高卒3年目の秋広選手は、現在ジャイアンツの3番を任されています。8月8日現在、規定打席に達して打率.282とセ・リーグ12位、チームでは岡本和真選手に次ぐ2位の選手です。連戦による疲労のためか、最近は打率を少し落としてきましたが、本塁打も10本を放っており、ジャイアンツファンの期待の星です。
ただ、弱冠20歳の高卒3年目の選手に対して、首脳陣やOBの期待値が高すぎるようで、厳しい注文が多すぎるように感じてしまいます。解説者や首脳陣は選手に注文をつけることや、選手のアラ探しをすることが仕事と思っている傾向が強く、少々バランス感覚を失っているコメントも多いように感じます。
身長2mの秋広選手
秋広選手は２ｍを超える身長で、まだ体ができあがっていません。トレーニングも十分に積めていないようで、まだまだ細さが目立ちます。このあたりは本人にしかわからない部分であり、170cmそこそこしかない解説者が言及できることではないと思います。171cmの今年のドラフト1位の浅野翔吾選手は、身長の伸びが早々と止まったようで、高卒の新人とは思えない体つきをしています。その浅野選手でさえプロとして十分な体になっていないようなので、身長２ｍでプロ入り後も身長が伸びていたと言われている秋広選手が、プロ仕様の体を手に入れるのは、もう少し時間がかかるはずです。
体が成長過程にあるにも関わらず、これだけの1軍での成績を残しているのは驚くべきことで、現在は疲労との戦いなのではないかと思います。
守備の成長も著しい
二松学舎高校の時は主に投手と一塁手だったので、外野の守備はプロに入ってからだと思います。プロ入り後は三塁手の練習もしていたので、外野に専念する事はなかったはずです。外野を走る姿はどこか頼りなさそうで、安定して走れていないように見えます。身長が180cm以下の選手であれば、重心の低い走りが容易にできますが、２ｍの秋広選手にはまだ体の強さが足りません。そんな中でも秋広選手は身長を活かして大飛球をとったり、前の打球もスライディングキャッチを敢行するなど、長足の進歩が見られます。外野の名手に較べればまだまだなのはわかりますが、今の時点では十分に努力の跡が伺え、結果も出つつあるといっていいと思います。
8月9日の試合でスライディングが下手と言われてしまった
確かにスライディングは上手くなかったでしょう。脚を売り物にしている小柄な選手であれば、セーフになっていたかもしれません。しかし、秋広選手は俊足を期待されている選手ではありません。今後スライディングについては改善の余地があると考えますが、そこまで手が回らないというのが本当のところではないでしょうか。
バッティングについては成長過程で、課題は山積みです。守備についても外野、一塁手、三塁手を練習していた経緯があり、名手となれるほどの時間が有ったとは思えません。走塁についてもあれだけ体が大きければ小回りも効かず、タッチをかいくぐることも難しいでしょう。連戦での疲労も考えれば、走塁面は手をつける事ができない状態と言えるかもしれません。少なくともファン目線から見れば、打撃最優先で守備は破綻のないレベルが、今年は求められるところではないでしょうか。
コロナ世代のハンデも考慮してほしい
秋広選手の世代はコロナのために、春夏の甲子園大会が中止になっています。大人の過剰な判断により、列島全体がパニック状態になった中で、貴重な高2の冬から高3を燃焼しきれなかった事は、高卒3年目の世代には大きく影響しているはずです。練習試合の経験は極端に減り、練習さえも十分に積むことができなかったはずです。特にコロナが発覚した直後は、ウェートトレーニングや走り込みなども思うようにできなかったでしょう。二松学舎の野球部員は千葉の寮と東京の学校との通学もかなりの負担になったはずで、野球選手としての成長、アスリートとしての成長はかなり妨げられたはずです。
そんな世代の中で飛び出してきた秋広選手は、中日の高橋宏斗投手とともに、同世代の希望の星だと思います。大切な高2から高3の貴重な時期を有効に過ごせなかった世代が、言い訳をしてしまわないように、秋広選手と高橋投手には頑張ってほしいと思います。
そんな忘れられそうなハンデを背負っている世代の選手たちを、あと2年ぐらいは優しい目で見てほしいものです。
2年後にはドラフトで同世代の大卒選手が入ってきます。彼らが秋広選手や高橋投手の活躍を見て、コロナを言い訳にしないようになって欲しいと思います。あのコロナの夏が有ったからこそ、成長できたという物語にしてもらえたらと願ってやみません。
いずれにしろここまで成績を残し、努力を重ねている姿は、ファンの心を打っています。まだまだ成長過程にある彼らを、もう少しの間優しい目で見守ってほしいと思います。
