阿部慎之助監督になって大幅に首脳陣が変わりました。阿部監督が44歳と若いので年齢が大きく下がったことは当然の流れですが、桑田真澄二軍監督や駒田徳広三軍監督、二岡智宏ヘッドコーチ、川相昌弘内野守備コーチ等、一部は年上のコーチもいます。そんな阿部新監督の首脳陣にはある特徴があると思います。
年上のコーチは実績重視
顔ぶれを見ていると、特に年上のコーチは現役時代に確たる実績を残した選手が多くなっています。2000本安打の駒田三軍監督、犠打世界記録の川相コーチは言うに及ばず、桑田二軍監督や二岡ヘッドコーチは、ローテーションやレギュラーを長い間守り、一時代を築いたコーチばかりです。
今の時代の若い選手から見れば、桑田二軍監督の現役最後の時を覚えていないと思われます。リアルタイムで桑田真澄投手の活躍を見ていた世代であれば、強烈なイメージが有り、甲子園での大活躍も有って、現役時代の数字を見るまでもない実績に裏打ちされた投手だと思います。しかし今年入団した高校生は、小学校に上がる前に桑田真澄投手は引退しており、その実績は記録で見ることが一番の情報源だと思います。短い間に強烈な印象を残していても、記録には表れず、説得材料にはなりません。そういった意味では桑田二軍監督のアマチュア時代からの記録は、十分にコーチングを裏付けるものだと思います。
最近のジャイアンツのコーチは、現役時代の実績が比較的無いコーチが重要ポジションに付いていました。リアルタイムでそのコーチたちのプレーを見ていた世代から見れば、納得感の有る配置であっても、プレーを見たことがない若い選手からすれば、説得力にかけてしまいます。特に今の時代は過去のように押し付けのコーチングは出来ず、コーチの言うことが絶対の時代ではありません。そんな環境下で現役時代の記憶がなく、実績もないコーチの説得力は、実績が十分にある、または活躍の記憶があるコーチには劣る面が出てきてしまうのは仕方がないでしょう。
今回のジャイアンツのコーチングスタッフは、十分にその辺りが考慮されているものと推測します。
現役時代の練習量
今の選手達は大谷選手の例を挙げるまでもなく、夜中に遊び歩くことが少なくなっています。寮を抜け出して酒を呑みに行くことよりも、寮で練習をしたり休養を取ることが重要であることは、殆どの選手が理解しています。そのため各球団がファームや寮の環境を大幅に強化しています。1軍の選手であっても、食事に出ることはあっても遅くまで飲み歩くことはなくなってきています。この様な傾向は、ジャイアンツの選手もある時期から大きく変わっていると思います。清原和博選手は現役時代にフライデーなどの写真情報誌に良く撮られていましたが、松井秀喜選手は試合後の当時の長嶋監督宅での夜間練習があまりに有名です。高橋由伸選手も試合後の素振りが有ったようですし、あの時代の辺りから少しずつ変わってきています。
今はウエイトトレーニングや睡眠など、全体練習以外でも野球のために時間を割く選手が多く、飲みに出る選手は少数派と言っていいでしょう。
そんな状況下で「今の子達は練習するね。俺たちの時代は朝まで飲み歩いた。」なんて自慢するようなコーチ達がいれば、求心力を欠くことは誰でもわかることです。You Tube等でかつての武勇伝を暴露する引退選手は多いようですが、そういった選手は今の時代のコーチには向いていないのでしょう。
今回の阿部監督の選んだ首脳陣は、そんな現役時代を過ごしたコーチは一掃されたと言っていいでしょう。
現役時代に記録を残した、あるいは練習の虫だったコーチばかりを集めた首脳陣は、面白い冗談や雰囲気作りは苦手かもしれませんが、巨人軍という”軍”を冠した戦う集団にはあまり必要な要素では無いという判断なのではないでしょうか。
若いコーチ達に必要な素養
現役時代に実績が無い若いコーチたちは、コーチとしての実績を3軍などから地道に積み重ねる必要があると思います。これはある意味メジャー方式と考えて良いかもしれません。メジャーの監督やコーチは、日本の監督やコーチとは違うコースが用意されており、指導者としての実績重視です。選手と一緒になって朝から晩まで練習に付き合うことから、信頼関係を築いて、選手を育て上げる実績を作り上げることを目指すしか無いでしょう。特に三軍のコーチは非常に未完成の選手を預けられるわけですから、思い切ってできるはずです。3軍の選手たちもコーチからの指導に飢えているはずで、ある意味やりやすい環境であると言えます。特にジャイアンツは育成選手を数多く在籍させているので、コーチングスキルを磨くことも、コミュニケーションスキルを身につけることもできる、若いコーチにとっても恵まれた環境と考えることができます。
もし、育成選手のレベルの低さを嘆くようなコーチがいるとすれば、指導者としてはどのレベルでも失格でしょう。1軍のコーチとは、そのあたりは全く違うものと考える必要があります。
そんなコーチにはアマチュアのコーチ等は、絶対にしてほしくないものです。