巨人の若手事情 ポジションがない若手野手続出 育成の最終段階

ジャイアンツはFA市場の停滞を経験してから、若手選手の発掘と育成に本格的に力を入れて来ました。その成果が2023年シーズン初頭に早くも出てきています。特に若手の野手は期待の新戦力が目白押しで、1軍で試すポジションがなく、首脳陣は難しい選択を迫られています。

待望の坂本勇人選手の後継者

坂本勇人選手の後継問題は、長らくジャイアンツの課題でした。2016年にドラフト1位で吉川尚輝選手を獲得した時は、将来の後継者として十分な素質があり、一度は解決したように見えました。しかし、吉川選手は体力的な部分や度重なる故障で、坂本選手の後継者にはなれず、今は不動の2塁手としてポジションを獲得しています。

次に2018年のドラフト2位で、増田陸選手を指名しました。高校時代の指導者が坂本選手と同じだったこともあり、有力な後継者と目されましたが、プロのショートとしての守備力には及ばず、後継者としての道は絶たれました。

増田選手の守備力を見極めた後に指名したのが、2018年ドラフト3位の中山礼都選手です。まだ高卒3年目の中山選手ですが、2年目の2022年に、主に坂本選手の欠場時に50試合に出場しました。まだまだ体ができあがっておらず、打撃面では非力さが目立っていましたが、守備面ではプロのショートとしてやっていけそうな状況でした。ただ首脳陣としては、坂本選手にとって代われるだけの実力にはまだ距離があると判断したようです。

そこで2022年のドラフトで指名されたのが、ドラフト4位の門脇誠選手です。ドラフト中位の指名なので、中山選手に対する刺激かと思いましたが、予想外のパフォーマンスで首脳陣やファンを驚かせていると思います。守備力は坂本選手のように華麗ではありませんが、泥臭く球際にも強いので信頼できそうです。打撃も結果を出し続けているので、不調を続けている坂本選手に代わって出場機会を得ています。ファンの中には門脇選手の先発起用を望む声も、大きくなっています。

そして中山礼都選手が急速に課題をクリアして、長打力を身に着けてきたことも、見逃せません。体が大きくなったことに加えて、グリップを村上選手のように絞って持つようになったようで、昨年までは見られなかった、右方向への強い当たりを連発しています。昨年からの成長は本人が一番感じているはずですから、試合に出たい気持ちがとても強いのではないでしょうか。

ショートとして先発できて、打撃力も期待できる二人の若手は、他球団から見れば垂涎の的ではないかと思います。こんなに有望なショートを伸び盛りの今、使えない状況は、育成面からは最悪の状況と言っていいでしょう。二人の場合はもう2軍で経験を積む段階ではないので、2軍慣れさせてしまっては元も子もありません。なんとか原監督には二人の成長を止めない起用を、お願いしたいと思います。

開花しつつある長距離砲の菊田拡和選手

2019年ドラフト3位指名の、”常総のバレンティン”こと菊田拡和選手がファームで大爆発しています。ここまで打率.440、本塁打3本とイースタントップ。昨年まで一軍に呼ばれたことがないのですが、現在は早く1軍で試してもらいたい逸材です。ただ、残念ながらポジションがありません。2軍ではサードで好守備を連発していますが、1軍のサードには岡本和真選手がいます。ファーストも中田翔選手が好調ですので、出場機会がありません。代打も長野久義選手や松田宣浩選手がいるので、順番が回ってこないのではないでしょうか。長距離砲は育成に時間がかかるので、折角の若手の成長の芽を潰したくないはずですが、どの様なマネジメントをするのか、原監督の決断が注目されます。

長距離打者の育成はなぜ難しいのか

外野手も飽和状態

外野手は今年一気に激戦になってしまいました。昨年までレギュラーだったウォーカー選手は、2軍で調整中です。オープン戦で好調だったオコエ瑠偉選手も、梶谷隆幸選手の復帰でベンチが続いています。

ドラフト2位で慶応大学から入団した萩尾匡也選手は、イースタンで打率.333で6位、打点は8でトップです。しかし1軍からはお呼びがかかりません。大学2年目で成長株の岡田悠希選手も、オープン戦から結果を残し続けていますが、呼ばれません。

キャンプで話題だった秋広優人選手や増田陸選手は、かなり置いていかれてしまっています。松原聖弥選手は2軍でも出場機会が少なくなっています。

他にも1軍経験者である石川慎吾選手や若林晃弘選手などが、出場機会を減らしている中で、ドラフト1位の浅野翔吾選手も使わなければなりません。

2軍の公式戦でさえ、ポジションが足りない状況です。

キャッチャーの成長株は山瀬慎之介捕手

肩はチーム1の強さと定評のあった山瀬捕手が、イースタンで打率.438と大きな成長を見せていますが、2軍でも規定打席に達せず、出場機会が少ない状況です。

オープン戦でも成長の跡をしっかり首脳陣にアピールしていただけに、とても残念な状況です。経験が必要なポジションだけに、ある程度の技量が伴った若手選手には2軍慣れしないように、一軍で育成の最終段階を行ってもらいたいと思います。

DHが無いセ・リーグは野手の育成も不利

特に長距離打者はポジションが少なく、一軍での経験を積むことが難しいのですが、DH制のないセ・リーグは特に若手の育成が難しくなります。

球団の経営を圧迫するだとか、監督のやることがなくなるだとか、検討時に問題の本質がずれているのではないでしょうか。

若手の育成は春に

ベテラン選手を数多く抱えるジャイアンツですが、ベテランの活躍の場はシーズン終盤など、大切なところで考えてほしいところです。

ペナント終盤からポストシーズンを目指す中でチーム力を挙げていくことが必要で、そのためには若手の育成は欠かせません。実力がベテランよりも多少劣っていても、若手の伸びしろは重要で、シーズン序盤はチーム力を上げるためにも重点的に若手を起用してほしいと思います。

長期的な目線を考えれば当然ですが、今年のペナントを勝ちきるためにも若い選手の台頭がなければ、難しい状況ではないでしょうか。

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