が重くなります。そして組織が大きくなれば大きくなるほど、一人の人間では管理できなくなります。時には意見の違いは出てきますが、それでも部門の独立性が担保されなければ、組織は衰退します。
どんなに優秀な創業者でも組織が大きくなれば、能力に限界が来ます。全能の管理職であっても、独裁が続けば間違いを起こします。人間の不完全な部分を組織でカバーする体制にしなければ、歪がでてきます。そしてその歪は放置すれば、いつか取り返しのつかない事態になります。今のジャイアンツの状況は、本当はどうなっているのでしょうか。
アマチュア球界やファンの信頼を失わないために
今のジャイアンツは所属している選手たちが安心して練習できる環境に、ソフト面はなっているのでしょうか。アマチュアの指導者が安心して選手を送り出せる、健全な組織になっているのでしょうか。
外部から見たときに、自浄作用が担保されている組織になっているでしょうか。
これはジャイアンツに限らず、スポーツ界にとっては、とても重要な課題と世間では認識されています。
いまやスポーツ界も、特別な世界だと許される事がなくなりました。普通に暴力やハラスメントが問題視される世界です。組織の独裁は許されず、部門の独立性が担保されない組織は、一般社会からは受け入れられません。
紳士になる前に、常識人でなければなりません。