3年やって本物のプロ野球 巨人戸郷翔征投手は課題を克服できるか

昨年は巨人のローテーションを守っていた戸郷翔征投手と高橋優貴投手が、開幕前の練習試合で結果を出せない事が続いています。ついに桑田真澄投手コーチから「ローテーションを任せられる内容ではない。」と厳しいコメントも発せられてしまいまいした。

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坂本勇人選手から菅野智之投手への激

入団間もない菅野投手に“3年やって本物だからな”と言われていたことは、広く伝えられている話です。その後の菅野投手の活躍は、本物の証明となりました。

3年やって本物ということは、坂本勇人選手が言い出したことではなく、プロ野球界では普通に言われている事と言っていいでしょう。事実、3年成績を続けることは非常に難しく、失速していく若手は非常に多くいます。戸郷投手もその言葉通りの壁に苦しんでいるようです。

3年目に失速してしまった若手投手たち

MLBに活路を見出した澤村拓一投手

年度 先発 完投 勝利 敗戦 投球回 被本塁打 与四球 奪三振 自責点 防御率
2011 29 5 11 11 200 14 45 174 45 2.03
2012 26 2 10 10 169.2 12 54 138 54 2.86
2013 22 3 5 10 158.1 18 43 148 55 3.13

2010年のドラフト1位で中央大学から鳴物入りした沢村投手は、戸郷投手と状況が酷似している投手の一人だと思います。2011年に11勝、2012年に10勝を挙げて、順調に成長しているかに見えた沢村投手ですが、3年目の2013年に5勝と失速してしまいました。

150Km超のストレートと決め球のスプリットを持つ速球派の沢村投手ですが、勝率の上がらない投手でした。勝ちの数と負けの数がかわらずに、貯金のできない投手として課題を抱えていました。投球回数に迫る奪三振数でパワーピッチャーの典型でしたが、防御率は年々悪化していました。当然首脳陣からは期待と課題を、明確にされていたのにも関わらず、3年目に失速してしまったのは、まさに“3年やって本物”という言葉の重さを考えさせられる投手でした。入団時は10年以上はローテーションを守れる投手という、ジャイアンツファンの期待を背負った投手でしたが、沢村投手なりに活路を見出して現在の地位を守っています。

久しぶりの高卒ローテーション投手の田口麗斗投手

年度 先発 完投 勝利 敗戦 投球回 被本塁打 与四球 奪三振 自責点 防御率
2015 12 0 3 5 66.1 5 26 64 20 2.71
2016 26 2 10 10 162 15 49 126 49 2.72
2017 26 3 13 4 170.2 14 49 122 57 3.01
2018 16 1 2 8 86.1 13 27 60 46 4.8

2014年のドラフト3位で広島新庄高校から入団した田口投手は、高卒のローテーション投手としてジャイアンツファンの期待を集めました。藤田監督時代の3本柱を懐かしむファン達は、高卒投手の育成成功例に飢えており、田口投手は久しぶりに顕れた新星でした。

高卒2年目に10勝で頭角を現し、3年目に13勝4敗と好成績を上げて、当時絶対的なエースになっていた菅野智之投手をライバル視するほどの投手でした。インステップ気味のフォームからスライダーとストレートのコンビネーションで打ち取るスタイルは、制球も破綻すること無く、期待値は大きな物となっていきました。しかし翌年に2勝8敗と急激に失速します。怪我などの影響は報じられていませんが、オフに球速アップを目指して体を大きくしたことが、不調の原因とも言われていました。若くして投球術に優れ、制球も良かったので、沢村投手とは別の意味で活躍を期待されましたが、昨年活躍の場を求めてヤクルトに移籍しています。

3年目の戸郷翔征投手 抑えストッパーへ?

年度 先発 完投 勝利 敗戦 投球回 被本塁打 与四球 奪三振 自責点 防御率
2019 1 0 1 0 8.2 1 3 11 2 2.08
2020 18 0 9 6 107.2 12 42 106 33 2.76
2021 26 1 9 8 151.2 19 58 138 72 4.27
通算 45 1 19 14 268 32 103 255 107 3.59

戸郷投手はどちらかと言えば、沢村投手に似たタイプの投手かもしれません。沢村投手ほどコントロールに苦労することはありませんが、コーナーを狙っていけるようなレベルではありません。球威があるのでライン出しで十分だと、桑田コーチはコメントしていますが、その球威も長いイニングを担えるほど続かないようです。オフに体づくりにも努力したようですが、年下の堀田賢慎投手の充実度と比べると、見劣りがしてしまいます。

3年目ということで相手チームの研究もすすんでおり、進化できないことには昨年後半の成績が続いてしまうのではないかと心配です。

そして目指す進化の方向性がはっきりしていないのも、心配なところです。沢村投手はレベルアップのためにストレートを磨くことにこだわりました。田口投手もストレートの出力アップのために、体を大きくしました。ともに成功したとはいえませんが、課題を明確にして取り組んだことが、顕れていました。

戸郷投手の今年の進化で話題になると言えば、松坂大輔さんからスライダーを教えてもらった事だけです。オフにはやり投げに取り組んだと報道されましたが、今のところは効果が見えません。

ビエイラやデラロサの出来によっては、ストッパーやセットアッパーへの配置換えも可能性があると思います。適正は十分ではないでしょうか?

TEAM TOGOの結成は早すぎた?

今年のオフで戸郷投手は若手のリーダーとなり、自主トレを行いました。若くしてリーダーとして振る舞う姿勢は、レスペクトに値するものだと思います。しかし“3年やって本物”と言われる世界で、この動きはどう出るのでしょうか。21歳の若者に足りない経験という財産を、オフの間に与えてくれる先輩が側にいないのは、戸郷投手にとっては吉と出るのでしょうか。球団はそのリスクをどう判断していたのでしょう。

菅野投手の戸郷投手への思い

菅野投手はたびたび戸郷投手を評価するコメントをしています。21歳といえば菅野投手自身はまだ大学生で、プロで活躍する戸郷投手をある意味評価しているのは当然でしょう。しかし“3年やって本物”と坂本選手から声をかけられたことを、菅野投手はどの様に受け取っていたのでしょうか。菅野投手は毎年オフに課題を掲げ、新しい変化球にも取り組んでいました。相手以上に進化することの大切さを、十分にわかっている菅野投手は今の戸郷投手をどう捉えているのかが、非常に気になります。

クレバーな桑田コーチの存在

桑田コーチも毎年進化していった投手です。相手の研究に対応するために、毎年変化球を増やしていったと桑田コーチはコメントしています。投げることの出来る変化球も、後々のために温存していた趣旨の発言もしています。これだけクレバーなコーチが、戸郷投手の今の状況を見てどう分析しているのかが気になります。

未だ調整段階であり、戸郷投手がシーズンインとともに結果を出してくれる余白を持ってくれいている期待します。

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