球界全体を統べる人がいない現実 球界発展のためのコミッショナーを

日本プロ野球は日本経済と同じ様に、MLBとの差が開く一方になっています。日本人メジャーリーガーの高給が話題になりますが、アメリカの市場を考えるとある程度は仕方ないのかもしれません。

日米の最低年俸の違い

日本プロ野球の最低保証年俸は、1軍が1600万円で2軍は440万円、育成選手は240万円となっています。育成選手とはいえ大卒や社会人からの入団もあるなかで、年俸240万円はかなり安いと思います。残業代などはつかないでしょうから、時給に換算すると法定の最低賃金を下回る疑いさえあると思います。

これに反してメジャーリーガーの最低年俸は今回のストライキによる交渉で、57万500ドルから70万ドルまで大幅に上昇しました。日本の1軍と比べると8倍近く差がついています。このあたりは選手会が機能不全な日本と違い、アメリカの選手会が幅広い選手たちのために活動していたことがうかがえる内容で、ファンも理解できるのではないでしょうか。

アメリカのマイナーは厳しい待遇

マイナーの選手たちの待遇も今回は改善されました。1Aの選手は週給209ドルから500ドルへと大幅な改善です。しかし、マイナーの選手は年俸ではなく、週給なのでシーズンの約5ヶ月しかサラリーの支給は有りません。仮に21週間とすると10,500ドルしか支給されず、日本円に換算すると約140万円となります。また食事なども日本では寮もあり質量ともに十分ですが、マイナーリーグは劣悪です。こうしてみると育成選手と言えども、日本のファームの選手は非常に恵まれているといえます。

(単位:ドル)

  改定前 改定後 21週間 1$=127円
1A 209 500 10,500 1,333,500
2A 350 600 12,600 1,600,200
3A 502 700 14,700 1,866,900

日米の違いは球界だけにあらず

この様な状況は、プロ野球も一般社会の影響を受けていると言わざるを得ません。米国ではアメリカンドリームを信じて夢の実現のために、背水の陣で野球にかけていることが窺われます。一方で日本の場合は育成選手であっても、最低限の生活が保証されており、日本のどのスポーツと比べても恵まれた環境であると言っていいと思います。大卒の高順位でドラフトにかかった選手であれば、ある程度の契約金も入団前に払われており、ハングリー精神とはかけ離れた世界です。大卒のサラリーマンは日本の場合は余程の事件でも起こさない限り、雇用が保証されており、米国とは大きな違いがあります。

プロ野球に入った時点で自分の力量を悟ってしまい、一軍で活躍することよりも、プロ野球の関連する世界の中で、引退後の自分のポジションを探し出す選手もいることでしょう。実際あまりにも冷たい処遇をする事によって、引退後の選手が事件を起こしたりすると、球団を責めるマスコミも存在しており、球団も舵取りが難しいとは思います。

日米の一般社会の常識の違いがある中で、単純な比較は難しいとは思いますが、日本のプロ野球は米国に比べた場合に、ぬるま湯と言われても仕方がないのではないでしょうか。入団後に一軍での活躍を諦めた選手が、球団職員やアカデミーの指導員として雇ってもらうために、練習だけは熱心に取り組んでいたとしたならば、本末転倒です。もし球団が引退後の選手のために、ポストを創造して球団を運営しているとすれば、本当の意味での競争は産まれないでしょう。

スポーツ社会の本当の厳しさ

日本のプロ野球以外のスポーツは、とても厳しい環境であると言えるでしょう。プロ野球はいろいろな意味で恵まれており、MLBと比べても恵まれていると思います。もっとドラスティックに球団運営を行わないと、日本のプロ野球の発展はないと言えると思います。もう一般のファンの皆さんにもそれが見えてしまっており、その先に日本のプロ野球の発展については、困難が待ち受けていると言わざるを得ません。このままMLBのマイナーリーグ化を受け入れなければならないとしたら、それは日本プロ野球の怠慢としか言えないでしょう。

コミッショナーにプロ野球を愛する人を

今のオーナー会議に私財を投げ売って球団を経営する人は、いないと言っていいのではないでしょうか。親会社の広告塔で存在したプロ野球は、今でもその影を残しています。プロ野球の球団名に企業名が入っている時点で、それが解ってしまいます。コミッショナーもオーナー会議で選ばれる人で、実権を握っているとはいえません。これではプロ野球は経済界のおもちゃにされていると言っても過言ではないでしょう。プロ野球の創成期にオーナーだった人たちの志は、今のオーナー会議に反映されているのでしょうか。これも一般社会と同じで、雇われ社長が多くなり本当の意味でプロ野球の発展を望んでいるオーナーが少なくなっていると言えると思います。

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