ここのところ毎年起きてしまうシーズン終盤のジャイアンツの失速が、今年は折り返し前に始まる恐れが出てきました。チーム力をデータで検証していきたいと思います。
試合運びの旨さで得失点差をカバー
ここまでジャイアンツは得失点差が-22と、順位の割には悪い数字が残っています。これは試合運びの旨さによって、接戦をものにしているといえます。得失点差がマイナスなのは5位のDeNAと6位の中日だけなので、その傾向ははっきりしていると思います。それと同時に大量失点をして大敗するケースも多い傾向は、見逃せません。先発が早いイニングで崩れてしまい、その後のリリーフ陣が失点を重ねる試合は昨年から少なくありません。昨年は8月からその傾向は強くなり、8月はそれでも貯金3ができましたが、9月10月に力尽きてしまいました。
今年は5月に-31と異常値を記録しており、6月も月半ばで-16と悪化が止まりません。試合運びで勝利を重ねるのはシーズン終盤の追込時期に必要で、シーズン序盤は戦力の整備が優先されるのではないでしょうか。
2021年貯金 | 2022年貯金 | 2021年得失点差 | 2022年得失点差 | |
3・4月 | 6 | 9 | 28 | 25 |
5月 | 1 | -3 | -5 | -31 |
6月 | 5 | -1 | 29 | -16 |
7月 | -1 | 0 | ||
8月 | 3 | -12 | ||
9月 | -8 | -17 | ||
10月 | -7 | -12 | ||
通算 | -1 | 11 | -22 |
試合運びの上手さは投手には負担
試合運びの上手さで接戦を物にする戦いは、投手陣、特にリリーフ陣に負担をかけます。昨年はマシンガン継投が話題になりました。今年は昨年の酷使がたたったのか、昨年のリリーフ陣が軒並み故障や不調で働けていません。大江竜聖投手や中川皓太投手は1軍合流の目処さえ立っていない状況です。また大敗するケースも先発の早い回での降板が、リリーフ陣の負担を重くしています。反対に大勝するケースが少ないので、いつでも同じメンバーがリリーフに立つような印象で、翁田大勢投手だけが明確に立ち位置が決まっている状況です。
今年も改善されないリリーフ陣の使い方
桑田チーフ投手コーチになって、リリーフ陣の整備が期待されましたが、今のところは成果が出ていません。勝ちパターンの投手が確立されず、勝ちゲームで誰が7回と8回に行くのか毎日わからない状況です。セットアッパーも確立されておらず、これではリリーフ陣は常に緊張状態で、コンディションが整わないのではないでしょうか。強いチームは7回から順番が決まっており、勝ちパターンの投手は無駄な準備をしなくて良いですが、巨人の場合は昨年のマシンガン継投に代表されるように、打者の途中から投手交代があるような状況で、バッテリーは落ち着かないと思います。6月の防御率が4.64と昨年にもなかった酷い成績は、首脳陣の責任としか言いようがないと思います。
首位に立つヤクルトの防御率は3・4月3.31、5月2.25、6月2.39とシーズン当初より整備されてきているのが明確にわかり、シーズンを通してチーム力を上げる首脳陣の手腕は羨ましいものが有り、結果にはっきり結びついていると言えるでしょう。エース格の奥川恭伸投手を故障で欠いたにも関わらず、投手陣を整備することが出来る高津監督の危機管理能力は、素晴らしいものがあると思います。
2021年防御率 | 2022年防御率 | |
3・4月 | 3.24 | 3.11 |
5月 | 3.83 | 3.71 |
6月 | 3.15 | 4.64 |
7月 | 3.79 | |
8月 | 3.86 | |
9月 | 3.90 | |
10月 | 3.96 |
打線の調子も上がらない
昨年終盤に明らかに失速してしまった打線も、今年は既に昨年終盤のように勢いをなくしています。リーグ全体で投高打低と言われていますが、ジャイアンツはそれが顕著と言えるかもしれません。今年は外国人を2人外野に入れて、守備力度外視で攻撃的打線を組んでいるのに得点力が上がらず、首脳陣の思惑が外れてしまっていると言っていいでしょう。
2021年打率 | 2022年打率 | |
3・4月 | 0.258 | 0.253 |
5月 | 0.251 | 0.228 |
6月 | 0.250 | 0.235 |
7月 | 0.243 | |
8月 | 0.231 | |
9月 | 0.232 | |
10月 | 0.220 |
原監督の思惑
シーズン当初調子の良かったジャイアンツですが、原監督は力の差はないとコメントしていました。むしろ原監督はジャイアンツのチーム力はリーグの中で上位ではないことを、認識していたのではないかと思います。若手の抜擢を早くから明言していたことや、増田陸選手や山瀬慎之介捕手の使い方を見ていると、成長しきれない中堅選手をある程度見切っているのかもしれません。チーム全体で戦うことを好み、殆ど全ての支配下選手を使ってみる傾向の強い原監督ですが、今年後半の若手の起用には注目したいと思います。ファームの首脳陣が成果を出すことが出来るか、ファンの楽しみは若手の活躍に移るかもしれないシーズンです。