コロナによる観客動員制限が収まりつつある2022年シーズンですが、チームによって観客の戻り方に差があるようです。各チームの戦力強化もさることながら、ブランド戦略も大切な要素であり、赤字経営が許されない昨今では、観客動員は大切な球団経営のバロメーターです。
【スカパー!】基本プランは初回視聴料がキャンペーンでお得各本拠地の2022年シーズンここまでの動員状況
下表はここまでの本拠地での観客動員実態です。ジャイアンツやタイガースは本拠地以外での主催ゲームが行われましたので、計算から除いています。こうしてみると各球団の動員数はかなり差があります。またキャパシティに対する稼働率を見ると、その差が顕著になります。トップのベイスターズは稼働率が9割を超えており、人気球団のタイガースやジャイアンツを大きく凌いでいます。一方でオフの間にメディアに多く取り上げられていた、ファイターズは3割程度に伸び悩んでいます。
収容人数(2022年) | 入場者数 | 率 | |
甲子園 | 47,508 | 36,544 | 76.92% |
東京ドーム | 43,500 | 33,245 | 76.43% |
バンテリンドーム | 36,370 | 21,662 | 59.56% |
横浜スタジアム | 34,046 | 31,177 | 91.57% |
マツダスタジアム | 33,000 | 23,855 | 72.29% |
神宮球場 | 31,828 | 17,608 | 55.32% |
札幌ドーム | 41,300 | 13,015 | 31.51% |
楽天生命パーク宮城 | 30,508 | 18,312 | 60.02% |
千葉マリン | 30,118 | 20,814 | 69.11% |
ベルーナ(西武)ドーム | 31,552 | 15,403 | 48.82% |
京セラドーム | 36,220 | 20,984 | 57.93% |
PayPayドーム | 40,000 | 26,770 | 66.93% |
横浜というブランドイメージを利用したベイスターズの戦略
親会社がDeNAとなってから、観客動員数は2倍になっているそうです。コロナ禍の前の2019年は稼働率が98.9%と発表されており、球団経営を成功させています。しかし入場した人の神奈川在住者に調査を行ったところ、ベイスターズのファンは15%しかいないとのことでした。つまり野球またはベイスターズに興味はないけれど、純粋にレクリエーションとして球場を訪れたことになります。ファンでなければチームグッズの売上などには貢献しませんが、飲食の売上は上がります。また観客の興味がどこにあれ、観客動員数が上がれば広告収入も上がっていきます。
屋外の球場で春先のナイターはまだ肌寒いにも関わらず、2022年の主催試合はまだ3試合ですが、9割を超える稼働率は出色です。横浜という確立されたブランドイメージがある土地柄を利用した、DeNAの戦略が成功したと言えるでしょう。
そしてファンが15%しかいないにも関わらず、グッズ販売などを展開するMD事業は9年間で3倍の売上を上げているという事です。
新しい球団経営のモデルケースが1つ、出来上がったと言えるかもしれません。
熱烈ファンの多い阪神タイガース
熱狂的ファンに支持されている阪神タイガースは、今年も健在のようです。今年はスタートダッシュに失敗し、開幕からの連敗記録等色々と不名誉な記録を更新しているようですが、ファンの支持は衰えを見せていません。観客動員の実数は12球団で1位です。稼働率もDeNAにつぐ2位で、チームの連敗にも関わらず、また春先のナイターで屋外の甲子園球場にも関わらず、ファンは球場に押しかけています。この人気は球団創設以来のもので、阪神タイガース自体が人気ブランドであり、他の球団と一線を画しています。チームが強くても弱くても、球場に野球以外の魅力がなくても、ファンの支持は衰えないのです。これは逆に言うと球団のファンに対するサービスが、向上しにくい状況なのかもしれません。長年のファンの中には優勝できないチームに苛立ちを覚える人もいるようですが、それでも阪神タイガースの人気は衰えることがないのは、歴史が証明しています。熱烈なファンからしてみれば、皮肉な状況が続いているともいえます。
日本ハムファイターズの場合
新庄剛志監督の就任により、オフの主役としてメディアに多く取り上げられたファイターズですが、意外にもファンの動員は伸びていません。一つには主力選手の放出が定期的に行われる、チームの強化戦略にファンからの疑問符がついているのかもしれません。阪神タイガースのような特別な存在を除いて、弱くても球場に足を運んでくれるファンを多くつかむのは、大変難しいことです。また札幌というブランドイメージを活かす戦略も、DeNAの様にはできていないようです。新庄監督だけに頼ることには無理があるのは、当初からわかっていたことであり、新庄監督をピエロにしないためにも球団のバックアップがこれから必要になると思います。チーム力の強化に軸足を置かないのであれば、DeNAの様なアプローチも必要なのではないでしょうか。札幌ドームとの契約問題を抱えているようですが、現状でも出来ることはある筈です。