根尾昂選手投手転向 育成の失敗の原因は 立浪監督も被害者

中日ドラゴンズの期待の星、根尾昂選手が投手登録になると発表されました。2018年のドラフト会議で4球団競合の末、中日ドラゴンズに入団した根尾選手は、甲子園での活躍が鮮烈であったため、4年目の現在も注目の的です。甲子園での活躍時にショートとピッチャーという花形のポジションについていたため、当時の大谷翔平選手の活躍もあって二刀流と騒がれましたが、入団時に本人が二刀流を否定して野手への専念を明言しました。入団後はショートと外野を経験するなど、出場機会を求めて努力してきましたが、4年目のシーズン途中で投手への専念を発表しました。

器用すぎる根尾昂選手

プロ入り後投手としての練習は本格的にはしていないにも関わらず、根尾選手は150Kmを計測するストレートを披露し、投手としての可能性をみせました。入団後もショートと外野を経験しましたが、どちらのポジションについてもある程度こなしてしまい、まだ経験も浅いことから、どちらのポジションの可能性も否定されることがありませんでした。球団やファンからも出場を求められる根尾選手は、出場機会が得られるポジションを常に模索していたと思います。そのため本当の意味での適性を見極められることなく、ポジションを点々としてしまった結果が悪い方に出てしまったのではないでしょう。

立浪和義監督の責任

今季立浪監督が就任してからは特に、ポジションが短期間に二転三転しています。このことについて立浪監督を非難する意見も出ているようですが、私は立浪監督も被害者のうちの一人ではないかと思います。現場の指揮官は立浪監督ですが、育成プログラムやシステムができていないためか、立浪監督の判断で根尾選手のポジションが変わっているようです。立浪監督とすれば育成の引き継ぎシステムが無い限り、自分の目で確かめる必要が有り、短期間でその選手の適性を見極めようとするならば、実戦で試してみるしかないはずです。その結果が今季の短期間でのコンバートに現れていると思います。しかし、立浪監督は飽くまで現場の指揮官であり、育成の責任者ではありません。ファンや球団の希望がなければ、まだまだ根尾選手は2軍でじっくり育成しても良い年齢ですが、それを許されない雰囲気が今の状況だと思います。

野手の育成は時間がかかるので、4年目はまだまだ育成期間です。同じ大阪桐蔭からドラフト1位でロッテに入団した藤原恭大選手も育成途中です。1期上の清宮幸太郎選手や安田尚憲選手も、苦労しているところです。早期の起用を望むばかりに、根尾選手の起用が中途半端になっていることは否めません。

球団の育成プログラムの失敗

日本では選手の育成について、現場の監督の意向が強く反映するようです。今回の根尾選手の投手転向も最終判断は立浪監督のようでした。しかし投手出身ではない立浪監督が、投手としての才能を見極められるとは思えません。立浪監督に責任を追わせるのは、筋違いではないでしょうか。

MLBの場合はスカウト部門が育成プログラムの作成に強く関わっており、投手への転向ともなれば、スカウト部門、育成部門、監督、コーチが話し合って決めることとなるようです。また日常の育成についても、マイナーのコーチや監督とメジャーのコーチ、育成部門とスカウト部門との間で細かいレポートが取り交わされ、個々の選手の状況や何に取り組んでいるかを細かく把握しているようです。毎年各チーム50人以上の選手がドラフトで指名され、AからAAAまで育成を行う中で、きめ細かいレポートを行っていくことは大変な作業ではあると思いますが、少なくとも根尾選手のように短期間で迷走することはなくなるのではないでしょうか。また、1選手の育成に監督が責任をもつことは、非常に前時代的で、個人に責任を持たせることは重すぎるのではないかと思います。

今後の育成システム

巨人をはじめ3軍制を取る球団が増えてきました。先を行くソフトバンクは4軍制も目指しているようで、MLBに規模では追いつきます。育成する選手が多くなれば多くなるほど、1軍の監督やコーチ陣が育成にかかわることはなくなっていくと思います。1軍はファームから推薦された選手についてレポート通りに起用して、結果が出なければその内容と強化点をレポートに残してファームへ落とすという、当たり前のシステムを構築する必要があると思います。そのレポートはデータ化して育成のための財産として蓄積していかなければ、育成システムは強化されていきません。ソフトバンクは育成システムを強化していることで有名ですが、システムはハードとソフトが揃って機能します。つまり構築に時間がかかります。ここに力を入れない限りは、差は開くばかりではないでしょうか。

根尾選手の今回の投手転向を見るにつけ、ドラゴンズの育成システムの不備について、立浪監督は球団に要求できるのか心配になります。

球団は選手と監督を守ってほしい

すべての球団は選手の育成について、個人に責任を追わせるようなやり方を改めて欲しいと思います。根尾選手のようなスター選手の扱いはとても難しく、その他の選手に対しても大きな影響を及ぼします。また、可能な限り平等の立場でなければならない監督も、実力至上主義を貫けなくなり、チームが上手くいかなかった時に、不満が爆発することになります。現場の選手と首脳陣は球団の宝であり、人材を大切にできない限り長期的に見ればチーム力は落ちていきます。優秀なスカウト部門と育成システムを確立できるかが、長期的なチーム強化の絶対条件になるのではないでしょうか。

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