ボールの回転を制御することは難しい。
ゴルフでいえば、全てのショットでボールの回転を制御しなければならない。
たとえそれが短いアプローチであっても、ショートパットであってもボールの回転を制御できなければ、スコアを崩すことに直結する。
野球も同様に、打球の行方にボールの回転は直結する。投手の投げるボールはその回転の方向や量で、球種が変わる。
同じ球種でもその回転量や回転軸の傾きで、ボールの描く軌道は変わっていく。
高速インターネット(Wi-Fi付き)+専門チャンネル月額1,750円〜【J:COM(ジェイコム)】最近はストレートも回転を制御することによって、ムービングファーストボールと呼ばれる微妙に動くストレートが多用されている。微妙に落としたり、左右にスライドさせるのである。バッターの手元で少し動いて芯を外して、打ち取るためのストレートだ。
江川投手のストレート
江川投手のストレートは回転軸が限りなく水平の、ホップするストレートだったと言われている。過去の動画を見て、ストレートがホップするのを確認できるわけではないが、確かにバッターがボールの下を空振りしている場面が多い。特に江川投手の場合は高目に意図的に投げているので、空振りしたときのバッターの反応が大きくて、観ていて面白い。
山本浩二さんが、「ストレートを狙っていても打てなかった、対戦した中で1番のストレートだった。」と証言しているので、その威力は凄まじかったのだろう。
江川投手は実働9年で現役生活を終えている。思いの外短い現役生活だった。江川投手は晩年に余り曲がらない、コシヒカリと自ら命名したスライダーを投げていたが、投球の殆どはストレートとカーブだった。ストレートの威力が少しでも落ちたら、投球が苦しくなるのは当たり前の話で、自分のピッチングがストレートの衰えによって維持できなくなったことから、引退したのは想像に難くない所だ。今の様に1イニング限定のクローザーという地位が確立されていたら、おそらく長く続けられていたのではないかと思う。(当時の火消し役は過酷な役割であった。)
藤川球児さんのストレート
藤川球児投手も回転軸が水平に近いストレートを投げるクローザーで、高目のストレートで空振り三振を量産した。藤川投手は150キロ出すのではなく、150キロに届かないぐらいのストレートで回転のいい球を投げると、良いストレートが投げられると証言している。やはりきれいな回転のストレートを制御することに、注力していたのだろう。
野上投手の可能性
アキレス腱の断裂から復帰した野上投手がきれいな回転のストレートで、1軍で好投をした。ストレートが低めにきまり、押し込むことができていた。次回を期待させる内容だったが、チーム事情でファームで投球の機会があった。ところがそこで炎上した。威力が落ちたきれいな回転のストレートはホップすることなく、うち頃のストレートになってしまうのだろうか。
江川選手が小早川選手にストレートを痛打された時に、引退を決意したのはその事が誰よりもよくわかっていたからでは無いだろうか。ストレートを手抜きから全力で制御していた江川投手だから、自分のストレートの威力を客観的に分析できたのではないだろうか。
野上投手は1イニング限定で、高目のストレートを全力で投げ込むことはできないのだろうか。もうあと3年、故障を恐れずに、きれいなストレートで活躍するところが観てみたいのである。