プロ野球選手会の存在意義 有力選手だけの為の組織になっていないか

プロ野球選手会は選手の待遇改善を目指す労働組合としての側面と、野球全体の発展を目指して社会活動を行うという側面を併せ持っている団体です。

野球全体の発展を目指す部分では、様々な活動が行われており、大変素晴らしい活動であると思います。

一方の労働組合としての側面は、かなり偏った活動に見え、本来であれば労働組合は組織の末端に近い構成員の待遇改善に努めることが本道だと思いますが、今は一部の高年俸の選手の年俸や条件闘争に力を注いでいるように見えます。

ポルテベースボールスクール」の無料体験会へ参加

一般社会の労働組合

普通の労働組合では、管理職などの高年俸の構成員は一時的に組合から外されます。プロ野球のFA権獲得選手は、一般社会では単独で年俸交渉の出来る特別な存在であり、労働組合の構成員には馴染みません。むしろ単独では交渉することも出来ないような、末端の社員が団体で交渉する事によって待遇改善を勝ち取っていく、弱者のための組織のはずです。

しかし今のプロ野球選手会の交渉は、どちらかというと有力選手のための交渉が目立ち、力のない構成員たちの組織にはなっていないように見受けられます。

d払いポイントGETモール

FA権の取得年数の短縮は超一流選手のため

FA権利を取得できる選手は、ごく一部の主力級選手である必要があります。2軍でくすぶっている選手や、1軍と2軍を行ったり来たりする”エレベーター”状態の選手は、なかなか権利を獲得できません。しかし、選手会の最近の交渉を見ていると、FA権利取得条件の短縮や人的補償の廃止など、有力選手のための交渉が目立ちます。

これは力のあるFA選手にとっては非常に有意義な交渉ですが、同じFA権を獲得してもそれ程の実力が上位ではない選手にとっては、あまり実効性が有りません。入団して最短で権利を獲得できる選手は、超一流選手と言っていいでしょう。そういった超一流の選手にとって、今回の選手会の要望は大変有意義なものです。反対にキャリアも末期でやっと権利を取得できた選手は、現在のFAは使いようがありません。これは中堅選手には特に言えることで、毎年契約を更新してもらえるかどうか、危ない選手がFA権を取得しても、行使できる状況にはないのです。

本来の労働組合としての活動

今の選手会は一般社会では組合員としては外れるぐらいの地位の選手のための交渉が目立ってしまっています。そういった選手は個人で代理人でも雇い、毎年FA獲得まで個別に交渉を積み上げていけば良いと思います。労働組合であれば、もっと立場の弱い選手のための活動を強調してもらいたいものです。

最低年俸のアップ

これは切実な問題です。毎年取り組まなければいけない問題ではないでしょうか。常に続けていかなければ勝ち取れるものではないと思います。

1軍最低保証のアップ

同じ様に1軍の最低保証金額も毎年交渉していかなければ、恩恵が若手選手などに行き渡りません。また、1軍に一定程度同録された選手は、オフの契約更改で1軍の最低保証をベースに契約更改を行う必要があります。1年の殆どを1軍で過ごしたのに、翌年の年俸が1軍の最低保証に届かないようなことがあれば、不当に搾取されていると言っても言い過ぎではないでしょう。せめて翌年の年俸交渉は、1軍の最低保証をベースに行う必要さえ有ると、個人的には考えています。

年金制度の拡充

夢をつかむプロ野球選手にはそぐわない話かもしれませんが、万が一短命で終わった選手もセカンドキャリアを始める時に、スムーズに国民年金や厚生年金に移行できるような制度構築が望ましいと思います。

支配下枠の撤廃

今は支配下枠があるために、育成選手制度という中途半端な身分の選手が大量に採用されています。これはあまりにひどい制度で、同一労働同一賃金の原則からは大きく逸脱しています。支配下枠の問題は球団すべてが歩調を合わせているわけではないので、ジャイアンツやホークスなど支配下枠拡大に積極的な球団を巻き込んで、交渉するべきではないかと思います。

プロ野球創世記ならまだしも、日本には野球以外のプロスポーツの組織が生まれ育っています。プロスポーツ界を牽引する立場に有るプロ野球が、いつまでも自由競争を拒み、既得権益にしがみつくようではあまりにも器が小さすぎます。もっとプロ野球が発展する方向に向かわないと、選手会のもう一つの目標である野球界の発展は望めません。親会社の宣伝のための球団は既に古い概念です。高い視点を持って要求を考えてもらいたいと思います。

現役ドラフトについて

実力が有りながらチーム事情により出場機会が少ない選手のための制度ですが、これが必ずしも選手のためになる制度とは思えません。ポジション数と試合数で選手の出場機会は限られています。現役ドラフトが行われて出場機会が増える選手がいても、その分出場機会を減らす選手が出てきます。そろそろレギュラーを取りに行こうという若手選手の前に、他チームから実力十分の中堅選手が移籍してくれば、若手選手の出番は減ってしまいます。これでは選手全体の待遇改善にはつながらないでしょう。

セ・リーグDH制の導入

現役ドラフトよりも選手の出場機会を即効性を持って増やすことが出来るのは、DH制の導入だと思います。確実にポジションが増えて、選手の出場機会が増えます。これには賛成の球団も有り、現実的で即効性の有る、選手の待遇改善につながると思います。またアマチュア野球も含めた中で、打つことに特化した人材がプロ野球を目指す事のハードルが下がります。

サッカー界のスタンダード

サッカー界は世界基準で運営されています。そのため選手の異動などについては共通ルールが世界中で運用されています。日本の選手が成長し、世界のビッグクラブに移籍するたびに、日本での過去の所属チームは12歳時にまで遡って分配金を受けられる仕組みになっています。これは素晴らしい仕組みで、全世界でサッカーが発展する一つの要因となっています。

しかし、野球の場合はポスティングで移籍金を手に入れることができるのは、直前に所属したプロ球団だけです。このあたりも、もし選手会が本当に野球界の発展に力を入れているのならば、サッカーと同様の制度構築を要求するべきではないでしょうか。野球教室をやるのは末端の選手会員に任せて、選手会幹部は高い目線での交渉を行えば、世論が味方について、必ず成果が出ると思うのですが、いかがでしょうか?

タイトルとURLをコピーしました