ジャイアンツの交流戦での負け越しが決まりました。そして首位ヤクルトに、7ゲーム差の大差がついてしまいました。まだシーズンが半ばに差し掛かるところであるとはいえ、絶望的と言われてしまうゲーム差です。2位以下は混戦状態ですので、ヤクルトが失速すればまだ十分にチャンスは有ると思いますが、投手力に大きく差がある現状では、ヤクルトの大崩はあまり期待できません。これから夏場を迎え投手力が少し衰えてくる次期で、打線の奮起が期待されますが、ジャイアンツの4番を任されている岡本和真選手は、本塁打と打点はある程度残しているものの、打率.241と打線を引っ張る存在としては物足りない状態が続いています。これから打ち勝つ野球をするためには4番の大爆発が必須ですが、岡本選手の状態は上がるのでしょうか。
劣化するジャイアンツ岡本和真選手の打率
岡本選手は2018年に最年少で3割、30本塁打、100打点を達成し、ジャイアンツの4番に座りました。その後何試合か4番を外れることはありましたが、今年も4番を張り続けています。しかし打率については年々劣化傾向にあり、今年は2割5分を割ってしまっています。出塁率も交流戦終了時点で.326と、物足りない成績が続いています。これでは優勝を狙うチームの4番としては、十分な働きとはいえないと思います。打率と出塁率の改善がこれからの課題であると、認識しなければならないと思います。
年度 | 打数 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 四球 | 三振 | 打率 | 長打率 | 出塁率 | 三振率 |
2015 | 28 | 6 | 1 | 4 | 2 | 4 | 0.214 | 0.321 | 0.290 | 0.143 |
2016 | 10 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0.100 | 0.200 | 0.100 | 0.200 |
2017 | 31 | 6 | 0 | 2 | 4 | 10 | 0.194 | 0.226 | 0.286 | 0.323 |
2018 | 540 | 167 | 33 | 100 | 72 | 120 | 0.309 | 0.541 | 0.394 | 0.222 |
2019 | 555 | 147 | 31 | 94 | 62 | 132 | 0.265 | 0.485 | 0.343 | 0.238 |
2020 | 440 | 121 | 31 | 97 | 55 | 85 | 0.275 | 0.545 | 0.362 | 0.193 |
2021 | 521 | 138 | 39 | 113 | 57 | 108 | 0.265 | 0.530 | 0.341 | 0.207 |
2022 | 237 | 57 | 17 | 47 | 27 | 41 | 0.241 | 0.485 | 0.326 | 0.173 |
通算 | 2362 | 643 | 152 | 457 | 279 | 502 | 0.272 | 0.512 | 0.354 | 0.213 |
首位独走のヤクルトの4番村上宗隆選手
昨年優勝したヤクルトが、今年も2位ジャイアンツに7ゲーム差をつけて、首位固めをしています。5月から復帰した中村悠平捕手の貢献が大きいと思いますが、4番村上宗隆選手の復調に合わせてチームが浮上したことも事実です。当然打線の中心に4番が座り、自由に打たせでもらえる4番ほどチームの勝敗に直結する打順はないでしょう。
ヤクルト貯金 | 村上宗隆打率 | ジャイアンツ貯金 | 岡本和真打率 | |
3・4月 | 3 | 0.297 | 9 | 0.264 |
5月 | 9 | 0.244 | -3 | 0.180 |
6月12日迄 | 7 | 0.424 | 0 | 0.310 |
打率が今年改善した西武山川穂高選手
パ・リーグで本塁打を量産する山川穂高選手は、今年打率を大幅に改善しました。昨年までは打率が2割5分をなかなか超えませんでしたが、今年は打率.305となっています。今年は三振率も.228と改善されており、出塁率も4割を超えて理想的な4番バッターと言えるでしょう。
同じ右打者として岡本選手も同じ様な覚醒をする事は可能であり、将来的には三冠王も狙えるかもしれません。三振率がもともと岡本選手は低く、今年は2割を切っています。岡本選手は4番がハマりがちな唯我独尊タイプではなく、チームプレーに徹する選手なのかもしれません。このあたりに岡本選手の可能性と課題が隠れているのかもしれません。
年度 | 打数 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 四球 | 三振 | 打率 | 長打率 | 出塁率 | 三振率 |
2014 | 30 | 3 | 2 | 3 | 4 | 10 | 0.1 | 0.3 | 0.206 | 0.333 |
2015 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0.000 |
2016 | 139 | 36 | 14 | 32 | 15 | 36 | 0.259 | 0.59 | 0.335 | 0.259 |
2017 | 242 | 72 | 23 | 61 | 46 | 72 | 0.298 | 0.661 | 0.42 | 0.298 |
2018 | 541 | 152 | 47 | 124 | 88 | 138 | 0.281 | 0.59 | 0.396 | 0.255 |
2019 | 524 | 134 | 43 | 120 | 86 | 142 | 0.256 | 0.54 | 0.372 | 0.271 |
2020 | 322 | 66 | 24 | 73 | 64 | 100 | 0.205 | 0.45 | 0.357 | 0.311 |
2021 | 358 | 83 | 24 | 66 | 43 | 101 | 0.232 | 0.469 | 0.321 | 0.282 |
2022 | 167 | 51 | 20 | 42 | 24 | 38 | 0.305 | 0.713 | 0.406 | 0.228 |
通算 | 2324 | 598 | 197 | 522 | 370 | 637 | 0.257 | 0.553 | 0.371 | 0.274 |
ライバル村上宗隆選手の存在
岡本選手と村上選手は同じ4番サードでありながら、そのプレースタイルは対照的です。村上選手は闘志が表に出るタイプで、チームメイトにも積極的に働きかけ、ゲームでも味方を鼓舞する姿勢が素晴らしい選手です。岡本選手よりも3つ年下ですが、年上にも物怖じしない姿勢は、昨年の阪神戦で明らかになっています。ファンからすればまさに頼れる4番ということではないでしょうか。
岡本和真選手に足りない物
岡本選手はもともと闘志が表に出るタイプでは有りません。また、チームの先頭に立って引っ張るタイプでも有りません。4番として既に5シーズン目ですが、未だにチームリーダーとしては認識されていません。チームや首脳陣からも岡本選手を庇うようなコメントが多く、4番を支える5番の重要性などが論議の種になるほどです。
首位を快走するヤクルトの5番は日替わりで、スタメン5番の打率は.215です。ジャイアンツの5番の打率.228より悪いので、あまり岡本選手の不調の理由にはできないのではないでしょうか。
こうしてみると岡本選手は巨人の首脳陣やチームメイトから守られている印象が強く、村上選手とは対照的に見えてしまいます。インタビューも独特の雰囲気で最初のうちは興味深く聞いていられましたが、そろそろ中心選手らしくチームを鼓舞するような受け答えができればなぁと思ってしまいます。
ただ岡本選手にすべてを求めるのは酷であり、性格というものがあるので、首脳陣も熟慮の上の対応なのかもしれません。
2021年のシーズンの目標に、ゴールデングラブ賞をあげたときも、村上選手との打撃面での真っ向勝負を避けたような発言で、岡本選手らしい発言だと思いました。ファンとしては村上選手との勝負を受けて立ってほしいと思いますが、これが岡本選手の本質であると考えたほうが良いかもしれません。4番に勝敗を背負わせるような精神的負担を、チームとしては避けたいという可能性があります。
岡本選手は従来の4番タイプではなく、新しい時代の4番になるのかもしれません。
チームリーダーの必要性
岡本選手は十分チームに貢献していますが、チームリーダーとしてはまだ難しいのではと思います。坂本勇人選手はチームリーダーとして見事な成長曲線を描きましたが、岡本選手が同じ様に成長できるとは限りません。連敗が続いたときやピンチの時にはチームリーダーが必要で、今は坂本選手しか見当たりません。坂本選手も既にベテランの域に差し掛かっており、次のリーダーを探さなければならない時が来ています。岡本選手にそれを求めないならば、新たなリーダーを務められる選手が今必要なのではないでしょうか。阿部慎之助捕手が引退の後、ジャイアンツはチームリーダーとしての役割を坂本選手にすべてを委ねてきましたが、あまりにも負担が大きすぎます。投手が失点を重ねたり、チームが連敗を続けたりする時に、ゲームチェンジャーとなれる選手が、チームには必ず必要になります。坂本選手が不調になれば、チームがそのまま落ちてしまう傾向にあるのは、もう一人の若きチームリーダーが足りないことが原因ではないでしょうか。今のジャイアンツに最も足りないものは、案外精神的なものなのかもしれません。