ジャイアンツが29年ぶりに甲子園で6連敗をしてしまいました。報道陣の質問に答えた原監督は「「やっぱり原因はありますよ。」と答えて、記事の内容からはリリーフ陣のフォアボールの多さを原因と考えている事が伺えます。
しかし、データで見ると一概に投手陣に責任があるとは思えません。甲子園という東京ドームとは対照的な球場での戦い方が、できていないのではないかと疑えるデータがあります。
広い球場で弱いジャイアンツ
データでは甲子園、マツダ、バンテリンで負け越しています。打撃面では本塁打が減り、打率も良くないので、走力のないジャイアンツ打線は威力を発揮できていません。これはある程度予想通りですが、防御率を見てみると意外なデータがでてきます。
通算 | 東京ドーム | 神宮 | 横浜 | 甲子園 | マツダ | バンテリン | |
勝敗 | 42-44 | 20-17 | 4-4 | 4-2 | 1-6 | 1-5 | 3-5 |
防御率 | 3.64 | 3.29 | 4.91 | 1.56 | 6.00 | 3.86 | 4.76 |
打率 | 0.248 | 0.249 | 0.241 | 0.266 | 0.222 | 0.258 | 0.219 |
本塁打 | 101 | 126 | 10 | 6 | 4 | 5 | 8 |
広い球場で打ち込まれる投手陣
甲子園やマツダ、バンテリンといった投手有利の球場で、ジャイアンツの投手陣は打ち込まれてしまっています。逆に打者有利の横浜球場で、1.56と最高の防御率を残しているのは、とても不思議なデータです。単に投手と打者の相性や、チームの相性といったあやふやな原因で済ますことができる問題ではないと思います。
苦手な球場の特徴
苦手な球場と得意な球場の特徴で目立つのは、左中間と右中間の広さです。特に甲子園は東京ドームより左中間と右中間が8mも広く、両翼は5mも短いという大きな違いがあります。
両翼 | センター | 左中間 | |
東京ドーム | 100 | 122 | 110 |
神宮 | 97.5 | 120 | 112.3 |
横浜 | 94.2 | 117.7 | 111.4 |
甲子園 | 95 | 118 | 118 |
マツダ | 101 | 122 | 116 |
バンテリン | 100 | 122 | 116 |
(単位:m) |
7月26日の試合でも、右中間の大きな当たりがフェンスまで届かないケースがあり、解説の矢野さんも「東京ドームならばホームラン。」と解説していました。
また、右中間をぬけた当たりでもジャイアンツは脚力がない選手が多いので、なかなか塁が進みません。また、打者走者に脚力があっても、前に脚力がない打者がいれば各駅停車になってしまいます。広い球場の特性を全くいかせていない打線の組み方が、連敗の原因と言えるのではないでしょうか。
本塁打頼みの攻撃を”これがジャイアンツの野球。”と肯定してしまっている首脳陣ですので、このあたりは覚悟の上の采配と見ることができますが、この首脳陣の考え方がディフェンス面にも影響してしまっているのではないかと推測します。
巨人の投手の心理
いつも狭い東京ドームで投げているジャイアンツの投手陣は、慎重になりがちです。東京ドームや横浜などの狭い球場で意外に打たれていないのは、慎重な投球に慣れていると見たほうが良いのかもしれません。しかし、もっと大胆に行って良い甲子園などでフォアボールを連発してしまっているのは、あまり球場の特性を利用できているとは思えません。
菅野投手が佐藤輝明選手にインハイのストレートではなく、カットボールで勝負に行ったのもフライを打たせるのを怖がったからではないかと推測します。衰えたと言っても菅野投手のコントロールとストレートの威力があれば、多少フライが上がってもスタンドまでは運ばれないと思います。逆にカットボールで詰まりながらもライナーでライト前に運ばれてしまう結果になってしまったのは、甲子園で一番の特徴である浜風を利用できなかったのではないかと思います。
ジャイアンツ投手陣の足を引っ張る大きな原因はセンター
ジャイアンツの内野陣は鉄壁で、土のグラウンドの甲子園でも好プレーを連発しています。しかし、外野の守備はお粗末なものです。阪神との差は外野の守備力にあると思います。特にセンター近本光司選手の守備範囲はとても広く、阪神投手陣は自信を持ってストレートを投げ込んでいます。肩に不安のある近本選手ですが、左中間・右中間の守備力は極上です。ファインプレーに見えない守備範囲の広さは、投手陣を安心させます。
逆にジャイアンツのセンターに名手はいません。昨年までの丸佳浩選手は衰えが激しく、ライトへコンバートされています。しかしその後のセンターには、名手と言える選手が起用されていません。ブリンソン選手が起用されることが多かったのですが、近本選手と比べるまでもない守備力です。
原監督は丸選手の守備力の衰えには気がついており、守備力の期待できるブリンソン選手を取ったはずですが、期待には程遠いようです。
今のジャイアンツで守備力が期待できる外野手は、ファームを見渡してもいません。ここ数試合は岡田悠希選手を起用していますが、経験不足のためか守備面でも期待には応えられていないと言えるでしょう。
データ分析能力が巨人首脳陣にあるのか?
問題はこれだけのデータが揃っているのに、首脳陣はどの様に考えているかということです。29年ぶりの6連敗は偶然ではありません。
甲子園という最も大切な球場の特性を無視して起用を続ければ、長いペナントレースではきっちり結果が収束していきます。
今日は負けたが明日は勝てるという戦い方ではなく、負けるべくして負けているという結果がでてしまっている以上は、データによる分析を、首脳陣がきっちりして結論を出さなくてはなりません。データ分析をして対策を立てない限りは、長期戦では勝てないと思います。ペナントレースは一発勝負ではないので、首脳陣のデータ分析と対策力はとても大切です。
同じ過ちを繰り返すことが無いよう、原監督には首脳陣を指導してもらいたいと思います。
私の分析が必ずしも正しいとは思いませんが、何らかの分析をして対策を立てることが、1軍コーチの責務であると思います。こういったデータ分析ができないコーチは、1軍コーチとしては淘汰されるべきではないでしょうか。ただバットを振らせるだけならば、2軍コーチが向いていると思います。2軍コーチとして選手にバットを振らせることをできる熱心なコーチは、貴重な存在であることは間違いありません。
今晩の試合でどの様な対策が立てられるのかが注目です。