8月11日のバンテリンドームでの中日戦から4番を外されて、代わりに4番に座った中田翔選手が28試合連続でその座を守っています。当初は気分転換のためにある程度復調すれば、4番に戻るのではと予想していましたが、結果は大きく違ってしまいました。
5番で好成績
4番を離れてから岡本選手の打棒は、明らかに復活しています。
打率は4番で.246だったのが、.338と急上昇しています。
2年連続の二冠王で、その実力には疑いはなかったものの、ブレイクの年以降は3割を割っていた打率が、4番を外れてからは3割を大きく超えています。長打率やOPSも大きく改善していることから、当てにいく小さなバッティングで打率を稼いでいるわけでもなさそうです。
打順 | 打率 | 試合 | 打席 | 打数 | 得点 | 安打 | 本塁 | 打点 | 三振 | 四球 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
4番 | 0.246 | 101 | 429 | 378 | 48 | 93 | 22 | 66 | 67 | 43 | 0.331 | 0.452 | 0.783 |
5番 | 0.338 | 20 | 84 | 74 | 10 | 25 | 4 | 11 | 10 | 9 | 0.417 | 0.595 | 1.011 |
4番に戻れない理由
故障など体調の関係で打撃を崩していたのならば、好調に戻ったところで4番に戻ってもいいようですが、首脳陣は4番に戻しません。
中田翔選手が4番に座ってから、打率.283本塁打8本と好調なため4番を動かしづらいということはあるでしょう。しかし、ここまで育成と信頼の観点から4番をかたくなに外さなかったのですから、これだけ復調すれば4番に戻しても良いのではないかと思います。
4番に座った中田翔選手もインタビューを受けた際に、岡本選手が復調するまでの暫定である旨を答えていました。なにか事情が変わったのでしょうか。
もしかしたら首脳陣は岡本和真選手の不調は、4番の責任というメンタル面での重さが原因だと考えているのではないでしょうか。もしそうだとすれば、かなりの期間は4番には戻れないかもしれません。もし仮に岡本選手が4番の責任の重さに耐えきれないのであれば、もう4番を張ることはないのかもしれません。
支えられる4番と支える4番
阪神のOBの掛布雅之さんは、3番バースが敬遠されないため、好調な5番岡田彰布選手を活かすための打撃を考えていたと発言しています。打線の中軸として前後を支える働きを考えていたということでしょう。バース選手は”自分が本塁打を量産できるのは、掛布選手のおかげだと掛布選手に礼を言っていたとも、掛布さんは明かしています。まさに4番バッターが打線の真ん中で、チームを支えていたということでしょう。
巨人では4番岡本和真選手を支える5番バッターが大切だと、たびたび首脳陣や解説者はコメントしていました。クリーンナップは持ちつ持たれつの関係だと、個人的には思うのですが、ジャイアンツでは若くして4番に座った岡本選手を、庇う気持ちが強かったのかもしれません。また、岡本選手も強気な面を前面に押し出していくキャラクターではないので、そういった消極的な弱いイメージが不本意ながらついてしまったのかもしれません。
村上宗隆選手の出現
若い4番として順風満帆にみえた岡本選手ですが、村上選手の出現によって状況が激変します。村上選手は岡本選手とは対照的に、闘志が前面に出る素晴らしい選手です。若い4番として少し気を使われていた岡本選手とは違い、年下の村上選手は昨年から既に立派なチームリーダーで、昨年はチームを優勝に導き、MVPにも輝きました。本塁打のタイトルを分け合った二人ですが、ゲーム内での存在感は明らかに違います。常に声を出し、相手チームの首脳陣にもひるまない村上選手は、今の野球界では飛びぬけた存在になってしまいました。
そして今年はチームを連続優勝に導き、三冠王も手中に収めようとしています。
責任感の強い岡本選手の気持ち
個人成績でもチーム成績でも大きな差をつけられた岡本選手は、内心は悔しいに違いありません。チームに大切に育てられているうちに、あっという間に年下に追い越されてしまえば、誰でもメンタルに影響するでしょう。個人競技であれば、岡本選手もマイペースを保つことができると思います。しかしチームの勝敗を背負っているといわれる4番打者としての責任は、村上選手の出現により、より大きく岡本選手にのしかかってしまったのではないでしょうか。
岡本選手のチームリーダーとしての成長
人間は年齢を重ねれば、ある程度の自覚が芽生えて精神的に成長していきます。
一般社会でも「まだまだ管理職なんて。」と思っていたところで、同期があっという間に出世していったら、急に焦りを覚えます。
坂本勇人選手が岡本選手にキャプテンを譲る話が以前有ったようですが、実現しませんでした。この時岡本選手が積極的にキャプテンを受けられるような状況であったならば、4番を外されるような事態にならなかったかもしれません。
いずれは4番に戻り、キャプテンになれる人材であることは間違いないでしょう。岡本選手は控え目な性格でありながら、責任感が強いと私はみていますが、そのキャラクターが裏目に出てしまったと思います。
上司や先輩に恵まれるということ
若い人材の成長期には、良き先輩や上司の適切な指導が必要なのですが、今のジャイアンツはどうなのでしょうか。
村上選手には宮本慎也さんや青木宣親選手が、ことのほか厳しく若い村上選手に接していたようです。そしてその厳しさに、村上選手は見事に応えています。
一般社会でも、上司と部下がお互いを理解できずにコミュニケーションが取れず、上司や先輩が腫れ物に触るように若い人材に接して、若い人材が孤立して殻に閉じこもってしまえば、その人材の成長は止まります。
岡本選手の気持ちを理解して、適切に指導できる人材は今のジャイアンツでは誰なんでしょうか。
技術的には問題なく、いずれは4番に
今の岡本選手は、十分に実力を発揮しだしています。そしていつの日か、4番に戻る日が来るはずです。ジャイアンツの現在のチーム状況と人間関係の中で、残念ながら岡本選手は不調になり4番を譲ってしまいました。しかしこの経験の中で、岡本選手が真のチームリーダーとして成長し、村上選手に追いつき追い越す日が来るかもしれません。