私は子育ても終わり私自身の成長過程や、塾講師での経験、子供の友人などで、様々な子供の成長過程を見てきました。もちろん、色々な時代の違いなどがあると思いますが、確実に言えることが一つあります。そして子供の教育に関してこれだけは大切にしなければいけない事があります。それはとにかく子供の置かれる環境を、大切にしてあげなければならないということです。
子供は育つ環境で全く変わる
一部の天才を除いては、子供は成長過程における環境で、全く違う人間に育つといえます。ですから、その環境を求めて普通の親が力を注ぐのが受験ということになるでしょう。ただ、受験競争には費用がかかる事が大きな問題です。若者世代が子供を持つことに不安感を覚えるのは、教育にお金がかかりすぎるということでしょう。自分が親からしてもらってきたことを、子供にも与えたいと思った時に、金銭的に難しいと思ってしまう状況が、少子化問題の根本にあると私は考えています。
ここでは、お金をできるだけ掛けずに、子供の教育環境を整えることを考えてみたいと思います。
学校よりも家庭が大切
学校の環境は子供の成長を大きく左右します。ただ、その前に大切なことは家庭環境です。どんなに良い学校に入れても、家庭環境が良くなければ良い子供が育つ可能性は低くなると思います。両親が不仲であれば、子供は安心して生活できません。子供の前で喧嘩をしなくても、常に子供は両親の不仲を恐れています。私は小学生の頃から両親の不仲が嫌でたまりませんでした。私が育った頃は、離婚がまだ多い時代ではなかったので、離婚=転落という図式で理解していました。”離婚したらお前はどっちにつくんだ?”と、言うようなことを平気で小学生に聞く親だったので、いつも怯えて暮らしていたと思います。中学生や高校生になると、とにかく両親が離婚しないように、両親の様子を伺っていました。小学生の頃は常に母親が正しいと物事を見ていましたが、中学高校といろいろな家庭を見ていくにつれて、バランス感覚が取れてきて、どっちもどっちという見方に変わっていきました。とにかく争いに巻き込まれるのが嫌になり、どちらの味方もしないようになりました。そのことについて母親は、無関心であると言い私をまでも非難するようになりました。こうなってしまっては、子供はますます家庭から逃げたくなります。結局私は両親とは一定の距離を保つようになってしまいました。
暴力だけは家庭内に殆どなかったので、それだけが救いだとは思います。なんとか普通に家庭をもつことが出来る人間になれたのは、幼少期の家庭環境で暴力という一線を越えることがなかったためだと思います。
もし両親に経済的な力があれば、両親はとっくに離婚していたと思います。ただ離婚してしまえば経済的に苦しくなるという思考が、両親に離婚を踏みとどまらせたのではと思います。
私自身は欠点だらけの人間ですが、なんとか家庭を持ち子供も結婚をして、妻と一緒に若い子供夫婦をもてなすようになれたのは、妻や友人に恵まれたからだと思います。
いくら良い学校に子供を入れることが出来ても、家庭環境が悪ければ殆の子供は辛い思いを抱えてしまいます。私が育った時代と違い、女性は仕事を持つことが出来、シングルマザーは苦しいながらも、私の頃よりは支援が得られる環境になっています。離婚が致し方ないのであれば、今は一つの選択肢として十分考えられる世の中なのかもしれません。私の頃は離婚=終了に近い感覚でした。
学校の大切さ
次に大切なのは学校だと思います。良い学校というと受験戦争を思い浮かべますが、ここでは大学進学のための学校選びを指して言っているのではありません。
公立の小学校や中学校でも大きな格差があり、その差は子供の成長に大きな影響があると思います。単に進学率が良いとか悪いとかの話ではなく、その学校がある地域の特性が学校に与える影響の大きさに注目してもらいたいということです。私の通っていた地域の小学校や中学校は、言葉は悪いですが荒れた地域の学校でした。校内暴力は当たり前のようにあって、暴力は当たり前の様に起こり、事件にもならないほどでした。もちろん私も経験しています。今のような粘着性のあるいじめは、少なくとも私の周りには存在しなかったと思いますが、兎に角あの頃のテレビで見る学園ドラマの暴力が、大したものには思えなかった程の状況でした。先生に対して生徒が暴力を振るうこともあり、先生も体を張っていたと思います。ところが公立の高校に進学すると、暴力事件は全くなくなりました。バリバリの進学校というところではありませんでしたが、裕福な家庭の子供が多く、落ち着いた雰囲気で天国の様でした。ただ、公立高校で学力もそこそこ高かったので、貧富の差が激しかったことには驚きました。高校生なのにワニのマークやFマークなど、見たこともない高級な服を着ている同級生に驚いたものでした。
それでも上品な家庭の人間が多かったせいか、差別もなくわりと穏やかな学生生活だったと思います。
お金をかけずに良い学校に入る
その時実感したのが、済む地域を間違えてはいけないということでした。
同級生の中で自分と同じ様に裕福な家庭ではなくても、出身地域によって良い公立の小学校や中学校に通うことができるという事です。
転勤族の私はその思いが強かったので、私は住居を決める時にまず子供が入る学校を見定めて選びました。私は仕事柄11回転居していますが、必ず地域の学校の状況を確かめています。そしてその選択は子供には良い影響を与え、親である私達も比較的近所でのトラブルに巻き込まれずに済んでいると思います。
いわゆる文教地区と言われる場所は、どこの地方にもあると思います。東京で言えば文教地区にある公立高校は、私の頃よりも格段に進学率も上がっています。(私の頃が一番落ち込んでいた時期だったかもしれません。)
文教地区では家賃などが比較的高く、職場などへのアクセスが悪くなるかもしれません。しかし、子供によい環境を与えることができるメリットは測り知れません。子供が就学時期、特に小中学生の頃だけでも、文教地区の雰囲気の良い公立学校に通わせるべきだと私は考えています。高級住宅街は敷居が高いと思いますが、高級住宅街を含む学校区に、住みやすい家賃のところもあるはずです。親の貧富の差を感じることもあるかもしれませんが、問題のある地域で子供が悩むよりはマシな筈です。多少部屋が狭かったり、築年数が古かったりなど、多少の問題があるとしても、子供の就学期間だけは我慢して、就学期間が終われば引っ越す事もできます。
アメリカの住宅事情
アメリカでは子供の就学時期だけ文教地区の公立学校に通わせる目的で、転居する事が普通にあります。そういう地域は学費が無料です。しかし、所得税がとんでもなく高く、財政のバランスを取っていました。当然家賃も高いのですが、アメリカの地域差は日本の比ではなく、命にも関わりかねませんので選択の余地がありませんでした。
子供のスキルアップ英語レッスン【NovaKid】子供のための住居選びと柔軟な選択
ずっと良い地域に住めるだけの財政的余裕があれば良いのですが、そういう事は難しい世帯が多いでしょう。しかし持ち家という選択肢を一時的に捨てて、子供の就学期間だけは教育環境に優れた地域に住むことは、子供の学力だけに影響するわけではありません。
今はSNSなどで卒業後も友達と頻繁にコンタクトが可能で、長く友人関係が続くようになっています。小学生だった時期の友人とは転勤族の私は疎遠になってしまいましたが、私の子供世代はいつまでも友人関係が続きます。つまり良い地域で暮らしている友人たちと関係を保つことができますので、大人になってからも大きなメリットになります。この事は本当に大きな財産であり、子供が計り知れないほどの恩恵を受けることができると思います。子供に与えられる教育環境の影響は、受験期だけのものではありません。
意外に見落としがちになるかもしれませんが、公立の小学校と中学校の地域差による格差はとてつもなく大きいと思います。
親の通勤や趣味などは、子供の就学時期だけは二の次に考えた方が、親のその後の人生も豊かにしてくれるはずです。