岡本和真選手の離脱で揺れるジャイアンツが、ソフトバンクとの間で2対1の大型トレードを成立させました。
ソフトバンクから移籍したリチャード選手は、早速先発し本塁打を放つなど大活躍でした。
今回のトレードの直接的な効果
これは岡本和真選手の故障による離脱によって、右の長距離打者が必要になったからというのが、近視眼的な見方でしょう。この見方に間違いはないと思います。このオフのメジャー移籍が噂されていた岡本和真選手の後釜を考えなければいけなかったジャイアンツですが、半年前倒しで現実となってしまったというところでしょう。この故障により、岡本和真選手のメジャー移籍が現実のものとなるのかは、疑問符がつくこととなりましたが、右の長距離打者が少ないことには変わりがありません。ドラフト1位で石塚裕惺選手を獲得しましたが、有鉤骨の骨折などで出遅れており、更にはサードのレギュラーとして期待されていた坂本勇人選手の予想以上の低迷で、今回のトレードは敢行されたと考えていいでしょう。
秋広優人選手の放出は背番号55の呪縛?
松井秀喜選手がつけていた背番号55は他球団でも人気の番号となっていますが、巨人の場合は期待が大きすぎるのか、55番は活躍できていません。東海大相模からドラフト1位で入団した大田泰示選手も、結局は放出されてしまいました。ドラフト下位の指名ではありますが、入団当時からそのスケールの大きさから期待されていた秋広選手も、5年目で放出となってしまいました。あまり実力が安定しないうちに責任の重い背番号をつけるのは、最近の若者には負担が大きいのかもしれません。
最近の例では背番号9を亀井善行コーチから受け継いだ松原聖弥選手は、全く勢いをなくして西武に放出されました。2年目に背番号5をもらった、門脇誠選手も、予想以上の低迷で現在は2軍に落とされています。
そんな傾向もあってか、今年ローテーションの柱となるべく期待されていた井上温大投手の背番号の変更に、阿部監督は慎重になったのかもしれません。
今現在は9番は空いてしまっていますし、近未来は7番も空くはずであり、その後には背番号6も空くことになりますが、それらを背負える人材が今いるのかというと、残念ながら見当たらないといえるでしょう。その現状はそのまま、ジャイアンツのスター候補生の不在と実力不足を暗示していると言えるでしょう。
ぬるま湯モードの払拭
今回の秋広選手の放出で、ファームには激震が走ったと思います。それまでのぬるま湯に見えたモードは一掃されたのではないでしょうか?
最近の風潮で、厳しい指導がパワハラなどと言われてしまっている現状では、人事権で引き締めるのが組織にとっては最終手段とも言えるでしょう。
アメリカでは一般社会では個人的指導は求められるもの以外は管理職には許されず、教育的指導も人事部が行うというのがよく見られます。日本の組織も段々とその傾向が強くなり、社員教育をOJTで管理職の仕事とするのは、もう無理な段階に来ていると言えるでしょう。
秋広選手はおおらかな性格であると言われており、阿部監督との確執などが取り上げられてきましたが、阿部監督としては才能ある選手を厳しく指導したいと思いながらできない現実にとても苦しんだと思います。二松学舎の出身である地元の選手を福岡に放出したのは、ある意味阿部監督の親心ではないかと、個人的には深読みしています。
今の御時世と今の秋広選手を取り巻く環境では、秋広選手のためには良くないと考えたというのは、大きくは外れていないのではと推察します。
阿部監督の方針は就任当時からぶれていない
厳しい指導はできませんが、起用法や今回のトレードなどで、違うベクトルで厳しさを示したのではないかと思います。ジャイアンツの長い伝統に馴染めない選手や大きくはみ出てしまう選手が、排除されていくというのは戦う集団としては当然のことでしょう。
さらに言えば阿部監督の方針から大きくはみ出してしまうタイプの選手は、これからも実力を発揮できないと思います。
こういった考え方は日本に有り勝ちと言われるかもしれませんが、実際にはアメリカではもっとこういった傾向が強いと思います。
例えばNFLではHC(ヘッドコーチが)変わるたびに、大きく選手は入れ替わります。前のHCの時代に採用された選手たちは、主力中の主力を除いて多くが入れ替わります。
アメリカの一般社会でも上司が転職すると、その上司のお気に入りの部下は時を置かずしてその上司を追って転職していくことが良く見られます。
短期間で結果を求められる場合は、そういった判断を管理職はしていかなければならないと言えるでしょう。
逆に言えばそういった権力を持たされない管理職が、長期政権を維持することは極めて難しいと思います。
日本のプロ野球も、確たる後ろ盾を保たない監督は、非常に短命で終わっているといえます。
今回のトレードには、阿部監督の現在の立ち位置が確たるものであることが、透けて見えると思います。この傾向は就任直後から変わっていないと思います。