パワーとスピードの時代で単純化していく野球 投高打低の理由

今年投高打低が顕著となり、投手のスピードが増したことが話題となっています。そのため打者は成績が全体的に低下しています。3割バッターはセ・リーグが4人、パ・リーグは2人しか現時点ではいません。パ・リーグの打撃ベストテンを見ると、10位のソフトバンク福田周平選手が.270となっています。打率20位は楽天の西川遥輝選手で打率.227と、かなり低い結果です。パ・リーグでは打率.250を超えているのは14人だけで、1チーム当たり3人いない異常事態です。

トラックマンや動態分析の導入

今年多くの方がトラックマンなどによる分析によって、投手の能力が上がっていることを原因の1つとしてあげています。確かにトラックマンでボールの質を分析することで、投手は自分の球質の長所と短所を解明することができ、能力を上げることができるでしょう。また動作解析はゴルフなどでも導入され、選手の関節の付き方なども考慮した分析ができるようになり、大きな成果を各方面のスポーツ界で上げていることも事実です。

硬いマウンドの普及

以前の日本の殆どの球場が、MLBと違ってマウンドの土が柔らかく、投手の踏み出す足のあたりが深く掘れていました。MLBに移籍した日本の投手たちの球速が上がり、その後何年か後に故障を発生するということが多く見られたのは、ボールの違いと硬いマウンドに原因があると言われていました。最近は日本でも硬いマウンドが主流で滑らなくなったため、下半身の踏ん張りが効くようになり、球速が全体的に上がったと指摘されています。

ゴルファーと投手は自分が主体

ゴルファーと投手は似たところがあります。それは自分のタイミングで動作を終えることができるところです。そのため、より実践に近い練習を、普段から行うことが出来ます。投球練習やゴルフスイングは反復練習することによって、どんどん自分の技術を高めていくことが出来ます。自分の練習の成果が、球速や回転数などを数値化することによって確認でき、モチベーションが上がりやすく、自信にもなります。自分自身の能力を高めることによって、結果がほぼ間違いなく改善されるのは、スポーツ選手にとってはメンタル的にも救いになります。

打者は投手次第で対応を変える対人スポーツ

打者は投手と違って完全な対人スポーツです。しかも主導権は投手にあり、打者は常にリアクションを取らなければなりません。投手が練習してきた投球モーションを活かして、勝負を挑んでくるのに対して、打者は練習通りのスイングができることは、殆どありません。常にその場の、しかも一瞬で対応策を取らなければならず、どんなに良い打者でも7割は失敗します。自分自身のスイングを練習によって作り上げてきても、タイミングが合わなければ、結果がついてくることは稀です。また投手や捕手との駆け引きも重要で、単純に自分のベストのパフォーマンスを、出せるスポーツではありません。かなり頭脳的なプレーを必要とされるはずで、単純なアスリートでは無いことが解ります。

こうして考えてみると、打者は常に優れた投手に対応するために、進化していくことになります。投手がレベルアップしていくたびに、打者は適切な対応が必要になります。また同時に、投手も打者の対応力の向上に際し、新たなレベルアップをする必要が出てくることになります。

パワーとスピードの時代

最近はトレーニング方法の進化に伴い、投手のスピードは上がる一方です。

また分業制により、先発投手は3回り目の打順を迎えることが少なくなりました。この様な現状から、先発投手はパワーとスピードで打者を押し切る投球ができるようになりました。以前のように1日のうちで4回も同じ打者と対戦することがないので、最初から全力で、しかも球種を隠す必要もなく勝負ができます。ゲームの終盤戦で出てくるリリーバーたちは、1回を全力で投球できるので、ベストのピッチングを登板ごと目指すことが出来ます。

こうなると打者はその投手のタイミングを測ることが難しくなり、球筋にも慣れることが困難になるでしょう。

投高打低の時代と打高投低の時代は、一定のサイクルで交互に来ていたように思いますが。今度ばかりは投高打低が暫く続いてしまうかもしれません。

単純化していく野球の魅力

野球の魅力の一つに、バッテリーと打者との駆け引きが常に上げられてきました。団体球技でありながら、1対1の瞬間が多く、また間合いを図る事ができるのも日本人にとっては魅力が溢れたスポーツだと思います。1球ごとに状況が変わり、また駆け引きの内情を後から知ることも、野球ファンの大きな楽しみであると思ってきました。しかし最近のYou Tubeでの古田敦也さんや谷繁元信さんのコメントを見ていると、そのあたりの深みが無くなってきたと感じることが多くあります。外野で応援を楽しむことも野球の大きな魅力の一つですが、TV観戦やバックネットからの応援で、バッテリーと打者との駆け引きを楽しむ傾向にあるオールドファンには、少し興味をそがれるところも有るのではないでしょうか。

プロ野球というコンテンツが間違った方向に向かって、大切な魅力をなくすことにならないようにと思います。まぁだいたいは杞憂なんですよね・・・野球はそれほど魅力あるスポーツです。

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