ジャイアンツの阿部慎之助監督が、テレビの質問に答える形で来季の構想を明らかにしました。あくまで個人的な感想ですが、あまりにオーソドックスな考え方に、ファンとしては安心してしまいました。まだ自分の野球の特色がわからないと就任直後にはコメントしていましたが、これほど正統派の考え方ならば、特色というものは現時点で出てこないのは、ある意味当たり前だと思いました。
株式投資の学校2軍監督時代からの積み重ねが活きている
昨年まで2軍監督やヘッドコーチを務めていたため、チーム全体の状況がわかっているので、来季の構想がいち早く出来上がっているのは間違いないでしょう。これが外部から招き入れた監督であれば、まずは選手たちと接してから考えるという事になる筈です。しかし、阿部監督の場合はチームの状況、選手の能力、選手の性格や立ち振舞がわかっているために、来季の基本的な構想が出来上がっているのだと思います。
坂本勇人選手のサード起用
シーズン終盤にサードにコンバートされた坂本選手の来季サード起用は、ある意味チーム作りのファーストステップだったのではないでしょうか。キャプテンを岡本和真選手に引き継いだとは言え、ジャイアンツの精神的支柱は間違いなく坂本選手です。その坂本選手の打撃力はその勝負強さもあって、岡本選手と双璧です。また、サードコンバート後に坂本選手の打撃が上昇軌道を描いた原因も、阿部監督と坂本選手は共有できているのでしょう。個人的には坂本選手はサードとして少し体を大きくすれば、本塁打40本ができる選手だと思います。脚のある坂本選手が3番にハマれば、4番の岡本選手の睨みも効くので、坂本選手の本塁打は増えると予想しています。
岡本和真選手はファースト固定
岡本選手の希望を聞いてファーストに固定したということなので、岡本選手のプライドも保たれ、坂本選手の出塁率があれば、今年少なかった打点も増えてくると思います。岡本選手の前にランナーが溜まっていれば、勝負を避けられることも少なくなるので、”ミスタースリーラン”が復活する可能性は高くなります。問題は5番に勝負強いバッターを置きたいのですが、大城卓三捕手に頼らなければならないようでは、苦しい展開が続くと予想します。
中田翔選手のFA移籍の可能性が高まった
この岡本選手のファースト固定で、中田選手の決断も大きく影響を受けることになると思います。むしろ早々と岡本選手のファースト固定を宣言したのは、阿部監督の中田選手への思いやりが影響したのではないかと思うほどです。この時点であまり流動的なことをコメントしてしまえば、中田選手は少ない可能性に引きずられてしまう可能性もあります。この早いタイミングで大きな方向性が出たことは、中田選手にとって有り難いことだと、個人的には推測します。
門脇誠選手のレギュラー固定宣言の影響
門脇選手のレギュラー宣言には少し驚きました。まだ1年目が終わったところで、早々と宣言したのは、門脇選手のためだけではなく、その他の若手選手にとっても影響は大きいと思います。レギュラー宣言の大きな理由は、その守備力にあることは間違いありませんが、門脇選手の野球に取り組むストイックな姿勢を、他の若手にも見習ってほしいのだと思います。今年3年目だった中山礼都選手は、坂本選手の後継者候補と言われながら、成長しきれませんでした。普段の練習態度が悪かったというわけではないと思いますが、何かが足りないというメッセージだったと思います。これから秋季練習からオフに向けて、若手選手には本当に大切な時間が続きます。この大切な時間を無駄にしてほしくないために、あえて門脇選手の練習態度やキャプテンシーに阿部監督は触れたのだと考えます。若手野手がどれだけ意識高くオフを過ごせるのかが、来年のジャイアンツには大きく影響するのだと考えているのは間違いないでしょう。
秋広優人選手の非レギュラー宣言
対象的に秋広選手には物足りない成績と、厳しいコメントが有りました。これは入団時からずっと見ている阿部監督だから、言える言葉だと思います。オフを共に過ごしてきていた中田翔選手の身辺が騒がしくなる中で、秋広選手がどの様なオフを過ごすかで、来年のジャイアンツの打順が変わってきてしまいます。秋広選手にはもう一段高い意識で、上を目指してオフを過ごしてほしいという意味のコメントであるということは、誰もが理解できることだと思います。
原監督と阿部監督との違い
原監督は最後まで競わせることを望んだ監督でした。若手が試合で活躍すると、次の試合ではその若手のライバルを使う傾向にあり、チーム全体の競争意識を求めました。ファンからすれば前夜の若手殊勲選手を翌日使わない采配に、疑問が生じたのは間違いないことだと思います。原監督が続投であれば、ショートのポジションは門脇誠選手、中山礼都選手、北村拓巳選手あたりで競争するなどとコメントしているかもしれません。
しかし、阿部監督は門脇選手をレギュラーで使うとこの時期にコメントしています。門脇選手を信頼するコメントはシーズン中からありましたが、はっきりと結果だけではなく練習に対する姿勢などを評価してコメントしたのは、普段の姿勢から競争が始まっていることを表しており、ファームの選手も含めて、チーム全体にいい影響を与えたのだと思います。
あらためて競争の吉川尚輝選手
門脇選手のレギュラー宣言には、中山選手に刺激を与えたのと同時に、吉川尚輝選手にも良い影響があるのではないでしょうか?門脇選手に比べて怪我に弱いイメージのある吉川選手は、力を出し切れていないイメージがあります。体に不安があるのか、盗塁などにも消極的な印象が強く、門脇選手とは対照的です。中山選手が現時点で競争相手に吉川選手を考えても、十分に勝機があることを阿部監督は示唆しているのかもしれません。
このオフは吉川選手がどれだけ強靭な体を作ることができるのかも、注目ポイントだと思っています。
理想と現実とのギャップ
阿部監督がとにかくオーソドックスな考えを持っていることは、十分に理解できました。しかし、そのオーソドックスな理想を実現するためには、選手が最低限揃わなければなりません。これからまずはドラフトとFAで、課題を埋める作業がどれだけ遂行できるか、球団の力が試されます。