日本が資本主義なのは小学生でも知っている事実です。資本主義社会で成功者となるのは、資本家として成功することだと思います。しかし日本の教育では資本家として投資家となることと、投資と投機の違いを教育しません。このあたり、とっくに気がついている人は数多くいるのに、そのことを教育しようとはしていません。何故なのでしょうか?
労働者が正義で、労働が尊いという教育
日本人の思考は、資本家や経営者は悪で、労働者はいつも弱い立場でありながら、コツコツと労働をする尊い存在という図式に支配されがちです。
時代劇のお金持ちの商人が悪い存在で、労働者が搾取されていじめられる構図は、ある意味普遍的です。士農工商という日本独自の身分制度が、それを証明しています。貧乏で食えない侍が、悪徳商人の悪事を請け負うなど、時代劇のテンプレートと言えると思います。
日本の子供たちに将来の夢を聞くと、会社員という答えが上位に来て、資本家や経営者になりたいという子供は異質な存在となってしまうでしょう。
この傾向は小学校の生徒だけではなく、大学生レベルでも見られます。
日本の大部分の文系の大学生は良い会社に就職することが、一番の目標です。少し変わってきたのは以前のように定年まで一つの会社で勤め上げる事が少なくなり、転職を計画に入れる学生が増えていることぐらいでしょうか。
米国の学生は起業することを、夢として持っています。在学中の学生は一種の技能職、会計士、弁護士、医者を目指す以外は、最終的に起業を目標にしている事がとても多いのが特徴です。米国の学生は仲間内で集まると、起業の話ばかりをしていると、米国の学生の母親から聞こえてきたりします。
このあたりの考え方の違いは、社会を大きく変えていると言えるでしょう。
株式を持つことのアレルギー
昭和に義務教育を受けた世代は、株式を買うことを一種のギャンブルと捉えていました。「株など買わずに真面目に働け!」というようなお説教は、いまだに染み付いていると思います。そして不幸なことに、バブルの崩壊が事実としてその教えを裏付けてしまいました。多くの未熟な新米投資家が、株式市場から退場を余儀なくされてしまったのです。
ろくに投資に対して教育を受けていないにも関わらず、投機に近い投資をしてしまえば、教育が不十分な分、負ける可能性が強くなります。なにより投資についての基礎知識がないので、マーケットの乱高下に精神力が持ちません。
こうして多くの日本人は、資本家としての成功を夢見るよりも、労働者としてコツコツ働くことを良しとしました。
資本主義社会で成功者となるための最大の選択肢を、多くの日本人が見なくなってしまったのです。
ピケティさんの理論 r>g
2014年に和訳された『21世紀の資本』は、資本収益率(r)が経済成長率(g)を常に上回るという事実を訴えています。簡単にいってしまうと、コツコツ働くだけでは、中産階級にもなれないという主張です。
そしてこの主張は資本主義の世界では、答え合わせが終わっています。資本家にならなければ裕福になれないという事実が、10年も前に日本でも訴えられてきたのです。
岸田政権がNISAを拡充したのは、r>gをやっと政府が認めたということです。コツコツと働くばかりでは、裕福な生活を政府が約束できないことを、暗に訴えているということです。別の言い方をすれば、リスクをとらずに動かなければ、低所得者に沈んでいくということが、これから10~20年後に、証明されていくことになるでしょう。
それでも投資を否定する経済学者
中にはこんな状況でも、投資を否定する経済学者が存在します。
人それぞれの人生ですから、最終的には個人の判断で選択をするべきですが、現在の状況下で適切なリスクを取った上での投資を否定することは、勇気のいることだと思います。
新NISAの拡充は、岸田政権が行った唯一の減税です。しかもこの減税額は、10~20年後の将来的にはとてつもない額になります。
今が成功者へのラストチャンス
少額からでも投資を始めることは、資本主義で勝ち組になるための第1歩だと思います。そのためには、適切な投資を行う勉強をしなければなりません。
投資初心者が個別株を買うことはとても難しいので、投資信託を購入する事が初心者の王道だと思います。
しかしここで難しいのは、銀行や証券会社の窓口で販売している投資信託が、玉石混交だということです。
そしてその辺りの適切な勉強は、今のところは個人個人が勉強するほか無いのです。欧米のように当たり前のように金融教育がされない日本では、このハードルがとてつもなく高いと思います。
お金に働いてもらうことに否定的な現在の日本の教育は、資本主義の国の労働者をいつまでも労働者のままにしておく、矛盾に満ちたものだと言わざるを得ません。
政府へのお願い
新NISAは素晴らしい施策だとは思いますが、同時に適切な金融教育を義務教育にいれなければ、バランスの取れた政策とはいえません。またこれからの子供たちに施すのと同時に、今現在既に社会で働いている労働者たちにも、教育を施してほしいと思います。
ハラスメントやコンプライアンスの教育は十分なので、金融教育も義務化する必要があるのではと思います。